知人に勧めたステンレスのサントスガルベ

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―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

◆高級腕時計市場は値下がりしている?
 腕時計投資家の斉藤由貴生です。

 最近、腕時計は値下がりしているといわれることが多いように思います。しかし、長年相場を追っている私からすると、必ずしも現在の相場は「値下がり」というわけではなく、値上がりしている時計と、値下がりしている時計が混在しているといえます。

 また、値下がりとなっている時計を例としても、3年前や5年前の水準と比べると「だいぶ高値」といった状態をキープ。2022年春という時期に「ものすごい上昇」となった経緯があるため、その時点と比べると値下がりでも、2021年春といった時期と比べると“値下がりではない”というケースが大半だといえます。

 そういった値動きとなっているモデルは、いわゆる「人気モデル」です。人気モデルなのに値下がりしている(2022年春と比べて)という点が、「腕時計は値下がりしている」という印象を強く与えているのだと思います。

 しかし、先にも述べたように、現在相場は必ずしも全体的に値下がり傾向となっているわけではないのです。ということで今回は、今値上がりしている腕時計をお伝えしたいと思います。

◆値上がりしている腕時計はサントスガルベ!

 その値上がりしている腕時計の最たる存在が、カルティエのサントスガルベであります。サントスには様々なシリーズがありますが、「ガルベ」はブレスレットを中心としたモデル。デビューしたのは1980年代ですが、バブル期にコンビモデルが流行っていたといえます。当時、カルティエは日本で「カルチェ」と呼ばれていたわけですが、その「カルチェ」の腕時計といえば、まさにこのサントスガルベだったといえるでしょう。

 バブル期に流行っていたサントスガルベは、コンビモデルだったわけで、当時幼かった筆者目線でも、それをつけている大人をよく見かけた記憶があります。おそらく、1990年代前半頃までサントスガルベのコンビモデルが流行っていたと推測でき、後の中古市場でもそのぐらいの年式のコンビモデルを多く見かけたといえます。

 しかしながら、1990年代後半の流行は、バブル期とは正反対となります。

 その頃、日本では「ロレックスブーム」が起こっていたのですが、当時の人気モデルは、エクスプローラーの14270。シンプルなステンレスモデルが好まれたのです。そのため、サントスガルベ、特にコンビモデルは、「バブルの遺産」のような存在感となり、1990年代後半からしばらくの間、はっきりいえば「ダサい」という印象があったように思えます。

 ちなみに、サントスガルベ自体はその時期にも現行モデルとして存在していたのですが、若干のマイナーチェンジを受け、ケース形状が変更。この世代は、サントスガルベの「後期」に当たる世代なのですが、不思議と後期ではステンレスモデルの方が多く、コンビが少ない傾向があります。

 こういったことからも、1990年代前半と後半とで流行が「逆」になったということが分かります。

◆不人気モデルになった後の相場は?

 バブル期に流行ってしまったサントスガルベは、1990年代後半頃から、不人気モデルに転じるわけですが、そういった傾向は数年前まで続いてしまっていたといえます。またメーカー側も、ガルベの不人気を察知してなのか、2000年代にサントスのラインナップを変化させます。2002年頃からパネライが世界的な大ブームとなっていたのですが、サントスにもパネライの要素を投入。2004年に発表された「サントス100」シリーズは、それまでのサントスガルベとは異なり、大きなケースが採用。また、ストラップも革ベルトを中心とした展開でした。