Screenshot: Sea Search Research & Conservation / YouTube

2022年10月5日の記事を編集して再掲載しています。

世界初の映像。

2022年5月16日、生物学者チームが、世界で初めてシャチの群れが世界最大級の捕食魚で「白い死神」と呼ばれるホホジロザメを襲撃・捕食する瞬間を撮影することに成功しました。

捕食するまでの過程を空撮

撮影に成功したのは1度でしたが、上空からの観察では71分間の間にシャチの群れがなんと3頭のホホジロザメを捕食したことが確認されています。撮影された南アフリカのモーセル・ベイでは、以前からホホジロザメが捕食されるケースがあり、死骸の状態から捕食したのはシャチだろうと考えられていました。2頭のシャチが確認されていて、「ポート」と「スターボード」と名前がつけられていましたが、今回動画に写っている5頭のうち1頭はそのスターボードだと確認されています。

およそ30分間の動画では、シャチがサメに狙いを定め、襲撃・捕食という一連の行動が見られます。この映像と調査結果については、ジャーナル誌Ecologyにて発表されています。

「こう言った行動はこれまで詳細に目撃されたことがありません。空からの映像に至っては世界初となります」とMarine Dynamics Academyのサメの研究者であり、今回の研究の著者のひとりでもあるAlison Townerさんは学会を通じてコメントしています。

絶妙なコンビネーションプレイ

ホホジロザメは海の世界でトップに君臨する捕食魚で、体長は成長すると6メートル、体重は2.3トンという大きさです。さらには狙った獲物は簡単に引きちぎれる何百もの強靭な鋭い歯を持っていることでも有名です。そんな最強のホホジロザメがシャチに食べられてしまっているという事態です。

2017年から8頭のホホジロザメの死骸が南アフリカの海岸に打ち上げられていて、シャチの仕業だと考えられてきました。8頭のうち7頭は肝臓がなくなって、数頭は頭がなくなっている状態でした。Townerさんはギズモードの取材に対し、シャチがホホジロザメを狙う理由は、おそらくサメの3分の1をも占める豊富な栄養を蓄えている内臓だそうと話してくれました。今回の撮影後にホホジロザメの死骸は、今のところ海岸に上がってきてはいないとのことです。

シャチはとても頭のいい社会性のある動物だということはよく知られていますが、動画でも確認できるようにサメを襲撃する際も3頭でチームプレーをしています。2頭がサメを囲んで泳ぎ、もう1頭がサメを海面に押し上げるように下から泳いできます。その後、ガブリとかぶり付き、血が出てくるのが見えます。

動画の後半ではサメの肝臓が海面に浮かんでいるのが見えますが、これはシャチのスターボードがパクリと肝臓を食べる直前の状態。スターボードの頭の大きさとほぼ同じです。シャチはチームで上手に肝臓を取り出す技さえも編み出したようです。

またシャチの社会性から、チームで行動しているのはおそらくスターボードが他のシャチに海の王者をどのように仕留めるか、襲撃の仕方を教えているからだろうと研究チームは考えているとのこと。これまで「シャチが犯人だろう」と考えられてきましたが、今回の映像ではっきりわかったことで、さらに研究が進んでいくでしょう。

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