サウナワールド ととのう人たち(39) TNCアナウンサー 浜崎日香里さんコラム 

 西日本新聞meサウナ部の特別部員、テレビ西日本(TNC)アナウンサーの浜崎日香里さん(29)が、夏の終わりに北海道を訪れました。お目当ては、大自然の中にある水風呂を楽しめる施設と、昨年完成し、全国でも注目されているサウナの2カ所。ただ、到着前に一波乱あったようで…。嵐を呼ぶアナウンサーのサウナ道中をお楽しみください。

福岡空港のカウンター前でパシャリ

☆コラボ「サウナノANA」

 8月の終わり、私の中では今夏最大イベントのサウナ旅に出かけようとしていた。目的地は、北の大地・北海道。サウナの聖地とも言われるだけあって、道内には至るところに魅力的なサウナがある。

 ここ数年、毎年のように訪れているが、毎回その魅力に魅了される。今回は、私が出演しているユーチューブ「サウナノアナ」と航空会社全日空(ANA)とのコラボ企画で「サウナノANA」と題して、北海道にサウナ旅へ行くことになった。チャンネル史上、最大規模の会社とのコラボ企画であり、かなり前から企画内容を練っていった。

 しかし、出発の数日前から、雲行きが怪しくなってきた。台風10号が九州に接近し、出発日に福岡に最接近する恐れが出てきたのだ。旅を諦めなければいけないかもしれないという最悪の事態も考えつつ、出発直前まで台風の進路とにらめっこが続いた。

 出発前日。当初から乗る予定だった飛行機の欠航が決まった。だが全ての便が欠航にならない限り、諦めるつもりはなかった。

 迎えた出発日。福岡は依然、大雨と暴風で大荒れの天気だったが、夕方以降の便は欠航にはならず、席が取れて無事に北海道に向かうことができた。ちなみに、飛行機が飛ぶのかどうか心配で、早めに福岡空港に着いていた私たちは、北海道への長旅に備えて、瓶ビールにギョーザ、ラーメンという完璧な福岡セットでおなかを満たしていた。

出発前に瓶ビールで乾杯

☆シカが出るのでご注意を

 福岡空港を出発し、新千歳空港に到着後、この旅最初の目的地「丸駒温泉旅館」(千歳市)へはタクシーで向かった。北海道内でも有数の大きさを誇る「支笏(しこつ)湖」に隣接する旅館で、湖を眺めながら入ることができるサウナがあるという。タクシーの運転手さんからは「シカが出るかもしれないので、しっかりつかまってて」と言われ、北海道に来たことを実感させられた。空港から1時間弱の道のりで、シカに出くわすことはなかったが、1周40キロある湖の周りをぐるっと回って、目的地に到着した。移動の疲労を癒やすために、早速温泉とサウナに入った。

 まずは温泉。100年以上前から湧き続けているという茶褐色の湯がそっと包み込むように疲れた体を癒やしてくれた。露天には支笏湖を眺められるようにたる型の「バレルサウナ」が置かれていたが、外は真っ暗で何も見えない。眺望は朝の楽しみに取っておこうと、ひとまずこの夜は、汗を流すだけにした。真夜中のセルフロウリュはなんだか大人の禁断の楽しみのような気がして、ぜいたくな気持ちになった。

☆「湖に吸い込まれそう」

湖畔サウナから眺める支笏湖にうっとり

 迎えた2日目。起きてすぐに、部屋から窓の外を眺めてみる。支笏湖の周辺はあいにくの天気だったが、遠くに広がった地平線はまるで海のようであり、波はないので静けさがある。なんだか不思議な光景だった。

 その後、まだ眠い目をこすりながら、大浴場へと向かう。支笏湖の水面と同じ高さにある露天風呂に入っていると、湖の中に入っているような感覚があった。遠くを眺めながら、ぼーっと入っていると、「このまま湖に吸い込まれそう」とさえ思った。

 ユーチューブの撮影では、最近新しくできた「湖畔サウナ」という湖の目の前に建てられた場所に入った。ストーブの熱源に「木質ペレット」という全く電力を使わない環境に優しい材料が用いられていた。これまで入ったことのあるまきサウナや電気式サウナとは違う静けさと温かみがあった。

 ここの魅力は、室内から支笏湖が眺められることだ。福岡ではなかなか見ることができない雄大な湖の景色を独り占めする時間は、ぜいたくだった。求めてきた水風呂というのは、目の前に広がる支笏湖のこと。

 自分の体から蒸気が出るぐらいまでとことん温まった後、ライフジャケットを着て、湖へと飛び込む。広大な湖が私の火照った体を優しく受け止めてくれた。冷たすぎず、心地よい温度の湖にプカプカと浮いているのは何とも気持ちよかった。周りには誰もいない、私たちだけの湖とまで思わせてくれるようなこの上ない空間だった。

支笏湖に身を委ねる

☆念願の球場内サウナに大興奮

 「ずっと入っていたい」と後ろ髪をれ引かれながら、向かったのは「サウナノANA」の一番の目的地、北海道日本ハムファイターズの球場「エスコンフィールド北海道」(北広島市)だ。「一般客が入ることができる世界初の球場内サウナ」はできた当初から大注目されていて、私ももちろんいつかは来てみたいと思っていた念願の施設である。

初めてのエスコンフィールドに大興奮

 球場に着くと、圧倒的スケール感とスタイリッシュな外観に、私は興奮を隠せなかった。球場の内部では開放感にも圧倒された。この日は天気も良く、屋根が開いていたため、北海道の新鮮な空気に包まれていた。内野エリアには天然芝が使われていて、鮮やかな緑にも目を奪われた。

 驚くのはまだ早かった。エレベーターで3階に上がると、球場内とは思えない、おしゃれなサウナ空間が広がっていた。「もう待ちきれない」と早々に水着に着替えた。目前にドーンと広がるグラウンドを眺めながら入ることができる水風呂と温泉、さらにサウナが待っていた。中へ入ると、スタンド席があり、立ったままサウナに入ることもできた。

 壁の至るところにバットをモチーフにした木材が設置されており、遊び心が満載だ。もちろん、サウナ内で野球観戦することができる。

サウナ後に球場内で飲むビールは格別

☆目の前の光景、果たして現実?

 これまで、サウナ内のテレビで野球観戦をするシーンはよく見られていた。だが、もしかするとこれからはサウナに入りながらリアルに野球観戦をする時代なのか。目の前の光景は、果たして現実なのか疑いたくなるくらい不思議だった。世界中どこに行ってもここだけしか味わえない唯一無二のサウナだった。

 今回の北海道旅でも、これまでには味わったことのないサウナ体験をすることができた。北海道のサウナは、いつも私をとりこにする。やっぱり北の大地は偉大だ。私ももっと大きくなって、また北海道に来よう−。そんな気持ちにさせてくれた。

球場内でととのう日が来るなんて