路上にはホームレスが溢れかえり…習近平はなぜ深圳の「不動産バブル崩壊」を放置するのか…日本人男児刺殺事件の起きた「9月18日」と歴史的文脈との「奇妙な付合」

写真拡大 (全3枚)

中国で暮らす日本人に高まる不安

9月18日、中国深圳市で日本人の10歳の男児が男に刃物で刺され、翌日未明に亡くなった事件は、衝撃をもって伝えられた。男児では日本企業の駐在員の子息で、刺した男は44歳だったという。現地では、安全への不安が高まっている。

筆者はかねて中国国内経済の悪化とともに、各地の治安が悪化し、外国人への襲撃が増えていることに警鐘を鳴らしてきた。日本人への襲撃を危惧し、今年6月に江蘇省蘇州市で日本人学校のスクールバスが襲われた事件は、忌まわしい予想が現実となったことで筆者自身、衝撃を受けた。(参考記事1、参考記事2)

今回、ついに死者が出たことで中国に住む日本人の不安はますます高まることだろう。いまの中国の治安状況をよくよく理解してもらいたい。

NHKの報道によれば、亡くなった児童が通っていた日本人学校の現場には、中国人が次々と献花に訪れ、また東京都の在日中国人たち20名が追悼集会を開いたという。

中国外務省の林剣報道官も「遺憾の意」を表明し、「亡くなった男児児童を哀悼するとともに遺族にお見舞い申し上げる」と述べた。

我々も冷静な行動を心がけなければならないことは言うまでもないが、パナソニックなど日系企業の一部では、駐在員の一時帰国を認めるなど、現地の日本人コミュニティでは不安が高まっている。

逮捕された44歳の男の動機は明らかになっていないが、やはり中国国内の経済事情の悪化を要因の一つに挙げざるを得ない。

疲弊の一途の中国経済

中国共産党の習近平総書記(国家主席)は9月12日、あらゆるレベルの官僚を対象に政府の年間成長目標(5%前後)を達成するよう求めた。

海外のエコノミストの多くが「中国経済は今年の成長率目標を達成できない」と予測し始めていることを踏まえての発言だ。米ゴールドマンサックスとシティグループは9月に入り、中国の今年の成長率を4.7%に引き下げた。8月の経済指標が軒並み悪化しているからだ。

8月の工業生産は前年比4.5%増と伸び率は7月の5.1%から鈍化し、3月以来の低水準となった。小売売上高も夏の旅行シーズンのピークにもかかわらず2.1%増と、7月の2.7%増から減速した。

中国の「シリコンバレー」は見る影もなし…

中国の銀行の8月の新規人民元建て融資は9000億元(18兆円)となり、15年ぶりの低水準だった7月(2600億元)から大幅に増加したものの、市場予想(1兆3600億元)には届かなかった。

製造業が「頼みの綱」だが、人手不足が深刻になりつつある。日本と同様、若者がサービス業に就職する割合が急速に高まっており、中国各地で人手不足で閉鎖に追い込まれる工場が続出している。

こうした不況は、深圳にも及んでいることは言うまでもない。それどころか、深圳市の経済状況は中国で最悪の部類に属している。不動産バブルが崩壊し、深圳市のオフィスの空室率は40%を超えると言われており、たびたび、市内の路上にはホームレスがあふれかえっているという現地報道が相次いでいた。

「中国のシリコンバレー」と称賛された頃の栄華は見る影もない。

そして、もうひとつ筆者は日本人男児が刺殺された9月18日という日が、中国にとって歴史的な日にあたることも非常に気になっている。事件が起きた9月18日は1931年の満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた「国辱の日」に当たる。

それだけではない。その日はさらにもう一つの意味を持っている。

後編記事『深圳で亡くなった日本人男児が刺された「9月18日」が意味すること…「経済対策」から逃げる「習近平の大罪」』で詳しくお伝えしよう。

深圳で亡くなった日本人男児が刺された「9月18日」が意味すること…「経済対策」から逃げる「習近平の大罪」