最新・四季報で集計「業績上振れ期待度」ランキング
出だしの3カ月の進捗率が高く業績予想の上方修正や上振れ着地が期待できる企業は、今後の上昇相場の先導役になりそうだ(写真:tadamichi / PIXTA)
株式投資をする際は、好業績の銘柄や株価にポジティブな材料が期待できそうな銘柄を選ぶのが基本だ。その最たるものが、業績の上振れだろう。
上場企業は期初や四半期決算ごとに年間の業績見通しを公表する。その予想値を上回りそうな銘柄を先んじて見つけることができれば、実際に業績予想が上方修正された時に株価上昇の恩恵を享受できる。
1つのヒントになるのが「進捗率」だ。3カ月ごとに発表される四半期決算の実績が、会社の示す通期計画に対してどれくらいの進捗率になっているかを見れば、会社の年間計画に上振れ余地があるかどうかを判断する大きな材料となる。
過去3年平均の進捗率を大幅に超過
今回は9月13日発売の『会社四季報』2024年4集(秋号)に掲載した「営業利益 高進捗ランキング」の一部を紹介したい。2025年2・3月期決算企業を対象に、会社の通期営業利益計画に対する第1四半期の営業利益進捗率が過去3期の平均値を超過している順にランキングした。
なお、ランキング作成に当たっては、四季報予想の年間営業利益が20億円以上であることを条件とし、過去3年の第1四半期に赤字があった会社や決算期を変更した会社は除いた。
ランキング1位は香料の国内最大手、高砂香料工業。第1四半期の営業利益実績は40.1億円で前年同期比の7.5倍。過去3年間での第1四半期営業利益の平均進捗率は33%だったのに対し、今期は期初の3カ月で早くも会社が掲げる年間の予想営業利益(40億円)分を稼ぎ出した。
第1四半期は前期からのずれ込み案件もあって、フレグランス部門やアロマ関連部門、さらには医薬中間体などのファインケミカル部門がいずれも大幅な増収を記録し、営業利益が例年よりも膨れ上がった。
夏以降も世界的に食品向けが順調に増え、高付加価値の欧州香水向けの底入れも見込めそうなため、年間営業利益は会社計画の40億円を大幅に超過することが濃厚。最新の四季報では独自予想を一気に100億円(前期実績は23.1億円)にまで増額している。
2位は投資事業や教育事業などを手がけるユナイテッド。同社は創業初期段階に投資して保有するメルカリ株を毎期売却して利益計上しており、その売却タイミングで利益が大きく増減する。
今期は第1四半期に売却したため、進捗率が過去3年の平均より跳ね上がった。ただ、虎の子のメルカリ株は残り少なくなっており、教育や人材マッチング、Web広告関連などの事業はまだ育成途上のため、進捗率が高くても会社自体に対する評価は難しい。
保土谷化学は好発進で四季報予想も増額
3位の保土谷化学工業は色素やトナー材料などを手がける化学系メーカー。第1四半期は前年同期の8.4倍に相当する28.4億円の営業利益を稼ぎ出した。同社の年間営業利益計画は45億円(前期比13.9%増)なので、滑り出しの3カ月だけで進捗率は6割超に及ぶ。
第1四半期は海外のプリンター向け材料やスマートフォン向けのアルミ着色用染料、スマホ向け有機EL材料などが大幅に伸び、増収率が4割を超える勢いだった。さすがに第2四半期以降は巡行速度に戻るが、四季報は会社計画を過少と見て、最新の秋号で年間の営業利益見通しを55億円(前期比39.2%増)に引き上げている。
4位は近畿を地盤にマンション企画開発・販売を手がけるエスリード。 前期からのずれ込み案件があって、今期は第1四半期の引き渡し戸数が大幅に膨らんだ。
5位の日本ヒュームは下水道向けヒューム管やコンクリートパイルの大手。パイルは価格改定の効果や前期からの継続工事が順調に進捗。下水道関連分野も収益性の高い合成鋼管や道路向けプレキャスト製品が伸び、第1四半期の営業利益は前年同期の0.7億円から8.9億円にまで拡大。すでに会社計画(17億円)に対する進捗率は5割を超え、四季報は最新の秋号で年間営業利益の予想を21.5億円(前期比55.7%増)へ引き上げた。
6位以下にも、さまざまな業種の企業が並ぶ。このランキングを増額が期待できそうな銘柄探しの参考にしてほしい。ただし、注意も必要だ。業種によって繁忙期は異なる。夏が繁忙期の業種もあれば、官公庁相手の商売なら年度末の2〜3月が繁忙期だ。業種や企業によって、事情は異なる点も念頭に入れておこう。
(又吉 龍吾 : 東洋経済 記者)