30代会社員が数年未使用のクレジットカードを使用して起こった「悲劇」

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キャッシュレス時代、様々な「支払い方」があるが、やはり支払額の多いのはクレジットカードで、年々増加している。「日本クレジットカード協会」の調査によると、2023年のカードの発行枚数は3億860万枚。家族カードや法人カードの枚数も増加しており、過去5年で最大の数字で、利用額は前年比14.9%増だという。利用額が増えているということは、残額も増えており、「信用供与残高」は20兆891億円と、2013年から初めて20兆を超えている。借りられるお金は信用があるからでもあり、ローンを組むことができるのは経済力とも言うけれど、クレジットカードとは「信用のもとにお金を借りている」ことを忘れてはならない。

つまり、カードは便利だが、当然きちんと管理することが必要なのだ。クレジットカードを6枚以上持っていた筆者が、そこで思わぬ大失敗をしでかした話を再編集の上ご紹介する。なお、2006年ごろの話なので、クレジットカード周辺の仕組みは多少変化している可能性があることを了承いただきたい。

始まりは、父が倒れたこと

2005年のこと、筆者は夫が駐在していたNYで第一子を出産した。両親に孫の姿を見せたいと思いながら、両親は日本を一歩も出たことがないどころか、パスポートも持っていないし、飛行機に乗ったこともほとんどない夫婦。産後の手伝いに来るという選択肢は両親には一切ない。それでも海外での育児が心配でたまらなかったようで、アメリカのおむつでかぶれた話をしたら、日本のおむつを郵送してくれる心配ぶり。「ありがたいけど、こんな高額なおむつはいいから!」と話し、早く孫の姿を見せたいものだと思っていた。ちなみに日本のおむつクオリティは本当に素晴らしいことを改めて実感もした。

そして産後1年近く経ち、娘もある程度寝るようになってゆとりもできてきたころ、両親に1週間くらいNYに来てみてはどうか、という提案をした。60歳を超えてからの大冒険。日本でもレストランで食事をしに行くことすら嫌がる保守的な母ではあったが、孫会いたさに了承し、両親は生まれて初めてのパスポートを取得したのだった。

ところが、いざ両親が飛行機に乗る予定の日の朝、姉から電話が来た。

「お父さんが倒れた。心臓の大動脈が何本か詰まってて、すぐ手術だって」

さらにこう付け加えてきたのだ。

「成功率が20%だって……」

顔面蒼白、あと15時間後くらいには両親に孫の姿を見せられると思っていたときに、日本では旅行にいくどころの騒ぎではなくなってしまった。

数時間後には、もうすぐ1歳になる娘と、夫と共に、最小限の荷物だけ持って日本行きの飛行機に乗っていた。

父は42歳のときに心筋梗塞で倒れたこともあり、心臓はすでに爆弾を抱えていた。なんとか娘に会ってほしい。元気な姿を見せてほしい。生まれて初めての海外旅行をするはずだったのに――。

感傷的になって飛行機でも泣いたりしていたが、幸いなことに手術は成功。手術に関わっていただいた主治医の先生以下皆さんに感謝しかなかった。こうして無事、もうすぐ1歳になる娘を父にも会わせることができたのだった。

父親の病気とクレジットカードとの関係

さて、父親の病気とクレジットカードとどんな関係があるのか。

実は「慌てて飛行機に乗った」ということがポイントだった。日本の銀行のカードやクレジットカードを入れたお財布は普段使わないため、持ち歩くバッグに入れていない。そしていざ日本に帰るにもかかわらず、急いでいてNYに置いてきてしまったのだ。

また、慌てて出てきたため、持ち物は子どもの着替えメインで、自分の着替えは下着と数枚程度しか持ってきていなかった。しかし父と母のことが心配だし、1年ぶりの帰国だったのでしばらく日本にいることにした。さすがに多少は着替えが必要になる。

病院に行く際には娘を夫の両親にみてもらっていたので、その帰りに、「今しかない!」と急ぎ買い物をすることにした。Tシャツを数枚選び、値段は9000円ほど。そのときお財布にクレジットカードがないことを思い出す。そうだった、現金で買い物するしかないな、ホントは現金を取っておきたいけど……と思いながら古いパスケースをみると、かなり昔に作ったクレジットカードが出てきたのだ。

「あ、ちょうどよかった、これ使えるかな」

見てみると有効期限内ではある。何年も使ってないが、問題があったら使えないだろう、そうしたら現金で払おうと、クレジットカードを出した。サインを頼まれたところで「あ、使えた」とほっとした。

クレジットカードってホントに便利!! 助かった!」

そんな風に軽く思ったことが、あとで響いてくるとは、このときはつゆほども思わなかった。

住宅ローンの審査が通らない!

それから1年後――。

育児休暇の期限がくる筆者は、娘とふたりで一足先に日本に帰国した。結婚してすぐに暮らしていた町なら、土地勘もあって会社にも行きやすいため、その町にアパートを借り、そこで娘とのふたりぐらしをスタート。お絵かきが大好きで、賃貸マンションの壁紙を汚されては大変と壁中に紙を貼ったりしている中、やんちゃな娘を前に、「このまま賃貸住宅に住み続けてきれいに保てるのか不安だなあ」とも思っていた。するとあるとき、すぐ近くに中古マンションで空きがでるというチラシが入っていたのだ。場所も、広さも、環境もかなり希望に近い物件だった。

過去に筆者はクレジットカードの支払いが残高不足だった連絡がきたことが何回かあった。でも期日までに支払いを済ませてきており、そういう場合はローンは大丈夫だと聞いていた。

大きな買い物だが、暮らしている地域は、ファミリータイプのマンションが少ないことでも知られていて、理想に近い中古マンションに出会うなんてないはず。夫ともなんどか議論の末、会社勤めの我々が半分ずつ住宅ローンを申請しようということになった。

ところが、銀行の審査の結果はお金は貸せない、つまりNOだった。

審査結果は、YESかNOでしか知らされない。なぜダメなのか、どちらがダメなのかは教えてくれないのだ。夫はクレジットの滞納もしたことがないし、どう考えても疑惑は筆者。そこで信用情報開示請求をすることにした。

そこで、筆者がしでかした大失敗の原因が明らかになったのだった。

その原因は何だったのか。後編「クレジットカード使用9000円で「金融事故」。36歳会社員がローン却下された原因」で詳しくお伝えする。

文/FRaU web 新町真弓

クレジットカード使用9000円で「金融事故」。36歳会社員がローン却下された原因