「台風の日にデリバリーを頼んでいいの?」配達員にホンネを聞いた…「原付で二度、転びそうになった」「遅配で舌打ちされた」一方、「ライバルが少なくて稼げる」との声も。気になるチップは?

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関東直撃はまぬがれても8月17日にかけ首都圏で大雨や強風被害が憂慮される台風7号。お盆休みも相まって、雨の街は営業中の飲食店も少ない。となると、こんな台風の中で「デリバリーを頼んでいいの?」ということが気になる。悪天候になれば配達員の安全を考慮し配達を止めるお店もあるが、配達員にとっては「稼ぎ時」でもあるという。

ふだんはピックアップ待機のいわゆる「Uber地蔵」たちが列をなす場所だが16日は…?

「こんな天候のときこそ稼ぎ時」ショートバイトも参戦

2018年に大手ピザチェーン店のデリバリーバイクが台風による暴風雨の中、車道で立ち往生して転倒する映像がX(旧ツイッター)で出回り、配達員を心配する声が噴出した。それ以来、台風が来るたびにデリバリーについてSNSでつぶやく人が現れる。

今回の台風でも、「台風のときに頼むデリバリーこそが至高」というウケ狙いなのかどうかわからない声から「ピザ食べたいですね~!でも台風でデリバリーは申し訳なくて 今日はガマンです!」という配達員に配慮したポストが次々現れている。

では実際の配達員はこんな悪天候をどう考えているだろうか? 16日の日中、風雨が強まる首都圏で走り回っていた当事者に聞いてみた。

昼食時の12時半ごろ、東京・文京区のピザチェーン店にはバイトの配達員が雨のなか絶え間なく出入りしていた。
配達員はカッパとヘルメット姿で、蒸し暑いなか汗でびしょびしょになっている。

配達に勤しむ17歳の男子高校生は、「いつもの倍くらい忙しいです。だけど時給1350円ももらえるし、夏休みだし稼ぎたいからがんばるしかないですね」と話す。

さらに「強い雨だとタイヤがスリップしたり、視界も悪いので怖いです。自分は電動機付自転車を使って配達していますが、今日は二度転びそうになりました」と、雨の日の条件の悪さを吐露した。

この高校生によると、昔は現金払いの客も多く、悪天候の時にはチップをもらった配達員もいたと聞いたことがあるというが、「今は事前決済だからそういう旨みはないですね」とのことだ。

同じ店で配達する20代の男性も「僕はショートバイトで今回募集があったので登録して入りました。午前11時から21時まで入っていて、日当は13000円。別のエリアでは11000円とかだったのでかなりワリがいいですね」と鼻息が荒い。

「このエリアの人は比較的みなさんおおらかなので、遅れても嫌味もなく『ご苦労さま』と言ってくれますが、エリアによっては台風でも遅いとか文句言われたり舌打ちされることはありますよ。『置いといて~』とぞんざいにあつかわれることもありますね」

台風がかすめそうな千葉県幕張の同じピザチェーン店の男性店員は「デリバリーを止めるかどうかの判断は、本社から指示がくることもありますし、店で判断することもあります。確かに天候が悪いと注文が増えて忙しくなることはありますね。

今回風が強くなればデリバリーを止めるかもしれませんが、まだそんな雰囲気ではなさそうです。デリバリー断られて怒るお客さんですか? いやあ、最近はみなさん理解してくださって、そういう人は少ないですね」と客からの無理強いはないと証言した。

Uber Eats配達員は「いつもよりライバル少ない」 

一方、同じデリバリーでも雇用契約がなく、自分の意志で稼働するフード配達員は少し事情が違うようだ。

ファストフード店や飲食店が集まる錦糸町駅周辺は、ふだんは裏路地に早朝から多くの配達員が待機する“デリの聖地”と言われている。普段はランチタイムに職場勤めの人からの注文が多いようで、お盆休み真っただ中の16日は悪天候も重なり昼食時なのに配達員の姿は少なめ…。そんな中でも話を聞くことができた。

20代のUber Eats配達員は「ふだんはもっとたくさん待機のライバルがいるんですけど、今日はご覧の通り。やっぱり天気が悪いから避けてるんだと思います」と言いながら、自分にはチャンスだと話してくれた。

「この天気だから今日は報酬がふだんより高いですね。1軒あたり1000~2000円くらい違います。運転がいつもより大変だけど、僕はこの仕事一本だから、むしろ稼ぎ時でチャンスだと思ってます。今はまだ天気もひどくないし、これから悪化してきたらもう上がるつもりです。

注文もふだんより多くて、やっぱりみんな家にいながら食事したいんだなって思いますね。割増だし他に稼働する配達員は少ないし注文も多いし、僕としては雨の運転がちょっと面倒なくらいで稼げるチャンスです」

Uber Eatsについているチップ機能もこういう天候だと配達員に有利になるのだろうか?

「チップはふだんと変わらないんですよ。こういう天気だからって多めにくれる人はいなくて、でも言葉では『こんな天気にありがとうね』って優しくしてくれる人が多いですね」(同)

ただ天候がかなり悪化すれば、配達員のやる気に任せると危険が生じることもある。このためUber Eats Japanは2019年10月に関東に甚大な被害を与えた台風19号が接近した際は東京や神奈川、愛知、大阪などで「配達パートナーの皆様を考慮する」として丸一日サービスを止めたこともある。

16日の夕方、同社に今回の対応を尋ねると「風などの天候への対応については、気象庁が発表する気象情報にもとづき、サービスの提供を一時的に停止すべきかどうか、エリアごとに決定いたします。

この度の台風については、現時点でサービスの提供を停止する予定はありませんが、配達パートナーの安全を確保するため、今後の状況を継続して注視してまいります」と回答した。

都内では風雨がやや弱くなった夕刻、自転車で配達に回る20代のバイトの男性は、嵐の他にも“敵”がいると話した。

「きょうは雨も風もそんなに強くなかったので、ちょっと滑りやすいくらいでトラブルとか事故はなかったです。それよりもカッパで風が通らないから暑い方がしんどいです。雨なのか汗なのかも分かりません。

びちょびちょに濡れながら届けるからお客さんも優しいです。そもそも給料を天気もだけど季節で変えてほしいです。同じ額だけど春秋と夏冬の大変さは明らかに違います」

今回の台風7号に絡んでは、佐川急便とヤマト運輸が16日に茨城、千葉両県の一部地域での荷物の預かりや配達を停止。日本郵便も台風の影響を受ける一部地域でサービスを止めた。

出来高制の配達員にとっては、配達中止は日々の実入りに直結するので悩ましいが、安全を第一に考えて台風が抜けるまで少し待つことが重要だろう。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班