自動車業界に迫る2009年問題
トヨタ以外にも、欧州攻略を狙う国内メーカーはディーゼル開発を強化、各トップはディーゼルへの期待を鈴木会長のように口をそろえる。背後には、米ビッグ３の経営に破壊的な打撃を与えた燃料費高騰に加え、09年ごろを境に日本・欧州・米国の主要市場で実施される排ガス規制強化への対応がある。米JDパワー社の調査によると、ディーゼル車の世界需要は今後10年で２倍、個人乗用車の26％に達し、現在３％強の米国でも10年後には10％を超える見通しを示している。
３年前に自社開発に成功したばかりのホンダは５月、ガソリン車並みの静粛性と環境性能を備えた直列４気筒とV型６気筒の新型ディーゼルを開発していることを公表し、福井威夫社長は「（４気筒を）３年以内に市場に投入する」と自信を示した。９月には窒素酸化物を窒素に転換する世界初となる搭載予定の技術を矢継ぎ早に披露し、世界で最も厳しいと言われる07年発行の米排ガス規制に欧州勢を抜いて一番乗りで達成したことをアピールした。
日産のカルロス・ゴーン社長も、次世代技術について「市場のトレンドはまだはっきりしていない」として、独自ハイブリッドの可能性もにじませがら当面は選択肢を広げておく姿勢を強調。GM破断直後にあった中間決算会見では、「ディーゼルはルノー側で開発しており、日産ではあまり資源を投入していない。２社が重複せずに、それぞれ特定の技術を開発して互いにメリットを享受している」と訴え、仏ルノーとの協業の成功例として欧州向け日産車へのディーゼル供与を挙げた。一部報道では、09年にも米国でディーゼル搭載の大型ピックアップトラックを投入する憶測も浮上している。
GMがらみで大再編も？
当のトヨタ・いすゞ連合は、連携が順調に進めば３年後の09年にはトヨタ車に共同開発エンジンを搭載する見通し。11月中にも両社の副社長級が参加しての検討チームを組織し、事業形態や対象範囲など具体的な内容を詰める。
焦点になると見られるのは両社がそれぞれディーゼル工場を構えるポーランド。いすゞは独オペル「アストラ」などに搭載の４気筒1.7リットルの小型エンジンを生産し、生産能力は年間30万基。一方のトヨタは「アベンシス」「カローラバーソ」に搭載する2.2リットルの中型エンジンで年間18万基の規模を擁する。会見でいすゞの井田義則社長は「1.7リットルの小型エンジンを生産するポーランドや米国の生産拠点を有効活用できればベスト」と同国事業を名指しした。
しかし、提携合意から一夜明けた８日には、来日中のリチャード・ワゴナーGM会長と両社長が個別に会談したことも伝えられている。ディーゼルをめぐってはGM・いすゞでの合弁事業は継続の方向性にあり、トヨタ傘下でいすゞの競合社でもある日野との補完関係の構築も懸案に挙がっている。渡辺社長は「（増資は）考えていない」と断言したが、事の次第ではトヨタを軸とする大再編への伏線にもなりかねない状況だ。【了】
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