7日、ディーゼル共同開発を柱とした資本・業務提携に基本合意して握手するトヨタの渡辺社長(右)といすゞの井田社長(撮影:吉川忠行)

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7日に基本合意に至った小型ディーゼルエンジンの共同開発を柱とするトヨタ自動車といすゞ自動車の資本・業務提携。同日午後3時から行われた「日本企業初の通期営業益2兆円超え」を射程圏に入れたトヨタの中間決算の記者会見の終了時に、突然、「グループ拡大」を思わせるリリースが記者席に配られ、午後7時からの緊急会見を予告するアナウンスが流れると、場内にはうなり声があがった。

 「お互いに競争力の強化に努め、グローバルな成長と発展をはかり、お客様のご要望にお応えできる商品をよりタイムリーに供給したい」。300人を超える報道陣を前に一語一句を噛みしめるようにこう語るトヨタの渡辺捷昭社長。隣に座ったいすゞの井田義則社長は「正直大変驚いた。いすゞの商品が評価されて大変うれしい」と表情を緩ませた。

 経営難に陥った米ゼネラルモーターズ(GM)が、長期保有していた日本の自動車株を昨秋から段階的に手放したことに端を発した業界の合従連衡(がっしょうれんこう)。富士重、いすゞに水面下で打診し、危なげなく提携にこぎ着けた「渡辺トヨタ」に、スズキとの協業拡大を実現しながらも本丸・GMとの提携交渉が破談に終わった「ゴーン日産」と、“GM後”の新たな覇権をめぐって国内大手の明暗が分かれた。

トヨタ、世界一へ布石

再編劇の主役を演じたトヨタには、ダイハツ工業(出資比率51.2%)、日野(同50.1%)、富士重(同8.7%)、いすゞ(同5.9%)の大手自動車4社がぶら下がり、高級車、小型車、軽自動車からバス・トラック、高性能のガソリンエンジンからハイブリッド、ディーゼルに至るまで業界の英知を結集した“総合的な自動車会社:general motors”を形成することになる。

今回の提携の背景には、ガソリンエンジンに比べて二酸化炭素の排出量が少なく、燃費性能の高いディーゼルエンジンが次世代環境技術の一つとして見直されつつある現実がある。今、世界中のメーカー間で環境性能を高めた新型ディーゼルの開発をめぐる熾烈な競争が繰り広げられているのだ。特に環境への関心が高い欧州では、温暖化ガスの排出が少ないディーゼル車は販売台数の6割を占めるなど、ガソリン車をしのぐ人気を集めている。

GMを抜いての世界一の座が目前に迫ったトヨタにとっては、先行するハイブリッド技術に加え、欧州に強いディーゼルも新たな柱として据えることで、盤石の布陣を築く考え。渡辺社長が「各国のエネルギー政策や規制、燃料の多様化を考えると、ディーゼル分野のより一層の強化が必要と考えた」と提携の狙いを明かすと、井田社長は「世界一のディーゼルエンジンを造ることができる」と応じた。

自動車エンジンの技術競争に詳しい業界関係者(59)は、トヨタ・いすゞ連合について「日本のディーゼル技術としてはダントツの生産力・技術力を誇る」と太鼓判を押す。いすゞはGMはじめホンダ、仏ルノー、独オペルなどに納入実績のあるディーゼルエンジンの一大供給源。トヨタもシェア5%と低迷する欧州市場のテコ入れを意識して、自前のディーゼル搭載比率を高めており、傘下のダイハツ、日野、豊田自動織機でも独自でディーゼルを生産している。

「まるで空気清浄機」

ディーゼルエンジンとは、圧縮した空気に軽油を注ぐときに起こる圧縮熱で自然着火し、燃焼させてピストンを動かす仕組み。ガソリンエンジンに比べて構造が簡単で燃費性能が高く、二酸化炭素の排出量も2〜3割少ない。一方で、騒音や振動が大きく、健康上有害な粒子状物質や窒素酸化物を排出するため、世界各国で排ガス規制の対象とされてきた。石原慎太郎都知事がススの入ったペットボトルを振りかざし、ディーゼル公害対策を訴える光景が目に焼き付いている読者も多いだろう。

“ディーゼル先進国”の欧州でも、ガソリン車を凌駕(りょうが)するようになったのはここ5、6年のこと。日本と同様に「臭い、うるさい、汚い」との悪評が高く、10年前の搭載比率は20%強にとどまっていた。90年代から独ダイムラークライスラーや独BMWなどの欧州メーカーが中心になって排ガス浄化技術の改良に努め、ターボと組み合わせることで静粛性も実現。弱点の克服とあわせ、持ち前の燃費性能の良さも、「アウトバーン」を突っ走る長距離ドライバーの多い欧州ユーザーの心をつかんだ。

前出の業界関係者は、最先端のクリーンなディーゼルについて「極端に言えば、空気よりも排出物の方がきれいなぐらい。空気清浄機のようだ」と表現する。(つづく

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