東京・青海の「メガウェブ」で開催中の「カローラ生誕40周年記念展」(撮影:吉川忠行)

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“世界の大衆車”も不惑に?──。トヨタ自動車が誇るベストセラー「カローラ」が誕生して今秋で40周年を迎えるのを記念して、同社が運営する東京・青海の「メガウェブ」と池袋の「アムラックス東京」の2会場で、初代から9代目(2000年発売)までの実車を揃えた展示会が行われている。10月1日まで、入場無料。

 カローラは、高度成長にともなう「マイカー時代到来」の機運を背景に、排気量1.1リットルの新型エンジンを搭載したファミリーカーとして1966年11月に発売。価格は当時の大卒初任給の約17倍にあたる43万2000円だった。「日産サニーの価格41万円に2.2万円足せばプラス100ccのクルマに乗れる」を売り文句に、同時期に発売された競合車と熾烈(しれつ)な販売合戦を展開した。

 開発面では、実用的な機能性の高さに、魅力を兼ね備えた「80点主義+α」というコンセプトの下、石油ショックやバブル経済など時代の変化に合わせたニーズを盛り込む形で2000年の9代目までモデルチェンジを重ねた。

 現在では世界16カ国での生産、140の国と地域で販売されており、05年の世界販売は139万台、06年6月末時点で累計販売は3160万台に達した。国内の年間販売ランキングでは、40年の歴史で36度も首位に輝く一方で、世界累計販売台数で海外分が6割を超えるなど、「グローバルブランド」としての地位を確立している。

 今秋には6年ぶりにフルモデルチェンジした「10代目」を投入する。21日に開かれた記念展示会の記者発表の場では、開発担当の奥平総一郎エグゼクティブ・チーフエンジニアを多くの記者が取り囲み、新しいカローラの全容を探った。

 新モデルは、「9代目」発売直後から開発に着手。「初めに日本ありきではなく、最初から世界のニーズを調査した上で、規格をつくる」と奥平氏が強調するように、米国、欧州、アセアン、中国など世界中の拠点から知を結集して、“世界の大衆車”の名に恥じないクルマ作りに取り組んでいるようだ。遠く離れた海外にいる開発チームともテレビ会議で頻繁に意見を交換するなど、「常に世界中で誰かがカローラについて仕事している状態」(奥平氏)という。

 「10代目」は、燃費などの環境性能や安全性の向上を重視。スモールカーの人気を背景に、価格や大きさにも配慮したという。生産体制の面では、国内と海外がほぼ同じ時期に量産に着手する「世界同時生産」を初めて採用した。

 国内で製造工程の改善を積み重ねて精度を高め、他地域での量産時期をずらすことで、海外工場への負荷を軽くする手法が採られてきたが、販売の6割を占める海外の“お得意様”へいち早く新型を届けようとする心意気が伺える。

 トヨタでは7月、RV(レジャー多目的車)「ハイラックス」の欠陥を8年間放置したとして幹部らが熊本県警に書類送検された。年央会見冒頭で、 渡辺捷昭社長は謝罪、「マネジメントを強化しているが、(品質管理が)おろそかになる可能性はある」と不安をもらす場面もあった。

 揺らぐ品質管理について、奥平氏は「手品があるわけではない。地道な作り込みが必要」とうなづきながら語った。“トヨタの顔”でもある主力車だけに、「一つ問題が発生すれば大変なインパクト」(奥平氏)があることは間違いない。数十年も歴代のカローラを乗り継いでいる上客も多く、「10代目」がトヨタの信頼性を左右すると言っても過言ではなさそうだ。【了】