レパードSに出走予定のミッキーファイト(撮影:下野雄規)

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【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】

netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)

◆本来であれば人気薄の馬を狙っていきたいレースだが……

AIマスターM(以下、M) 先週はアイビスSDが行われ、単勝オッズ7.6倍(3番人気)のモズメイメイが優勝を果たしました。

伊吹 着差以上の完勝と言って良いのではないでしょうか。スタート自体はまずまずでしたが、ハナや外ラチ沿いのポジションを取りに行くことなく、道中は中団を追走。残り400m地点を過ぎたあたり、馬群がバラけはじめたタイミングでやや内に寄せ、自身の進路を確保しています。残り200m地点を過ぎたところではすぐ前を行くウイングレイテスト(2着)、外ラチ近くのテイエムスパーダ(3着)が抜け出しかけていたものの、ここから力強く伸びてウイングレイテストに並びかけ、そのまま逆転。最後はクビ差までリードを広げて入線しました。上がり3ハロンタイムは出走メンバー中単独2位の32秒8。この末脚を引き出した国分恭介騎手のレース運びは本当にお見事でしたし、仮に今回と異なる枠順や展開で再戦したとしても、結果が大きく変わるとは思えません。

M モズメイメイは自身3度目の重賞制覇。2023年の葵Sを制した後はしばらく大敗続きでしたが、前走の北九州記念でも3着に健闘しましたし、完全に復調したと見て良さそうですね。

伊吹 勝ったモズメイメイは2023年のチューリップ賞を、2着のウイングレイテストは2023年のスワンSを、3着のテイエムスパーダは2023年のセントウルSを制した実績のある馬。3頭しかいなかったGIIウイナーがそのまま上位を占めたわけですから、総合的な競走能力の高さを問われる流れだったのでしょう。近年のアイビスSDはコース適性の高さが明暗を分けがちという印象だったので、こうした結果となったのは少々意外。傾向が変わりつつあるようですし、来年以降はスタンスを変えて予想に臨みたいと思います。なお、モズメイメイはサマースプリントシリーズチャンピオンのタイトルを目指してセントウルSに転戦する予定とのこと。当然ながら相応の注目を集めてしまうと思うのですが、勢いに乗っている今は無理に逆らわない方が良いかもしれませんね。

M ちなみに、2着となったウイングレイテストは前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していた馬。惜しくもモズメイメイに先着を許したとはいえ、しっかり期待に応えました。

伊吹 単勝オッズ6.5倍(2番人気)という評価からもわかる通り、実績上位ということでそれなりに支持が集まった一方、半信半疑と見る向きも決して少なくなかった馬。狙っていた方にとっては妙味あるオッズだったと思いますから、ここを的確に狙えた点は高く評価して良いでしょう。この調子をキープしていければ、単勝オッズ208.6倍(14番人気)のテンハッピーローズを推奨したヴィクトリアMのような、大きめの的中がまたそのうちあるはず。楽しみですね。

M 今週の日曜新潟メインレースは、今秋以降の大舞台を目指す3歳馬によるダート重賞、レパードS。昨年は単勝オッズ11.9倍(5番人気)のライオットガールが優勝を果たしました。なお、その2023年は単勝オッズ5.4倍(3番人気)のオメガギネスが2着を、単勝オッズ23.3倍(8番人気)のルクスフロンティアが3着を確保し、3連単12万4360円の好配当決着になっています。

伊吹 2017年に単勝オッズ66.3倍(11番人気)のローズプリンスダムが、2019年に単勝オッズ24.0倍(10番人気)のハヤヤッコが優勝を果たすなど、超人気薄の馬が上位に食い込んだ例も少なくありませんね。過去10年の単勝人気順別成績を見ても、3着以内馬30頭のうち13頭は単勝7番人気以下だった馬です。

M 単勝1番人気馬だけはまずまずの成績を収めていますが、これを除く上位人気グループの馬は総じていまひとつ。波乱含みの一戦と見ておくべきでしょうか。

伊吹 さすがに単勝13番人気以下の馬は2014年以降[0-0-0-28](3着内率0.0%)だったものの、単勝7番人気から単勝12番人気の馬は2014年以降[4-4-5-47](3着内率21.7%)。上位人気馬も人気薄の馬も3着内率があまり変わらないわけですから、伏兵を積極的に狙う価値があるレースと言えます。

M そんなレパードSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ミッキーファイトです。

伊吹 話の流れからすると歓迎しづらいところを挙げてきましたね。かなりの注目を集めていて、単勝1番人気となる可能性すらありそう。

M ミッキーファイトはデビュー戦から2連勝を果たした馬。前走のユニコーンSでは3着に敗れてしまったものの、先着を許したラムジェットとサトノエピックは次走の東京ダービーでもワンツーフィニッシュを決めていますし、健闘と言って良いでしょう。今回のメンバー構成なら実績上位であり、逆らおうと考えている方はそれほど多くないかもしれません。

伊吹 あえてこの馬を挙げてきたわけですから、Aiエスケープは妙味ある伏兵が見当たらないと見ているようですね。この判断を踏まえたうえで、私はレースの傾向からミッキーファイトの信頼度を測っていきたいと思います。

M 最大のポイントはどのあたりでしょうか?

伊吹 まずチェックしておきたいのは距離適性。2021年以降の3着以内馬9頭は、いずれも“JRAの、1700m超2000m未満の、1勝クラス以上のレース”において1着となった経験がある馬でした。

M なるほど。1800mや1900mのレースに実績のある馬が優勢ということですね。

伊吹 おっしゃる通り。今年も、1700m以下や2000m以上のレースを勝ち上がってきた馬は疑ってかかるべきだと思います。

M ミッキーファイトは中山ダ1800mのレースで2勝目をマークした馬。距離適性に不安はありません。

伊吹 あとは前走の出走頭数も見逃せないファクターのひとつ。同じく2021年以降の3着以内馬9頭中8頭は、前走が14頭立て以上のレースでした。

M 前走が少頭数のレースだった馬は過信禁物、と。

伊吹 該当馬が人気を裏切ってしまった例も多いので、しっかりチェックしておきたいところです。

M ミッキーファイトは前走のユニコーンSがフルゲートの16頭立て。こちらも強調材料のひとつと言えます。

伊吹 さらに、同じく2021年以降の3着以内馬9頭中8頭は、前走の馬体重が500kg未満。近年は大型馬があまり上位に食い込めていません。

M こちらはなかなか興味深い傾向。ダート戦であるにもかかわらず、比較的小柄な馬の方が信頼できるとは……。

伊吹 2023年は人気上位の2頭がいずれもこの条件に引っ掛かっていて、単勝1番人気のミスティックロアが14着に、単勝2番人気のエクロジャイトが4着に敗退。今年も同様の決着を警戒しておくべきでしょう。

M ミッキーファイトは前走の馬体重が540kg。かなりの大型馬です。

伊吹 正直なところ、私は別の馬を連軸に据えるつもりでした。ただし「魅力を感じる伏兵が少ない」という点に関しては私もAiエスケープとほぼ同意見。ミッキーファイトもある程度は高く評価せざるを得ないと考えています。この馬が人気に応える前提で、コンパクトに買い目をまとめた方が良いかもしれません。