Photo: Dua Rashid - Gizmodo US

AIマシンと思わなければ、普通にいいPCなんだけどなあ。

ポケット執事から宿題ヘルプまでAI、AIな昨今。万物の「AI化」は留まるところを知りません。

そんななか、Acer(エイサー)から新発売の「Swift Go 16」も、AI PCの先頭集団に入るノートです。

CPUにAIに強いIntel(インテル)Core Ultra 9 185H、統合GPUにAIでグラフィック処理を高速化するIntel Arcを搭載。キーボードはAIアシストを呼ぶCopilotキー付きだし、マイクもAIノイズ除去入りなら、WebカメラもAI一時ノイズ除去入りってな調子で、オールアラウンドにAIが組み込まれています。

価格は900ドル(約14万円)。これで32GB RAM、1TB SSD、16インチのマルチタッチIPSパネルが手に入ります。選べる構成はこれ一択です。

Acer Swift Go 16

◾️これは何?

Acer最新の16インチAIノートPC

◾️価格

900ドル(日本市場価格は未発表。14インチモデルは20万9800円)

◾️好きなところ

・軽くて耐久性に優れたビルド

・ポートが豊富

・競合をしのぐ処理性能

◾️好きじゃないところ

・OLEDを選べない(日本版OLEDモデルはこちら)

・バッテリー持ちが公称20時間の半分(日本版14インチモデルの紹介には「バッテリー駆動時間最大12.5時間」とあります)

・キーボードが浅くて硬い

軽量コンパクトで頑丈

ゲーミングPC以外の16インチノートは、だいたい1.8〜2.3kgくらいありますよね。MacBook Proは2.13kg、「軽量」と呼ばれるレノボIdeaPad 5i Proでさえ1.86kgあるのに、Swift Go 16はずっと軽い1.678kg。持ち運びにすごく便利です。

しかもスリム。コンパクト&スリムなレノボの折りたたみPC「ThinkPad X1 Fold 16」でも、厚さは1インチ(2.54cm)くらいあるのに、Swift Go 16は0.6インチ(約1.49cm)です。これだけしっかり作りこんで、この薄さは感動もの。

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キーは大きいけど打鍵感イマイチ

16インチなのでキーボードはたっぷり大きくて、テンキーあり、ファンクションキーあり、バックライトあり。

スペースバーの右には、昨年暮れMicrosoft(マイクロソフト)が発表したAIコンパニオン呼び出しボタン、Copilotキーも付いてます。有効にして押すと、おすすめの質問が表示されて、その下の欄に質問を入力できる仕組み。

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触ってみたら、あまり自分の好みではないキーボードでした。 キーストロークが浅すぎるし、しっかり押した打鍵感が得られなくて。原稿書いてると、どうしても別のキーボードをつなぎたくなっちゃって、2週間のテスト期間中ずっとこれというのはキツかったです。

タッチパッドは特に目立った問題はなくて、大きさ十分で安定感も◎。

ポートは仕事用ノートとしては理想的で、今どき珍しい盗難防止鍵ケンジントンロック用スロットまで付いてます。あとはMicroSDカードリーダー、3.5mmミニジャック、 USB Type-A×2、USB Type-C×2、HDMI用スロットといった構成です。

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ライバルを凌駕するパフォーマンス

全体の処理性能は効率いいです。プロセッサーは最新のIntel Core Ultra Hシリーズ(Intel Core Ultra 9 185H)、統合グラフィックスはIntel Arc、内部メモリ32GB、SSDは1TB。Geekbench 6.0のベンチマークでは、シングルコアが2,342、マルチコアが12,956という高スコアを出し、競合のDell XPS 14や、レノボのThinkPad X1 Fold 16とLegion Slim 7iをも上回る結果となっています。

ただ、ゲーミングのニーズを満たすPCではありません。ゲーミング用にはPredatorシリーズがすでにありますし。Swift Go 16はあくまでも仕事用ノートという位置づけです。高速なネット接続環境で、ストリーミングサービスのGeForce NowやXbox Cloud Gaming経由でゲームを楽しむ分にはサクサクなんですけどね。どのみちIntel Arcなので、そういう楽しみ方をする人以外が飛びつく製品ではないように感じます。

Copilotの機能はいいのだけど、それだけのために買うほどではないです。Copilotキーを押して立ち上がるのは、いうなればチャットボット。でも、並みのチャットボットができないこともできるのが違いです。例えば壁紙を変更したり、音声のトラブルを解決したり、ユーザーの設定を変えたり。手動で設定を開いて目当ての項目を探すより、自分は時間と労力の節約になりました。

探し方がわかっていても、チャットボットに聞くほうがずっと早いこともあります。例えば声で「BluetoothをONにして」と言いつけるとONになるといった具合。その後は「OFFにして」と言うだけで、話の流れから「あーBluetoothのことだな」って理解してくれるので大助かりです。タイポがあれば自動で修正してくれるので、もう打ち間違いを気にする必要もありません。

対応は迅速ですが、読み込みに異様に時間がかかることも若干ありました。ギリシャの首都を答えるのに17秒かかったし、画像の生成を頼んだら「ご自身のMicrosoftアカウントにサインインが必要です」と伝えるのに8秒くらいかかって、サインインしてから生成されるまでにまた10秒もかかってました。どっちにしてもCopilotの利用にはサインインが要るので、最初の8秒は必要ないんですけどね。

なおチャットボットの利用には制限があって、プロンプトが5件の上限に達するとアクセスがブロックされます。

OLEDじゃないけど悪くないディスプレイ

ディスプレイは16インチのWUXGA(1920×1200)IPSパネルで、リフレッシュレートは60Hz。上位のOLEDや120Hzじゃないので、高画質や対戦を楽しむゲーム向きとは呼べません。

タッチ入力もできますが、広い画面をタッチで操作するのには限界があるので、試用中タッチの出番はありませんでした。輝度は350ニトで、オフィスのデスクに置くと大きなウィンドウから光があふれて最高です。

テスト中は明るさを40%に設定していましたが、それでも十分すぎる明るさです。白黒のコントラストと鮮明度はOLEDほどじゃないにせよ、非OLED系ならではの透明感、リッチな色彩、ディテールがあるので、YouTubeもNetflixもこれで十分楽しめました。

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Webカメラは「並み」

1440p QHDのWebカメラは、AIによる一時ノイズ除去(Temporal Noise Reduction:TNR)付きとのことですが、AIでノイズを除去しないLenovo Slim 7iと比べても、肉眼で違いはわからないレベルでした。カメラの質が悪いとかじゃなくて、単にAIの効果がいわれているほどではないというだけの話です。マイクにもAIによるノイズ除去機能が付いています。

友だち曰く、ファンもものすごく静かだったとのこと。これも高度なAIのアルゴリズムの賜物なのでしょうか。よくわからないけど、うれしいですね。

バッテリーは公表スペックの半分しか持たない

最初から正確な数字を出されていたら、ここまで落胆はしなかったと思うのですけどね。バッテリー持ちを実際に測ってみたら10時間程度でした。これだけ大きいPCならどうせデスクで使うだろうし、10時間持てば大満足な結果なのですが、いかんせん「バッテリー持ち20時間。出先のコンパニオン」というPRとの乖離が激しくて、落胆しかないです。

10時間というのは、2週間近くにおよぶ試用期間中、充電100%から0%になるまでの所要時間を測って割り出した平均値です。バッテリーが減りまくるアプリの分はカウントされていなくて、用途はGoogle Docs、ウェブ閲覧、Gmail、Slackがメインで、あとはPhotoshop仕事を少々という程度でこれですからねぇ…。

リモーワークの人や、1日おきに自宅の最寄りカフェで仕事する人なんかは、いちいち電源探したり、充電器持っていかなきゃならないのが手間かもしれません。

評価は星5つ中3

Swift Go 16は900ドル。これで効率のいい処理性能、きれいなディスプレイ、豊富なポート、最高のサイジングが手に入ります。 バッテリーは広告の連続使用時間には遠く及びませんが、それを抜きにしてみれば、10時間というのは16インチノートとしてまったく悪くない数字です。

AIも同じで、マーケティングで「AI、AI」といっているから期待が過剰に膨らんでしまうだけであって。現段階で「AI PC」は常識を破るほどのものではないですし、それはそれ、これはこれって分けて考えないと。

買うなら「AIマシン」ではなく「クールなAI機能が付いたPC」として見るべきだし、そう見た場合、Swift Go 16には期待を裏切る要素はひとつもないのでした。

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Acerのゲーミングノートは、処理性能高いけど詰めの甘さが目立つ