質の高いインタビューをするための「3つのステップ」をご紹介します(写真:YUJI/PIXTA)

人に話を聞く際に、うまく質問ができなくて深い話を聞き出せなかった経験はありませんか? 問題解決コンサルタントの岡佐紀子氏は、「質問の質がアウトプットの質を左右します。いきなり質問をするのではなく、3つのステップを踏むことで相手の話を引き出すことができます」と言います。岡氏の著書『正しい答えを導くための疑う思考』から一部抜粋・再構成のうえ、質の高いインタビューをするための「3つのステップ」についてご紹介します。

「疑う思考」で物事を多角的に判断する

私たちが仕事をする際には、基本的に1人で仕事をすることはなく、多くの場合何らかの部署やチーム、プロジェクトなどに所属して、人と関わり合いながら仕事を進めていくはずです。このときに疑う思考を有していれば、さまざまなことができるようになります。

例えば、商品の企画を立案するときや、業務の流れを見直すときに役立ちます。現状を客観的に見つめて課題を抽出し、それらを整理した上で、「それって本当?」と疑っていく。そうすることによって、問題に対処することができるのです。

私たちは問題解決を図ったり、新しいことを始めようとしたりしたときに、情報を取捨選択しています。ただそのときに、やはりどうしても関心が高い情報だけを選んでしまったり、自分にとってメリットのある情報を高く評価してしまったり、といったことをしがちです。

これは、アンコンシャスバイアスや思考パターンが影響しています。アンコンシャスバイアスや認知の偏りをなくすことはできません。

そこで私たちは、得た情報や自分の中で生じる判断に対して、疑うことを重ねていきます。疑うことを通じてさまざまな角度から光を当てて、物事について判断をしていくのです。

仕事で人とコミュニケーションを取る際には、頭の中で疑うだけで終わるのではなく、疑う思考を人との関わりの中で生かしていくことが重要です。

疑う思考を最も生かせる場面が、質問する場面です。質問の質がアウトプットの質を左右しますから、どのような質問ができるかによって、仕事の成果も変わってきます。

良質な質問をアウトプットするためには、できるだけバイアスがかかっていない状態に保つことが大切です。

例えば権威バイアスが強くかかってしまっていると、「上司がこう言うのだから正しいのだろう」と考えてしまうため、上司や役職者の話に対して適切に疑うことができず、正しく質問することができません。また、正常性バイアスがかかっていると、「自分は大丈夫だろう」と考えて適切に警戒することができないため、質問の質が下がってしまいます。

質の高い質問をするための「3つのステップ」

バイアスをできるだけ取り除こうと思っても、なかなか難しいものがあります。そもそも、バイアスをゼロにすることはできません。さらに私たちが無意識に持っている思考パターンによってもかかるバイアスが異なるので、「こうした方がいい」というアドバイスを一概に言うことができません。ですから、自分にどんなバイアスがかかりやすいのかを把握しておきましょう。

その上で質の高い質問をするのですが、それには次の3つのステップを踏む必要があります。

ステップ1 感想を伝える
ステップ2 確認する
ステップ3 質問する

●ステップ1 感想を伝える

話を聞いたら、頷きます。頷くことで「あなたの話を聞いていますよ」ということを示します。シンプルなことですが、頷くためには、相手の話を聞かなければなりませんね。聞くというのは、相手が何を主張しているのか、何を伝えたいのかということを理解することでもあります。

表情や態度で「話を聞いています」と示すことも、ステップ1に含みます。また、話を聞いていて「おかしいな」「賛同できないな」と感じたとしたら、無理に頷く必要はありません。ポイントは、相手の話を聞く、ということです。

相手の話が終わったら、まずは感想を伝えられるようになりましょう。相手の話に対して、「私はこう感じました」「このように思っています」と言葉にしてみます。

この段階でつまずいてしまう人がかなり出てきます。「何を伝えたらいいかわからない」「感想を言葉にすることができない」と不安になってしまうのです。私が講師として研修する際にも、参加者の方に感想を求めることがあります。そのとき文章で返してくれる方もいますが、多くの場合「良かったです」「勉強になりました」といったような、非常にシンプルな感想にとどまります。

感想を伝えられないということは、思ったこと、感じたことを言葉にできていないということ。一言で言うと、語彙力が不足しています。

LINEやチャットが普及したことで、長文の文章を作ってやり取りする機会が減りました。「やば」「きも」のように、短い言葉で感情を伝える機会が増えれば、語彙力が下がるのは当然のことです。

研修で感想を伝えるワークを行う際には、いくつかの感情を最初に用意しておきます。その感情の中からどれを感じたか選んでもらいます。

そのあとに、

・なぜその感情を感じたのだろうか
・それはいつだろうか
・どのようなときに感じたのか

を書いていきます。そうすると自分が感じたなんとなくの感情について明確に伝えられるようになります。


『正しい答えを導くための疑う思考』P.234より

感想を伝えるときも同じです。「楽しかった」と思ったなら、「どのように楽しかったのだろう?」と一歩掘り下げてみましょう。「推しをプレゼンするワークが楽しかった」という答えが出てきたら、さらに「そのワークが楽しいと感じたのは、なぜだろう?」と掘り下げていきます。

こうして掘り下げていくことで、感想を言語化して伝えることができるようになっていきます。

●ステップ2 確認する

感想が伝えられるようになったら、次のステップが「確認」です。

感想がうまく伝えられる人は少ないと書きましたが、確認はさらに少なくなっていきます。

確認とは、話を聞いていたときに「?」と疑問に思ったことを尋ねることです。

「それってこういうことですか?」「この部分がよくわからなかったので、もう一度説明していただけますか?」と相手に尋ね、得た情報を補強していきます。

確認作業を怠ってしまったことによって、誤解が解消されないまま進んでしまい、トラブルが起きてしまう。これは誰しも一度は経験したことがあるはずです。

確認しないことがモチベーションの低下にもつながる

しかし、確認は非常に難しいものです。

「無知だと思われたらどうしよう」

「嫌そうな顔をされたらどうしよう」

「仕事に影響したら嫌だな……」

「責められてると思われたら困るな」

こういった気持ちが生まれてしまうため、人は会話において確認を挟むことはほとんどありません。確認作業は心理的にもハードルが高いので、つい「あとで聞こう」と後回しにしがちです。

しかし、後回しにすると話がずれたまま進んでいって、軌道修正ができないまま会話が終わってしまうことも多々あります。当然仕事の効率も落ちますし、確認しないことがモチベーションの低下にもつながります。

以前、ある問題を解決するためのミーティングに参加したときのことです。

いろいろな意見が飛び出していましたが、私にはどれも表面的な解決策のように思えたため、率直に「表面的な話に終始していて、全く熱意を感じません」と伝えました。すると、ある参加者から「熱意がないとは、どういうことだ」と強く反論されたのです。

あとからわかったのですが、実は、私もその方も「この場が表面的な議論になっている」という意見は共通していました。ただ、私が発言した「熱意がない」という言葉が引っかかったのだそうです。

私はかなりハキハキと思ったことを話すタイプです。その私が「熱意がない」と発言したものですから、「声高に主張する人だけが熱意を持っているのではない。内なる熱意を抱えている人もいる。それなのに、『熱意がない』と勝手な判断を下すのはどうなのか」と反発を感じたのだそうです。

ミーティングが終わってから私たちは、そのことについて膝をつき合わせて議論を行いました。このときに行ったのが、「確認」という作業です。

確認というプロセスを経たおかげで、私の「熱意がない」という発言の意図を理解してもらうことができました。そして、その方の思いや熱意に対する定義を私も知ることができました。議論を交わしたあと、とても結束が強まったのです。

しかし、このとき、もしもお互いが「あの人とは相容れない」「もうつき合いきれない」とシャットダウンしていたら、おそらくチームは空中分解していたはずです。

「表面的な議論に終始している」という問題意識が共通しているのに、誤解を解消できなかっただけでチームが崩れてしまう。これは、損失以外の何物でもありません。

●ステップ3  質問する

確認のハードルを越えられたら、次のステップが「質問」です。

質問もとても難易度が高いものです。研修の場で質問を受けつけても、なかなか手が挙がりません。「どんな聞き方をしたらいいかわからない」「何を聞いたらいいかわからない」と感じている方がとても多いようです。質問が出たとしても、「熱意って何ですか?」というような、抽象的な質問になりがちです。

相手が答えやすくなる具体的な質問を


「最近どうですか?」と聞かれても、答えに詰まりますよね。抽象度が高い質問は、相手が答えにくい上、知りたい回答が返ってこない可能性が高まります。

質問力を高めるポイントは、知りたいことに合わせて、抽象と具体を使い分けること。抽象度を下げて具体的にすると、知りたいことに対して回答が返ってきやすくなります。

「最近どうですか?」よりも、「最近、仕事はうまくいってますか?」の方が具体的です。さらに言えば、「この間始まったあの仕事、進んでいますか?」という質問の方が具体的なので、相手も答えやすくなります。

質問するときにも、疑う思考がとても役に立ちます。さまざまな切り口から質問できるようになるからです。

・切り口を変えた質問の例
【時間軸】
「過去にどんなことがあったんですか?」
「今はどのような状況ですか?」
「将来どうなりたいですか?」

【立場の違い】
「現場ではどうなっていますか?」
「営業部ではどのように考えていますか?」
「新人の立場からするとどう見える?」

このように、3つのステップを踏むことによって、実は敵対していると思い込んでいた相手とも共通目的を持っていたことがわかったり、相手の本心や問題の本質が見えてきたりします。

ぜひみなさんもこの3つのステップを取り入れてみてください。

(岡 佐紀子 : 問題解決コンサルタント、デール・カーネギー・トレーナー )