「日本には"謎マナー"が多すぎる」年間外食800回の美食家が、それでもこれだけは絶対ダメというNG行動3つ
※本稿は、浜田岳文『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。
■マナーよりも快適さのほうが重要
海外の高級レストランや「グランメゾン」と呼ばれるような国内の格式の高いレストランに行くとなると、テーブルマナーが心配という方も少なくないかもしれません。しかし、そこまで細かなところは気にしなくてもいいと僕は思っています。
たとえば、ナプキン。膝の上にサービススタッフが置いてくれるとき、対角線で半分に折って三角の形に置かれることがほとんどですが、僕は四角いほうが使いやすいので、四角に自分で折り直しています。何が正解なのか、気にしたこともありません。
食事が終わったらナプキンをどこにおくか。お手洗いなどで中座するときにどうすればいいか。いろんなことをいう人がいますが、正直どうでもいい。何も考えず、適当にテーブルの上に置いておけばいいだけです。
食事が終わったかどうかは、皿の上のナイフ、フォークで意思表示ができます。ナイフとフォークをお皿の上で揃えていれば、持っていってくれますし、開いていれば持っていかれることはありません。揃え方は、国によって横一直線だったり斜めだったりするようですが、それも気にしたことはありません。
ナイフ、フォークが事前に複数並んでいる場合、どう使うか、というのも日本のマナー本ではよく見かけますが、そもそも大規模なバンケットでない限り、こういう状況は稀です。お皿ごとに替えてくれるか、もしくはカジュアルなお店だと使い回すのが一般的だからです。事前に並んでいる場合は、基本的には外側から使っていけばいいのですが、これも過敏になる必要はありません。ナイフ、フォーク両方使う人もいるだろうからということで両方セットされていても、実際フォークだけで食べ終わってしまえば、数が合わなくなる。それで問題ありません。また、多めに使ってしまったら、サービススタッフが補充してくれます。なので、シンプルに、自分が食べやすいものを使って食べたらいいと思います。
昔は、ライス皿のご飯はフォークの背にのせて食べる、なんていう謎マナーが日本ではまことしやかに語られていました。なんでそんな食べにくいことをしなければいけないのでしょうか。バランスを取って上手くのせて、と考えていると、気が散って楽しめなくなってしまう。フォークを右手に持ち替えて、すくえばいい。食べたいように食べたらいい。日本人はマナーを作るのが大好きなようで、勝手にマナーを捏造(ねつぞう)する人が後を絶ちません。根拠のあるマナーもあるのでしょうが、基本、他人に不快感を与えなければなんでもいいと思っています。
■絶対に避けたほうがよい三大行動
また、背もたれをどう使うか、と聞かれたことがありますが、僕は食べている時間以外は普通にもたれています。女性はバッグを後ろに置いたりするので、使わない人も多いようですが、確かに背筋が伸びているとかっこいい。ただ、高級レストランで3時間、4時間、座ったままになる場合、背もたれもたまに使ってリラックスして食事を楽しめばいいと思います。
逆に、避けたほうがよいと思うのは、食べるときに肘(ひじ)をつくことです。会話をしているときに、腕をテーブルの上に置くのは全く問題ありません。ただ、少なくとも欧米や日本においては食事中に肘をつく文化はありません。
西洋料理はお皿を持ち上げることはありませんが、和食は食器を手に持っていただくものが多い。中でも、お椀は基本、手に取らないといけないものです。特に、内側に塗りがしてある内蒔絵の器は、置いたまま箸で触ると傷をつける可能性があるので、絶対に持ち上げる。器の観点からも、手で持って食べるほうがいいということです。
また、材質にもよりますが、鮨屋や割烹の、傷つきやすい白木のカウンターでは、テーブルにスマホなどを直接置かないほうがいいでしょう。テーブルの上に敷くものがあれば問題ないと思いますし、フーディーの中には畳でできたスマホ置きを持ち歩いている人もいます。僕は、スマホは、膝の上に置くことが多い。お店によっては、お客さんが巨大な一眼レフを落としてしまい、白木のカウンターが凹んでしまったので撮影禁止にした、という話もあります。貴重な木材を使っている場合、お金では弁償できないくらいの損失になる可能性もあるので、要注意です。
一方、海外のレストランではそもそもテーブルもカウンターも傷つきやすい材質ではないことがほとんどです。また、高級店だとテーブルクロスが敷かれていることも多い。なので、お客さんは普通にスマホなどのものを置きますし、お店の人もそういうものだと思っています。要は、常識で判断すればよいのです。
■料理の撮影は許可を得るべきか?
海外に関しては、そもそも撮影の許可を聞く必要がありません。聞いてもいいですが、「どうして?」という顔をされます。「いいに決まってるよ」となるだけです。
万が一撮影がNGの場合は、事前に「撮影はNGです」と伝えられるでしょう。お店側が何も伝えない限り、お客さんは普通に撮影を始めるからです。
昔はイタリアの「ピアッツァ・ドゥオーモ(Piazza Duomo)」やアメリカの「シェフズ・テーブル・アット・ブルックリン・フェア(Chef's Table at Brooklyn Fare)」などが撮影禁止でしたが、今はOKになりました。このご時世、撮影禁止のお店は日本国外に何軒残っているでしょうか。日本人がやっている鮨屋などはあるかもしれませんが、それ以外だと、世界中で10軒ないかもしれない。それくらい稀です。
一方、日本は撮影NGの店がそれなりにあります。もしかすると、人気高級店の1割くらいがそうかもしれません。また、撮影OKのお店でも、事前に聞かずに勝手に撮り始めたら断る、というお店もあったりします。なので、食べログなどで見て撮影OKだとわかっていても、礼儀として「撮影しても大丈夫ですか」と聞くべきです。僕は、何度も通っているお店でも、「撮影しますね」と仁義を切ることが多いです。特に、貸切会でなく他のお客さんがいる場合は、なおさらです。
■ラーメン店でのNG撮影行動
ただ、ラーメンなどのカジュアルな業態は、状況が異なるようです。僕はラーメンの専門家ではないので理由はわかりませんが、周りを見ていても誰も撮影OKかどうか確認しない。ほとんどのお店で、みんな自由に撮影して食べています。そういうお店で、「撮影していいですか?」とあえて聞いてみたことがあるんですが、どんな本格的な撮影が始まるのか、と警戒され、わざわざ店長が出てきたことがありました。それ以降、周りのお客さんが聞いていないお店では、聞くのは止めました。撮影NGという口コミや貼り紙がなければ、周りの雰囲気を見ながら、自由に撮っていいのではないでしょうか。
ただ、多くのラーメン店では、キッチンの中や内観は撮影が禁止されているようです。また、これは日本の他業態でもそうですが、周りのお客さんが映り込むのもNGなので、あくまで料理だけを撮影するのが賢明だと思われます。
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浜田 岳文(はまだ・たけふみ)
美食家、フーディー
1974年、兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中に、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するため、フランス・パリに留学。南極から北朝鮮まで、世界約127国・地域を踏破。「OAD世界のトップレストラン」のレビュアーランキングでは、2018年度から6年連続第一位にランクイン。株式会社アクセス・オール・エリアの代表として、エンターテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの投資も行っている。
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(美食家、フーディー 浜田 岳文)