先ほども申し上げた通り、人は他人に興味がありません。初対面ならなおさらです。シンガポールのことはいったん忘れて、ガールフレンドとマレーシアのお話をさせてあげてください。

 人は承認されたい生き物です。それを逆手に取って、お相手に気持ちよくおしゃべりさせてあげましょう。「良い子だな」「もっとよく知りたいな」と感じはじめたお相手が「キミは旅行は好きなの?」とお尋ねになったとします。そこでやっと自分語りが許されると思ってください。

 聞かれてもいないことをベラベラと話すのは得策ではありません。また、聞き役に徹することは、お相手の情報を収集する良い機会でもあります。好きなブランドや食事の好みなどを覚えておくと良いですよ。

◆お相手の言葉を否定しないこと
 
 嫌われる人の話し方の特徴のひとつに「いや、でも……」を多用することなどがあげられます。例えば「今日、会社で上司にひどく叱られてしまった」と、お相手が愚痴をこぼしたとします。そこで「いや、でもそれはお前が悪いよね」と、頭ごなしにお相手を否定してしまう男性は、どんなにイケメンでマッチョでもモテません。

 そこは「そうなんだ……それは大変だったね」と、お相手に寄り添いましょう。目の前でしょんぼりしているお相手をほったらかして、会ったこともないどうでもいい上司の肩を持つのは賢くありません。初対面ならなおさらです。

 まだあなたへの警戒心のあるお相手に対してファイティングポーズで挑めば嫌われるのは当然です。「いや、でもそれはお前が悪いよね」と、あえて言わなくてはならない場面もいずれあると思います。しかし、それは2人の関係がもっと成熟してからにしましょう。

◆否定を否定しない
 
 では、「いや、でもそれはあなたが悪いよね」と頭ごなしに否定された場合はどうするべきか。簡単です。「そうですよね……ボクが悪いですよね」と、お相手の言葉を全肯定してください。

 初手であなたを全否定するような、ヤバいやつと本気で戦う必要はありません。ヤバいやつのことは全力でスルーしましょう。それも大切なスキルです。

「そうですよね……ボクが悪いですよね」としょんぼりして見せたあなたに、さらに追い打ちをかけてくるマウンテンゴリラがいたら、X(旧Twitter)でネタにするか、キャバ嬢か占い師にでも話して忘れてください。同じ土俵にあがってはいけません。あなたの格が下がるだけです。

「そうですよね……ボクが悪いですよね」としょんぼりして見せ、気持ちよくマウントを取らせてあげましょう。お相手から「また会いませんか?」と、お誘いがあったらあなたの勝ちです。気持ちよくフってやりましょう。気持ちいいですよ。

◆手のひらで転がしてやりましょう

 今回は初対面の相手に良い印象を与える会話術について解説してみました。ホステスのお仕事をしていると、お客様から有益なお話を伺う機会がたくさんあります。聞き上手は得です。

 どんなに容姿端麗でスタイルが良くても、コミュニケーション能力が低いために損をしている方を多々目にします。反対に、容姿は平凡で中肉中背でも、コミュニケーション能力の高い方というのは、恋愛でもお仕事でも無双しているものです。

 まずは聞き役に徹しましょう。お相手から「また会いませんか」という言葉を引き出せたらあなたの勝ちです。とことん沼らせて、尽くしてもらいましょう。良い夏にしてくださいね。

<文/みずえちゃん>

【みずえちゃん】
1989年生まれ。新潟県長岡市出身。関西外国語大学卒業後、大阪市内の広告代理店に勤務する傍ら、キャバ嬢デビュー。結婚、離婚、地方の激安キャバクラを経て、現在は銀座ホステスとライターを兼業。X(旧Twitter):@mizuechan1989