上汽集団が「MG」ブランドで販売する小型EV「MG4」は、ヨーロッパ市場で高い人気を誇る。写真は中国の港で船積みを待つ同型車(上汽集団のウェブサイトより)

EU(欧州連合)が中国製EV(電気自動車)に高率の追加関税を課すことに対して、中国の国有自動車最大手の上海汽車集団(上汽集団)が徹底抗戦の構えを見せている。

同社は7月5日、EUの政策執行機関である欧州委員会に異議を申し立てるとともに、反論の場となる聴聞会の開催を要求すると発表した。

欧州委は、中国製EVが不当な補助金の恩恵を受け、人為的に低く抑えた価格でヨーロッパのEVメーカーに脅威を与えているとして、2023年10月から反補助金調査を開始。その一環として上汽集団、民営自動車大手の吉利控股集団(ジーリー)、EV最大手の比亜迪(BYD)の3社を対象にしたサンプル調査を実施した。

「調査に非協力」に反論

追加関税自体の是非もさることながら、上汽集団にとって受け入れがたいのは、欧州委が同社を「調査に非協力的な企業」に分類したことだ。その結果、欧州委が6月12日に示した追加関税の税率は、(調査に協力的とされた)吉利が20%、BYDが17.4%だったのに対し、上汽集団には38.1%の最高税率が適用された。

EUは域外からの輸入乗用車に10%の関税をかけており、追加関税はそれに上乗せされる。欧州委の決定を黙って受け入れれば、追加関税の適用が始まる7月5日から、上汽集団製のEVは合計48.1%もの高関税を強いられることになる。

そのため、上汽集団は「補助金の算定方法に誤りがある」とする反論の意見書を欧州委に提出。これを受け、欧州委は7月4日に上汽集団への追加関税率を37.6%に修正したが、引き下げ幅はわずか0.5ポイントに過ぎなかった。

このままでは、上汽集団のヨーロッパ市場でのビジネスが大打撃を受けるのは必至だ。そこで同社は、欧州委に対してさらなる異議を申し立て、徹底抗戦する意思を固めた。

欧州委員会が7月4日に開示した文書によれば、追加関税の対象となる利害関係者は課税開始(7月5日)から5日以内に、欧州委に対して聴聞会の開催を要求できる。また、同じく15日以内に文書で異議を申し立てることが可能だ。


欧州委員会は調査対象企業が「協力的」か「非協力的」かにより追加関税率に格差をつけた。写真は欧州委のフォンデアライエン委員長(欧州委のウェブサイトより)

そもそも、欧州委はなぜ上汽集団を「調査に非協力的」と判断したのだろうか。上述の文書のなかで欧州委は、上汽集団が(EVの)生産コスト、部品リスト、製品仕様、部材サプライヤーから購入した原材料の化学成分、部材サプライヤーとの取引明細、補助金の受領明細などの重要情報を提供しなかったと説明した。

これに対して上汽集団は、「欧州委員会が提出を求めた情報には、反補助金調査に必要でないものが大量に含まれていた。また、わが社が部材サプライヤーに対して情報提供を強いることはできない」と反論している。

電池の化学的組成まで要求

上汽集団の主張によれば、欧州委が同社に求めた情報は、通常の補助金調査の範疇を大幅に逸脱していた。その中には、車載電池の化学的組成など企業秘密に属する情報も含まれていたという。


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それだけではない、同じく上汽集団によれば、欧州委は(中国製EVの)補助金額を見積もる計算式の中に、中国国内の消費者を対象にしたEV購入補助金を含めている。EU市場で販売される中国製EVに関して、そのような計算式を使うのは筋が通らない。

欧州委に開催を要求した聴聞会の場で、上汽集団はこのような反論を展開し、追加関税の再修正を求めることになりそうだ。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月5日

(財新 Biz&Tech)