それぞれのスタイルで「チーム家事」を取り入れてみませんか(写真:kapinon / PIXTA)

共働き家庭は当たり前のものになりつつありますが、家事や育児を担当するのが、どちらか一方に偏りがち、という家庭も多いことでしょう。そこで「ワンオペ」解消のため、家事シェア研究家・三木智有さんが提唱する「チーム家事」の考えを取り入れてみませんか(本記事は三木さんの著書『家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア専門家が導き出した』より一部を抜粋、再編集したものです)。

チーム家事が家族の人生をより自由にする

「チーム家事」とは、家事育児がワンオペではなく、チーム化された状態を指します。つまり家事育児をひとりに頼り切らない状態をつくることです。

チーム家事がもたらしてくれる最大の恩恵は夫婦で力を合わせてつくる、自分らしく豊かな日々です。

朝目覚めたらゆっくりと朝日を浴びて、温かいお茶を飲む……なんてのは夢のまた夢。覚醒とともにキッチンで朝食をつくり、洗濯機を回し、子どもたちを起こし、ご飯を食べさせ、叱咤激励しながら朝の支度を促し、家を出る頃にはすでにひと仕事終えたような疲労感。

この家庭内戦争は帰宅後も待っています。夕飯をつくり、子どもに食べさせ、片付けをし、お風呂に入れて……。1日の中で、わずか30分でいい、自分らしく好きに過ごせる時間がほしい。そんな悲鳴は、今や世界中にあふれかえっています。

この戦場にいるような日々の慌ただしさは、ワーキングマザーだけの問題でしょうか。

たしかに仕事と家庭の両立という最前線に立ち、毎日家庭を回しているのはワーキングマザーが多いでしょう。でも、問題はワーキングマザーであることではありません。解消するべきは「ワンオペ状態」なのです。

「仕事と家庭の両立」という理想は、社会の問題である側面がおおいにあります。残業体質な働き方、待機児童が多く保育園に入れられない、預けられても子どもの発熱などの急なトラブル対応に追われ、小学校に入れば「小1の壁」もあります。

【画像6枚】「チーム家事」4つのスタイルをイラストでチェック!

「共働き家庭が当たり前になっているのに、なんでこんなに子育てが無理ゲーなんだ……!」

どれだけの家族が、言葉にならない憤りを叫んだことでしょうか。ただ、こうした多くの叫びを受けて、社会は少しずつ変わってきています。

育児・介護休業法は2021年から段階的に改正が進み、企業は男女問わず育休の推進をしなくてはいけませんし、家事代行やベビーシッターなどのサービスも10年前と比べてずいぶん利用しやすくなっています。

それでも、ワーキングマザーが抱える家庭内戦争状態は、まだまだ解消されてはいないのです。

毎日の生活は1日1日着実に過ぎていきます。子どもの成長は待ったなしです。社会が両立に向けて完璧に制度を整えてくれるのを、僕たちは待っているわけにはいきません。それまで「自分らしく豊かな日々」を先延ばしにするなんて、あまりにも残酷だと思うのです。

だから、僕たちが取り組むべきは「夫婦で力を合わせる」ことです。

この文章を書いている2023年の夏。衝撃的な数字が発表されました。

なんと、夫婦の家事の8割を、妻が行っているというのです。これは厚生労働省所管の国立社会保障・人口問題研究所が2022年に実施した「全国家庭動向調査」の調査結果。社会が両立に向けて動いているはずなのに、この調査結果にあるように妻の抱えるワンオペ問題は取り残されたままです。

日々の暮らしが慌ただしくなってしまう大きな原因は「ワンオペ」です。人の手が増えれば増えるほど、穏やかな時間や気持ちの余裕を取り戻すことができます。

もちろん、夫婦の力だけですべてが解消されるわけではありません。様々な人の手を借りながら乗り越えていくのが、これからの家事育児。

夫婦、地域、社会支援、テクノロジーなど、あらゆるリソースを活用して家事育児をワンオペからチーム化する、それが「チーム家事」です。

チーム家事には4つのスタイルがある

これまで14年間の活動を通して、多くの家事シェアの悩み相談を受けてきました。家事をどのようにシェアするかはそれぞれの家庭によって違いますが、大きくまとめると4つのスタイルにまとめることができます。

1 シュフ型

2 担当型

3 ハイブリッド型

4 自律型

細かいところでは家庭それぞれのシェアのやり方がありますが、大きなスタイルとしてはこの4つのどれかに当てはめることができます。まずは自分たちがどのスタイルで家事育児を運用しているのか、次の診断でチェックしてみましょう!


チーム家事診断(出所:家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア専門家が導き出した』)

これらの型に優劣はありません。一度決まったからと言ってずっとそのままで運用する必要もない。家族の状況に応じて変わっていったり、長い年月をかけて、この型に当てはまらない自分たちなりのスタイルが生まれればいいでしょう。

中心的な人の指示でまわす「シュフ型」

ここから、各スタイルの細かな運用方法をご紹介していきます。自分の当てはまった型だけじゃなく、他の型も知ることで向いている型や目指したい型を考えるヒントになります。

シュフ型:指示を出して家庭を回す

シュフ型は、家庭の中に家事育児を中心的に担っているシュフ(主婦・主夫)的な役割の人がいて、その人が他の家族に指示(お願い)を出しながら運用しています。そのため専業家庭や、夫婦での家事スキルに大きな差がある場合、また家事に対してのこだわりが強い人がいる場合になりやすいスタイルです。


シュフ型(出所:家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア専門家が導き出した』)

【シュフ型の注意点】

家事シェアの話をすると「シュフ型はダメなスタイル」と思われがちですが、そんなことはありません。無理に担当を決めてイライラするより、自分から指示をするほうがやりやすいケースもあります。

また、暮らしへのこだわりがあり、それを実現したい場合もシュフ型で暮らしを主導したほうがお互い心地よいでしょう。

タスクを決める「担当型」

担当型:個人の責任で家事をこなす

担当型は、「掃除はパパ担当で料理はママ担当」というように、それぞれのタスクに担当者を決めている運用方法です。「子どもの寝かしつけは日替わりで担当」「土日はパパが料理担当」のような交代制の場合も含まれます。共働き家庭や、家事の得意不得意で分担をしたい方などは、この担当型で行うことが多いです。


担当型(出所:家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア専門家が導き出した』)

【担当型の注意点】

担当型で気をつけなくてはいけないのが、「担当型もどき」がよく見られることです。

たとえば「ゴミ捨てはパパ担当」と決めたのに、ゴミの日を忘れたり、言われないと集めなかったり、ゴミ袋の管理ができていなかったりする場合があります。

これは、担当型を装った「もどき」で、実際には「シュフ型」です。下手に「担当」としている分、シュフのイライラが高まるので要注意です。

「ハイブリッド型」はいいとこ取り

ハイブリッド型:ベースはシュフ型、一部担当型

ハイブリッド型は、シュフ型をベースに、部分的に担当型を取り入れているパターンです。たとえば、基本的な家事はママがやっていて指示も出しながら、ゴミ捨てとお風呂掃除はパパが担当している、というようなスタイルです。

じつはわが家も現在はハイブリッド型。僕がシュフ的な役割をしながら、妻が洗濯物と食器洗いを担当しています。掃除は休日の午前中にやることが多いのですが、そのタイミングで娘がトイレ掃除をやり、妻が排水溝の掃除をします。

トイレ掃除や排水溝掃除は彼女たちの役割ですが、僕が掃除するタイミングを指示する、というシュフ型的マネジメント方法をとっているのです。


ハイブリッド型(出所:家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア専門家が導き出した』)

【ハイブリッド型の注意点】

シュフ型と担当型のいいとこ取りができれば気持ちよく回っていく型ですが、やはり「担当型もどき」になってしまうリスクもあります。

担当タスクを決めても自主性を持って取り組んでくれない、うまく家事を手放せずにシュフの負担が大きくなりすぎてしまうなど、シュフ型と担当型双方のリスクを抱えてもいます。

理想的だが難しい「自律型」

自律型:気づいたほうが、気づいたときにやる

自律型は、それぞれが自分で考えて、必要な家事育児を行うスタイルです。

自律型は目指して実現するというよりも、価値観の近い夫婦が自然とそうなっているケースのほうが多いです。一見理想的なスタイルではありますが、他のスタイルと比べて実現がとても難しいのが実状です。

価値観や生活に求めるものなどが近い夫婦、お互いに自然と気遣いができている夫婦、時間的制約が調整しやすい働き方の人たちが自律型になりやすいです。


自律型(出所:家族全員自分で動く チーム家事 日本唯一の家事シェア専門家が導き出した』)

【自律型の注意点】

「気がついたほうが、気がついたときにやる」と聞くととても理想的ですが、お互いが同じように気がつくとは限りません。

結果「いつも自分ばかり気がついている」と偏りが生じがちでもあります。また、気がついたほうが負け(やらなくちゃならない)という「家事育児チキンレース」のような状態になることもあります。


(三木 智有 : NPO法人tadaima!代表/家事シェア研究家)