「NFTとデジタルアート」新たなアート界への招待
NFT保持者の中から抽選で当たるプリント作品を手にした、NFTアーティストのシュランパー(写真:Jesse Whiles撮影)
仮想通貨やNFT(非代替性トークン)が突如として現れニュースを賑わせた数年前とは異なり、近頃は少し世の中が落ち着いてデジタルアートに向き合える環境ができつつある気がします。
ここでは、NYを拠点にアート&テクノロジーの分野で活動する斯波雅子(筆者)が、今、改めてNFTやデジタルアートとは、ライフスタイルにどう取り入れたらいいのか、従来のアートとは一味違った世界への入り口を初めての人にもわかりやすくご紹介します。
NFTとは?デジタルアートとの新たな出合い
NFTすなわち「Non-Fungible Token」、日本語で「非代替性トークン」は、雑な言い方をすると、ブロックチェーン上にあるがために「識別できる電子アセット」を指します。
まったく同じ内容の電子情報であっても、それがいつ誰によって作られたもので、どこにいくらで行き渡ったかなどの来歴をも確実に記録して差別化できる、画期的な仕組みです。
そしてこれにいちばん恩恵を受けるのが、デジタルアート。これまで「もしかしてコピペ? 複製?」と思われてなかなか希少価値を担保できなかった電子作品が、ブロックチェーンを使うことで、誰でも簡単に正真正銘の本物であることを証明できるようになったのです。
ここで皆さんが疑問に思うであろうポイントはきっと、「そうは言っても難しそう」「アートにどうつながるの?」などでしょう。これらのスティグマを打破していきたいと思います。
これまでNFTは、真新しい言葉がいくつも登場し、「技術に詳しい人しか扱えない、難しくて怖いもの」と認識されがちでした。
しかし、WaaS(Wallet as a Service)やアカウント抽象化というような、メールアドレスだけで取り引きできる技術の登場によって、誰でも簡単にNFTをゲットしたり、本来セキュリティの面で何よりも安全なブロックチェーン上でのやり取りがスムーズにできるようになりました。
そもそも「アート」というものが値段が高くて難解なもの、と思われがちな問題点も、デジタルアートが解消してくれます。誰もが知っている人気アーティストの作品は、ポスターやシールでない限り数万円スタートの買い物になります。
それだったらブランド物や旅行など、もっとわかりやすいものにお金を使うという方が多いのではないでしょうか。そんな、「アートに興味はあるけれどなかなか手が届かない」という方にこそ、値段が安くて色々な使い方ができて楽しいNFTはおすすめです。次の項目ではいくつかの面白いアートプロジェクトをご紹介していきます。
気軽なアート体験の扉を開くNFTとデジタルアート
NY在住のシュランパーは、テクノロジーを使って次元の垣根を越えるアーティストです。
そんな彼による画期的なNFTプロジェクトが、「食べられるNFT」。手のひらサイズのテレビ型パッケージに入ったグミは食べるのが勿体ないかわいさですが、食べてもずっとブロックチェーンに残る、つまり「消費されつつ永続性がある」というブロックチェーンならではのアートです。
ARバージョンがついてくるため、電子上の世界と実世界を視覚的につなぐ役割も果たします。グミを食べた後もNFT部分を保持していると、たまにオリジナルのプリント作品がもらえるなどのサプライズも用意されていて、シュランパー自身も「アーティストとコレクターがコミュニケーションをはかれることが楽しい」とサポーターとの今までにない関係性を楽しんでいます。
シュランパーの食べられるNFT (写真:筆者提供)
同じくNY在住の、日本を代表するインターネット作家ユニットexonemoも「メタバース・ペットショップ」プロジェクトでユニークなNFT作品を提供しています。
檻の中のモニターに映るカラフルなパターンのワンちゃんたちは、10分以内に買い手がつかないと永遠に消えてしまいます。それに気づいて慌てて購入すると、救助されたデジタルワンちゃんがほかの購入されたデジタルワンちゃんたちと元気に走り回ったり遊んだりしているのを専用サイトで見ることができます。
exonemo(エキソニモ)での「メタバース・ペットショップ」の展示風景(写真:exonemo公式サイトより)
このどこがNFT作品なのかというと、せっかく救ったデジタルワンちゃんの命をNFTとして永久化するオプションがあるからなのですが、そのためにはデジタルワンちゃんをスキンのパターンに還元しなくてはならない、つまり、なんと皮をはいだ状態でしかNFTにできない仕組みになっているのです。
「本来ペットショップでは、人間の都合で売れなかった動物たちが処分されている。これが電子上だったら違う気持ちになるのか」という疑問を私たちに問いかけるコンセプチュアルな作品です。
参加型アート事業に進化するものも
『ハイパー神社』(写真:たかくらかずき氏提供、Direction/Artworks:Takakurakazuki、技術協力:TRANSFORM ART by YUMEMI Inc.、Art Technologist:Tadaaki Sakamoto、 Planner:Rio Yoshida、Producer:Shigeo Goto)
また、京都在住の現代アーティストたかくらかずきは、jpeg等の拡張子を450体の八百万の神として表現し、私たちが日々生きているデジタルな世の中と日本由来の仏教などの東洋思想をユニークに結び付けた「ハイパー神社」プロジェクトを打ち出しています。
神NFTのホルダー(購入などでNFTを保有した人物)がそれぞれ、お互いの神をメタバース上で「参拝」する形で応援します。
6月にはホルダーだけが入れる2Dメタバース「ハイパー神社(祭)」がリリース、最終的にはアートの聖地・直島に新設される神社に実際に祭られるという、プロジェクトが何段階にも進化する壮大な参加型アート事業です。
クレジットカードで購入できる気軽さを生かして、あなたも日々の生活に「参拝」というキーワードを取り入れ、Discordでコレクター同士コミュニケーションを取るという新しいタイプのアートコレクターになってみませんか。
NFTアートの楽しみ方を探る
最近は、購入した作品をすてきに飾るのに適したプロダクトがたくさんありますが、その中でもInfinite Objectsは、デジタル作品を見せるのに最適なクオリティと、3種類の選べるサイズがあっておすすめです。
NFT保有者であることを簡単に証明できる手軽さと、売り上げの一部がアーティストに還元される仕組みも、ブロックチェーンを活用したプロダクトの醍醐味です。
もっと色んなデジタルアートについて知りたい、好きなアーティストの無料NFT(バッジ)がほしいという方におすすめなのが、ONBD.xyzなどのオンラインマガジン。アーティストの記事を読んだり、ほかのプロジェクトをのぞいてみたり、チャンネルコミュニティに参加したり、特典やイベントへの参加、面白い作品の発見など、こうしたプラットフォームを通したNFTアートの楽しみ方は多様です。
この記事を通じて、NFTとデジタルアートが提供する新しいアート体験の可能性を見つけて、読者の皆さんにも気軽にアートの世界に足を踏み入れていただけたら何より嬉しいです。
(斯波 雅子 : BEAF&ONBD 共同創設者)