◆危険な飲み会から逃走するも、自宅を特定されてしまう

なぜAさんは嶋田さんにそこまで固執したのか? その答えは、2度目となる2人きりの飲み会で判明したそうです。

「Aさんが好きなアニメのキャラに、自分がそっくりだというのが理由でした。転職してきたときから一目惚れだったそうで、絶対に結婚すると心に決めていたとか(苦笑)。オタク的な思考というか、夢中になると前が見えなくなるようで、何度も恋愛感情はないと説明しても聞く耳もたずでらちが明かないんです。それどころか、酔ってきたAさんは30歳を越えているから早く子どもがほしいとか、一緒に住んだら毎日したいなど完全なセクハラモードに。こちらの体を触ってくるので怖くなって、自分の飲食代だけ渡してその場から逃げたんですが、あとをつけられていたようで、自宅を特定されてしまいました」

◆“来襲”する際のクセを利用してやった

それからは、休日に自宅まで来ることもあり、また仕事でも嶋田さんと2人きりになれる業務を入れようとするなど、明らかにおかしな行動が目立ってきたそうです。さすがに異変に気づいた部内の数名が相談に乗ってくれ、Aさんから逃げる協力を申し出てくれたとか。ただ、いきなり上司に言っても、Aさんが嶋田さんに責任を押し付ける可能性もあるため、裏取りをすることになりました。

「転職した時期が同じB子ちゃんと、先輩社員のZさんが協力してくれました。つきまとっている証拠を押さえて、上司へ報告する際の材料にしようということになったんです。Aさんが休日にこちらの家に来る時は、必ず迎えに来たとLINEしてくるんです。なので、そのLINEが来たらB子ちゃんとZさんに報告して、スマホで姿を収めて貰うことになった。決行日に2人は自宅周辺のカフェに待機していたのですが、案の定AさんからLINEが。そのタイミングで2人に連絡して、Aさんが自分の家の付近をうろついているところを動画で撮影してもらったんです。その証拠を基に上司へセクハラやストーキングの相談をしました」

◆「被害届を出すべき」と言われるも…

突然の申し出に驚いていたものの、B子さんとZさんが同席してくれたこと、またつきまといの証拠があることで嶋田さんの主張を上司は受け入れてくれたそうです。

「上司がAさんに事実確認したところ、はじめはやはりこちらから誘ってきたと話したとか。ただ、ストーキングしている動画や、自分に送ってきたLINEの文面も証拠としてあることで言い逃れが出来なくなった。上司は被害届を出すべきだと言ってくれたのですが、少しは恩義もあるし、それはやめたんです。ならばと、会社はAさんを謹慎処分にした上で、大阪にある支社に急遽異動させることにした。上司も、もしこれ以上つきまとうなら警察に相談すると話したようで、その日からパタリとLINEはやみました」

親切にしてくれた先輩社員から、思ってもみなかった逆セクハラを受けた嶋田さん。こういった社内での男女トラブルは多いだけに、おかしいと思った際にはすぐ信頼できる上司や関連部署に相談すべきだと話してくれました。

<TEXT/高橋マナブ>

―[“逆セクハラ”エピソード]―

【高橋マナブ】
1979年生まれ。雑誌編集者→IT企業でニュースサイトの立ち上げ→民放テレビ局で番組制作と様々なエンタメ業界を渡り歩く。その後、フリーとなりエンタメ関連の記事執筆、映像編集など行っている