Qualcommの次世代AI PC向けSoC「Snapdragon X」を搭載した最初のノートPCの市場投入を目前に控えた2024年6月13日に、QualcommがSnapdragon Xのアーキテクチャを公開しました。この資料を元に、Snapdragon Xが旧来のSnapdragonシリーズとどう違うのかを、複数のメディアが報じています。

The Qualcomm Snapdragon X Architecture Deep Dive: Getting To Know Oryon and Adreno X1

https://www.anandtech.com/show/21445/qualcomm-snapdragon-x-architecture-deep-dive

Qualcomm Snapdragon X: Oryon CPU And Adreno GPU Architectures Explored | HotHardware

https://hothardware.com/reviews/snapdragon-x-oryon-cpu-and-adreno-gpu-architecture

◆Snapdragon Xファミリー

Snapdragon XのSoCはCPUの「Oryon」、GPUの「Adreno」、そしてAIパフォーマンスに不可欠なNPUとして「Hexagon」を搭載しており、Oryonのコア数によって10コアの「Snapdragon X Plus」と、12コアの「Snapdragon X Elite」の2つにわかれています。また、Snapdragon X Eliteはさらにコアの周波数によって3つのモデルにわかれています。



既に多くのメーカーがSnapdragon Xの採用を発表しており、IT系ニュースサイトのAnandTechは「OEMの採用状況を踏まえると、Snapdragon Xがこれまでで最も成功したQualcommのARM版Windows用SoCになることは間違いありません」と述べています。

◆Oryon

OryonはQualcommが2021年に買収したスタートアップ・NUVIAが開発を進めていたサーバー向けCPUコア・Phoenixを前身としており、スケーラブルで電力効率に優れた設計を継承しています。

エネルギー効率とパフォーマンスの両立を目指して設計されているため、以前のSnapdragonシリーズや競合他社のSoCにあるような「高効率コア」「パフォーマンスコア」などの概念がありません。

特徴的なのは、4つのコアを持つ3つのCPUクラスターを搭載しており、それぞれに12MBのL2キャッシュと専用のバス・インターフェース・ユニット(BIU)が割り当てられている点です。4つのコアが巨大なL2キャッシュを共有する構造は、Intelが高効率コアクラスターにL2キャッシュを共有させるのに似ています。



この効率性により、Qualcommは「Snapdragon X Eliteは、GeekBench 6.2シングルスレッドのパフォーマンスで現行の競合製品すべてに勝てる」と主張しており、実際に電力効率はかなり優れたものになる見通しです。



ただし、正確性は不明ながら「Snapdragon X Eliteマシンの一部はGeekBenchのベンチマークでiPhone 12 miniより低スコア」との情報も出ており、AnandTechは「このスライドをあまり過信しないようにしてください」としています。

◆Adreno

Oryonとは対照的に、Adrenoはアーキテクチャとしては新しいものではないとのこと。

ハードウェアとしては、Adrenoは6つのシェーダープロセッサーに最大1.5GHzで動作する演算装置(ALU)を256個ずつ、合計1536個備えており、ピーク時には最大4.6TFLOPSのスループットを発揮し、1秒当たり72ギガピクセルを処理することができます。



Oryonに比べると少し控えめなデータですが、Snapdragon X EliteのAdrenoはいくつかのゲームでIntelのCore Ultra 7 155Hに匹敵、あるいは上回るパフォーマンスを見せるとされています。



IT系ニュースサイトのHotHardwareは、「Snapdragon Xシリーズに関する初期の指標の多くは非常にポジティブであり、Qualcommが今後数カ月から数年以内にPC市場を本格的に破壊する可能性が高まっています。さらに、Snapdragon Xと競合するIntelやAMDの次世代アーキテクチャが出そろい、新たなプレイヤーがARM版Windowsに参入する時、状況がどう変わるのかは非常に興味深いものになるでしょう」とコメントしました。