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 ニュースなどで頻繁に取り上げられる「あおり運転」。被害者の精神的苦痛は深刻であり、トラウマにもなりかねない。
 自動車損害保険を扱うチューリッヒ保険は、『2023年あおり運転実態調査』を実施。あおり運転をされたことがあるドライバーは53.5%であった。約半数のドライバーが被害経験を持っており、現在も社会問題となっている。今回は、あおり運転に遭遇した2人のエピソードを紹介する。

◆“あおり運転”を自慢するトンデモ上司

 看護業界で働く水野真理さん(仮名・20代)は、常に“あおり運転気味”の困った上司Aについて話してくれた。

「ハンドルを握ると人が変わる……というタイプの人はたまにいるかもしれませんが、上司のAさんはハンドルを握っていなくても、口が悪く、部下に対して意地悪でした」

 Aさんと何度か一緒に社用車で出かけたことがあった水野さん。水野さんが運転していても、助手席から周りを走る車に文句を言ったり、運転中の水野さんをあおるような言葉を放ったりしていたという。

「この調子なので、自慢のスポーツタイプの自家用車に乗るときも、同じような運転の仕方をしていたようです。『外車がチンタラ走っていたから幅寄せしてやった』、『スピードの出る車なんだからスピード出して走れよ』と暴言を吐いたことを、なぜか自慢するように話していたんです」

 ある休日、自分の車を走らせていた水野さんは、クラクションを鳴らしながら走る車の音に顔を上げた。その車は、バス停付近で減速するバスを無理矢理追い越し、その後は無意味に徐行しながらクラクションを鳴らしていた。

「うわっ……Aさんだったりして……」

 そんな水野さんの嫌な予感は的中……。

「あおる車を見て、びっくりしました。その車にはAさんが乗っていたんですから」

◆社名が入った社用車で…

 Aさんは、なんと社名の入った社用車に乗っていたのだという。まわりからの印象は最悪だろう。

「私たちは、看護業界という人の命を助ける立場にあるので、その点からも安全で優しい運転を心がけるように社長から言われているんです。下っ端の私ですが、これはさすがに会社に話したほうがいいかもしれないと思いました」

 しかし、その必要はなかった。数日後、Aさんは他部署への異動が決まった。「異動時期でもないのに?」と話題になったというが、会社側からAさんと同じ部署の数人に対する聞き取り調査があったそうだ。

「調査の内容は、Aさんの運転についてでした。聞き取り対象になった同僚たちは、普段の運転や同乗した際のことを、正直に伝えたらしいです」

 また、「かなり危ない運転でバスをあおる、おたくの車を見た!」との苦情の電話もあったとのこと。水野さんは「アレを見ていた人が他にいたんだ……。社用車だったしな」と思ったそうだ。

 Aさんのこの騒動は、うわさ話が好きな女性も聞き取り調査を受けたため、会社中に知れ渡ることになった。そして、あおり運転が毎日のようにニュースをにぎわせていたこともあり、異動から数か月でAさんは退職した。

「自分の車ではもちろんですが、“会社の名刺”である社用車でのあおり運転で身を滅ぼした人がいることを忘れず、安全運転を心がけようと改めて誓いました」

◆急接近してくる黒いセダン

 遠藤曜子さん(仮名・30代)は夏の日の夕方、仕事を終え、自宅に向かって車を走らせていたときのことを話してくれた。

「街の喧騒から離れた郊外の道を走っていると、バックミラーに異様な光景が映り込みました」

 後方から1台の黒いセダンが急接近してきたのだという。その車は遠藤さんの車に異常なほど近づき、バンパーに触れる寸前の距離で追尾。遠藤さんは「どうしたんだろう」と思いながらも、スピードを少し上げてみたという。しかし、その車はぴったりとついてきたそうだ。