「次第に恐怖心がわき上がり、心臓の鼓動が速くなりました。あおり運転のニュースを見たことはありましたが、まさか自分がその被害に遭うとは思いもしませんでした。少し落ち着こうと深呼吸をして、できるだけ冷静に対処するようにつとめました」と、当時の緊迫したようすを打ち明ける。

 その後もあおり運転は続いた。しばらくして、その車はクラクションを執拗に鳴らし始めた。遠藤さんは限界を感じ、最寄りのコンビニの駐車場に避難することに。ウィンカーを出して左折し、駐車スペースに車を止めた。しかし、黒いセダンは遠藤さんの後を追うように同じ駐車場に入ってきたという。

◆恐怖におびえながら警察に通報すると加害者は慌てて…

 恐怖がピークに達した遠藤さんは、すぐに車のドアをロック。その瞬間、セダンの運転手が車から降りてきて、遠藤さんの車に向かって大声で叫び始めたとのこと。

「耳を塞ぎたくなるほどの怒鳴り声でしたが、内容は理解できませんでした。ただ、怒りの表情から敵意を感じました」

 すぐに「助けを呼ばなければ」と思った遠藤さんは、スマートフォンを取り出して警察に通報した。

「警察に説明する間も、相手の怒鳴り声は続きました。オペレーターに状況を伝えると、警察がすぐに向かうとのことでした。心の中で『早く来て』と祈りながら、車内でじっと待ち続けました」

 やがてパトカーのサイレンが聞こえた。あおり運転をしてきたチンピラ風の男は、その音を聞くと慌てて車に戻り、急発進して逃げたそうだ。警察に事情を説明すると、親身になって話を聞いてくれたという。安心した遠藤さんは、警察の指示のもと、ドライブレコーダーの映像を確認し、加害者を特定するための手続きを進めた。

「この経験を通じて、あおり運転の恐怖と危険を実感しました。日常の中で突然巻き込まれる可能性があるので、より一層の警戒と対策が必要だと思いました。自分や他人の安全を守るために、どんな些細な異変も見逃さず、冷静に対応することの大切さを学びました」

 後日、「あおり運転をした加害者が逮捕された」と、警察から連絡があったそうだ。

<取材・文/chimi86>

【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。