多くの現代車にはフロントガラスに落ちた雨滴を感知して動く自動ワイパー機能が搭載されていますが、テスラ車の自動ワイパー機能は性能が低いことが以前から指摘されています。一体なぜテスラ車の自動ワイパー機能がうまく動作しないのか、どうして問題の修正が難しいのかについて、テスラ関連の話題を取り上げるウェブメディアのNot a Tesla Appが解説しました。

Tesla Auto Wipers: Why They Don't Work and Why There Isn't an Easy Fix

https://www.notateslaapp.com/news/2045/tesla-auto-wipers-why-they-dont-work-and-why-there-isnt-an-easy-fix

テスラ車の自動ワイパー機能がうまく動作しない一番の理由は、「テスラ車には他の多くの自動ワイパー搭載車にある雨滴感知センサーがない」ということです。テスラは自動車に付けられているさまざまなセンサーを取り外し、代わりにカメラによる映像認識でさまざまな状態や周辺環境を感知する方針を示しており、その一環として雨滴感知センサーも排除されているとのこと。

多くの分野ではテスラのカメラを重視する方針がうまくいっていますが、雨滴感知センサーをカメラに置き換える試みは失敗しています。テスラ車にはフロントガラスを映す3個のカメラがありますが、これらはフロントガラスを見るためではなく、その前の道路や周辺環境を撮影することが主な目的です。そのため、フロントガラスのごく一部しか映っていない上に焦点もぼやけており、雨滴が付いていることをうまく認識できないとNot a Tesla Appは指摘しています。

実際にNot a Tesla Appは、テスラ車のフロントガラスに大量の付箋を貼り、テスラ車のカメラからどう見えているのかを調べる実験を行いました。



正面を向いた広角カメラの映像はこんな感じ。フロントガラスにたくさん貼られた青い付箋紙はまったく見えておらず、ルームミラーの近くに貼られた黄色の付箋紙の一部がかろうじて見えているにすぎません。



メインカメラの映像を見ても、黄色の付箋紙が下の方に見えているだけです。また、もう1個のカメラはメインカメラのズーム版であり、このメインカメラが捉えていない範囲のものは見えません。つまり、テスラ車のカメラはフロントガラスのうちルームミラー周辺の一部しか見えておらず、ドライバーや助手席の正面はまったく見えていないというわけです。



そのため、たとえ雨が降ってきても、ルームミラー周辺にわかりやすく雨滴が付かないと自動ワイパー機能がオンになりません。また、フロントガラスの正面に雪が積もったり、ジュースなどの液体がかかったり、虫がぶつかったりしてもワイパーは反応しないとNot a Tesla Appは指摘しています。

テスラも当然この問題を認識しているはずですが、「雨滴感知センサーを搭載する」といった解決策の採用には消極的です。その理由は、「1つの問題を解決するために1つの装置を増やす」という解決策は製造上の複雑さをコストを増加させ、モデルごとの互換性を減らしてしまうためだとNot a Tesla Appは述べています。

Not a Tesla Appは、テスラ車の自動ワイパー機能がソフトウェアで改善される可能性もあるものの、既存の車両に搭載されたカメラ機能では解決が難しいだろうと指摘。今後テスラは、フロントガラスの正面を撮影できるようにカメラをハードウェア的に修正するか、あるいはワイパーの必要がないほど自動運転機能を進化させる可能性もあるとNot a Tesla Appは述べています。