部活動の練習やジムなどでランニングをしている時、「あれだけ走ったのにまだ5分しかたってない」と絶望した経験がある人もいるはず。新たな研究では、実際に「運動している時は時間の流れがゆっくり感じられる」ということが明らかになりました。

The perception of time is slowed in response to exercise, an effect not further compounded by competitors: behavioral implications for exercise and health - Edwards - 2024 - Brain and Behavior - Wiley Online Library

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/brb3.3471



Scientists Confirm Exercise Slows Down The Perception of Time : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/scientists-confirm-exercise-slows-down-the-perception-of-time

2024年4月1日の査読付き科学誌「Brain and Behavior」に掲載された論文で、オランダとイギリスの研究チームは、女性16人と男性17人の計33人の被験者を対象に、3つの条件でエアロバイクをこぎながら「時計に頼らず30秒を計る」というタスクを課す実験を行いました。

被験者はエアロバイクに乗る前と乗っている最中、そして運動後に、体内の感覚だけを頼りに30秒を計測しました。また、被験者は「ソロで4kmのタイムアタックに挑戦する」「画面にアバターが表示されるが、それとは関係なくできるだけ速く4km走る」「画面に表示されるアバターより速く4km走る」という3つの条件でエアロバイクをこぎながら、同様に30秒を感覚のみで計測しました。



実験の結果、安静時の被験者は一般的に、体感の30秒が実際の30秒よりやや長いことがわかりました。つまり、被験者らは「実際の時間が体感より早く進んでいる」ように感じていたというわけです。

一方、被験者がエアロバイクをこいでいる間は、体感の30秒が実際の時間よりも平均で約8%短く感じられることが判明しました。以下のグラフは、体感時間と実際の時間のずれをパーセンテージで表したものです。「Pre-Exercise(運動前)」「Post-Exercise(運動後)」はいずれも体感の30秒を実際よりも長く感じていたものの、「During Exercise(運動中)」は実際よりも短く感じていたことがわかります。なお、対戦相手の有無や運動強度は、時間の知覚に有意な影響を及ぼしませんでした。



研究チームは、今回の実験は比較的小規模なものであることを認めつつも、運動強度ではなく運動そのものが時間の知覚をゆがめる原因になっていることが示唆されたと主張。その上で、「本研究は斬新でインパクトのある知見を提供するものですが、運動中の時間知覚における外部刺激、運動強度、運動時間の役割をより解明するには、さらなる研究が必要です」と述べました。