黒川敦彦氏

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 連行中でも、カメラに向かってダブルピース。選挙妨害で逮捕された政治団体「つばさの党」の黒川敦彦代表(45)には、ふてぶてしい言動が目立つ。それもそのはず、彼は1億円借金した挙句、裁判で負けても踏み倒した過去があるのだ。

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「民事裁判とか差し押さえとか散々やってきましたけど、どうにもならなかった」

 と、吐き捨てるように話すのは、都内に住む80代の会社社長。

「私は1億円を踏み倒された。逮捕は当然の報いです」

 憤まんやるかたない様子だ。

黒川敦彦氏

 候補者の演説中に選挙カーを接近させ、聴衆との間に割り込む。電話ボックスの上に座り込み、拡声機で怒声を浴びせ、車のクラクションを鳴らしまくる――。4月に行われた衆議院東京15区の補選で他の候補者に妨害行為を行ったのは「つばさの党」の黒川代表、根本良輔幹事長(29)ら。ひと月後の今月17日、「選挙の自由妨害」という聞き慣れない容疑でお縄になったのは報じられた通りだ。

いきなり“1億円貸してください”と

 社長が黒川氏と出会ったのは、2019年6月のこと。当時の黒川氏は、元代議士の小林興起氏らと共に「オリーブの木」という政治団体を率いていた。

「“日本を変える奴です。一度会ってくれませんか”と知り合いの医師に言われ、小林さんと黒川に会いました。すると翌日、二人がまた来て、“1億円貸してください”とお願いしてきた」

 翌7月には参院選が予定されており、

「そこに10人の候補者を立てたいと。1人あたま1000万円選挙資金が必要になるから1億円を貸してほしいと言うのです。当時はまだ彼らの主張には共鳴できる点もあったし、黒川は小僧だけど、小林さんは著名な元議員。1人くらいは受かるだろうと思って、貸すことに決めたんです」

 1億円は黒川氏の指示で、同党の口座に振り込んだ。同氏を借主に借用書も交わしたが、

「公示直前になって、小林さんが代表から降りた。心配していたらやはり大惨敗で、一人も当選できませんでした。私としては、お金を返してもらわないと困るし、そもそも選挙のために使われたのかも分からない。黒川に連絡し、返済計画や、貸した金の使途を確認しようとしました」

完済まで200年以上

 ところが、である。

「毎月3万円ずつ支払うという計画を出してきた。でもそれでは完済まで200年以上もかかります。さらには、“YouTubeの登録者数を増やして広告収入を上げる”“今はその運動をしている”とも。金の使途については、口座の開示や選挙費用の明細を要求したけれど“収支が一段落したら”などと言って、いつまでたっても見せてくれない。そこで正式に返済を要求したら、連絡が途絶えてしまったんです」

 仕方なく社長は2020年8月、黒川氏を相手取って貸金返還請求訴訟を提起。被告となった黒川氏は「オリーブの木から国会議員が誕生するまで、返済は猶予される約束だった」などと反論したものの、提訴から半年後の21年2月には、黒川氏に1億円の返済を命じる判決が下された。被告は控訴することなく、判決は確定したという。

「反省の色はなく、とんでもない男」

 が、原告の代理人弁護士が代わって言うには、

「判決後、住居近くの金融機関に差し押さえをかけましたが、見つかったのは残高約1000円の口座だけ。続いて財産開示を申し立てたところ、出してきた目録中にもめぼしいものはありませんでした。裁判所が“どうやって生活しているのか”と質すと、彼は“支援者からの寄付で”と答えていました」

 こうして社長はいまだに、1円たりとも貸金を回収できていないという。

 改めて社長が言う。

「黒川自身、その後も反省の色はまったく見せない。私も多額の財産があるわけではなく、1億円も知人から借りて捻出しました。貸した時、黒川は“日本のために頑張りたい”と言っていたけど、とんでもない男です」

つばさの党」に本件について見解の有無を尋ねたが、期限までに返信はなし。ちなみに黒川氏のYouTubeチャンネルの登録者数は25万人もいるが、その収益はどこへ……。

「あいつは詐欺師ですよ」

 と社長が憤るのも納得の顛末なのだ。

週刊新潮」2024年5月30日号 掲載