パリSG戦では持ち味を発揮できなかった久保。(C)Getty Images

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 突然、思いもよらない、最も不適切なタイミングで、光が消えた。タケ・クボ(久保建英)は直情型の選手だ。マジョルカにコパ・デル・レイの決勝進出を阻まれた後、強い悲しみに苛まれた選手がいるとすれば、それは彼だった。

 このような大きな挫折を味わったとき、選手には通常、小さく縮こまるか、リベンジへ闘志を燃やすかの2つの道が用意されている。タケがどちらに属しているかは言うまでもないだろう。

 気がかりだったのは、最近、タケへの依存度が高まる一方だったことだ。過剰に露出されるその姿を見るにつけ、私は親が子供に、嘘をついたり、他人をからかったりしないように読み聞かせるスペインの昔話を連想させていた。

 物語のあらすじは、若い羊飼いが、オオカミが羊を食べにやってくると警告し続けることで、住民たちにいたずらするというものだ。彼らは一目散に駆け付けるが、嘘だと分かると憤慨しながら家や仕事に戻る。しかしある日、本物のオオカミがやって来て、羊使いは恐怖心に襲われながら懸命に助けを求めるも、誰にも信じてもらえず、羊の群れを救うことができなかった。
 
 実際、タケにも同じようなことが起こっている。我々は何週間も前から、攻撃面で違いを生み出す選手がタケしかいない現状では、相手チームのマークが集中して、肝心な時にエネルギーを使い果たしてしまうと警告してきた。

 そしてその嫌な予感はパリ・サンジェルマンをホームに迎えたチャンピオンズリーグ(CL)ラウンド16セカンドレグで的中した。ソシエダがこの一戦で崩れたのは、次元の違いを見せつけられて、エムバペに先制点を決められた時ではない。タケが右サイドを切り裂くだけの閃きとインスピレーションを欠いていることが明らかになった時だ
【動画】エムバペの圧巻2発と久保の得点関与
 ソシエダは、CLで快進撃を見せた。インテル、ベンフィカ、ザルツブルクと難敵ひしめく激戦区を1位で通過し、パリとの対戦でも、敵地のファーストレグは前半に限れば、優勝候補の一角を相手に優位に試合を進めた。

 しかしフランス王者はやはり強かった。ファーストレグの前半の混乱を招いた原因を分析し、大胆かつ的確なゲームプランを編み出した敵将のルイス・エンリケの采配も光った。

 もちろんソシエダには反省すべき点はある。とりわけフィジカル面の劣勢は、1998−99シーズン以来、欧州カップ戦のノックアウトステージに勝つことができない大きなハンディキャップになっている(2013−14シーズンと2014−15シーズンにプレーオフでは勝利)。
 

 
 今回は、ソシエダのストロングポイントである技術面でも後手に回ったが、これは疲労の蓄積と関係がある。戦術面においても、タケを左サイドに移すなど変化を起こさなかったイマノル・アルグアシル監督の硬直した采配が劣勢を強いられる一因となった。

 そしてその結果が、タケの“らしく”ない無力感を感じさるプレーだ。前半、見せ場と言えたのは、マーカーのヌーノ・メンデスのイエローカードを誘ったプレーと、ファーポストを目がけてほぼ不可能なゴールを狙ったシュートくらいだった。
 
 試合終盤、2点のビハインド(アグリゲートスコアでは0−4)を背負い、逆転での突破が絶望な状況の中でも、選手たちは最後まで全力を尽くしてミケル・メリーノが一矢を報いるゴールを奪い、観客はその頑張りに感謝を示した。

 そんな中、タケもまた結果が伴わなくても、諦めずにトライし続けた。だからこそ彼は特別な選手であり、ファンは不発に終わった試合でも、決して非難することはない。ソシエダとタケのCLは終わった。次を目ざして、リスタートだ。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸