「子宮肉腫に初期症状」はあるの?進行した場合の症状や検査法も解説!【医師監修】

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子宮肉腫の初期症状について知っていますか?
本記事では子宮肉腫について以下の点を中心にご紹介します。

・子宮肉腫と種類について

・子宮肉腫の原因や症状について

・子宮肉腫の検査や治療について

子宮肉腫の初期症状について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

子宮肉腫とは?

子宮肉腫は子宮に生じる悪性の腫瘍で、特に子宮の筋肉や間質といった組織から発生します。
この疾患は主に子宮体部、つまり子宮の主要な部分に現れることが一般的です。
しかし、子宮に関連する他の疾患、特に子宮筋腫や子宮体がんとの混同を避けることが重要です。
子宮筋腫は良性の腫瘍で、子宮の筋肉から成るのに対し、子宮体がんは子宮の内膜から発生する悪性腫瘍です。
このように、それぞれの疾患は発症の部位や性質が異なります。
さて、子宮肉腫にはいくつかのタイプがあり、これは発症する細胞の種類によって異なります。
代表的なものとしては、平滑筋肉腫や子宮内膜間質肉腫があります。
そして、これらの中でも子宮内膜間質肉腫は、さらに低異型度と高異型度の2つのサブタイプに分類されます。
興味深い事実として、子宮肉腫は子宮体部の悪性腫瘍全体のわずか4~9%を占める非常にまれな疾患であり、その中でも一般的な平滑筋肉腫は、全悪性腫瘍の約1~2%しか存在しないとされています。
しかし、そのまれさとは裏腹に、平滑筋肉腫の予後はあまり良くはなく、5年生存率は15~35%とされています。
子宮肉腫の診断や治療においての課題として、一般的で良性の子宮筋腫との見分けが難しい点や、治療のガイドラインが確立されていない点が挙げられます。
このため、早期の発見や適切な診療が求められる疾患となっています。

子宮肉腫の種類

子宮肉腫の種類について解説していきます。

子宮平滑筋肉腫

子宮平滑筋肉腫は、子宮の筋肉組織に起源を持つ悪性の軟部腫瘍として知られています。子宮に発生する悪性腫瘍の中では、この疾患の発生頻度は限られており、全体の約1~2%を占めるのみです。
また子宮肉腫のカテゴリだと、子宮平滑筋肉腫はその大部分を構成しており、約70%のケースでこのタイプの肉腫が確認されます。
特に注意すべき点として、この腫瘍は初期の段階での診断が難しいという特徴があります。
多くの患者さんが、良性の子宮筋腫として治療を受ける中、後に手術を行った組織の詳細な検査を通じて、子宮平滑筋肉腫であることが明らかになるケースが少なくありません。
この疾患は主に50~55歳の成人女性に多く発症します。

低異型度子宮内膜間質肉腫

低異型度子宮内膜間質肉腫は、子宮内膜の結合組織にあたる間質細胞から発生する悪性軟部腫瘍の一種です。子宮肉腫の中で、この疾患は約25%のケースを占めることが知られています。
特徴的なのは、この疾患が主に閉経前の女性に発症する点です。
患者さんは、不正性器出血や過多月経といった症状を伴うことが一般的です。
また、これらの出血に関連して、下腹部に痛みを感じることもあります。
このような症状は、他の婦人科的疾患とも重なるため、医師による適切な診断が必要となります。
低異型度子宮内膜間質肉腫は、異型度が低いことから、子宮肉腫全体の中で比較的予後が良好とされています。
しかし、悪性腫瘍であるため、早期発見と適切な治療が大切です。

癌肉腫

癌肉腫は特異な腫瘍で、癌と肉腫の両方の特性を持つ構造を持っています。この腫瘍は子宮肉腫の中で比較的多く見られる種類で、その発症は主に高齢の女性に集中しています。
特に60歳代がその平均年齢として挙げられます。
多くの患者さんが体験する症状としては、不正な性器出血があります。
これは閉経後の女性にとっては特に異常と捉えられるため、注意が必要です。
さらに、この出血に関連して、下腹部に痛みを伴うことも珍しくありません。
重要な点として、癌肉腫は子宮体癌と類似した臨床的な特徴を持ちつつ、その悪性度は子宮体癌よりも高いとされています。
これは治療選択や予後を考慮する際に重要な要因となり得ます。

腺肉腫

腺肉腫は子宮内膜に存在する腺組織から起こる悪性の軟部腫瘍です。腺組織は、体内の様々な分泌物を排出する役割を果たす器官で、この腺組織の異常な細胞増殖が腺肉腫の原因となります。
この疾患の特徴的な点は、その発生頻度の低さにあります。
全子宮肉腫の中で腺肉腫が占める割合はわずか10%程度。
この数値は、癌肉腫と比較すると非常に少ないことを示しています。
また、腺肉腫に罹患する人は、通常、癌肉腫に罹患する人々よりも若年層であることが多いと指摘されています。
その稀少性ゆえに、腺肉腫の症状や治療法についての認識は一般的には低いかもしれません。

子宮肉腫の初期症状から進行した場合の症状について

子宮肉腫の進行別の症状について解説します。

初期症状はない

子宮肉腫の初期段階では、症状がほとんど現れないことが一般的です。

腹部膨満感や不正出血

病気が進行すると、閉経後や月経周期と関係なく性器からの出血や、下腹部に違和感や膨満感を感じることがあります。

子宮筋腫の急激な肥大

既に子宮筋腫として診断されていた腫瘤が、閉経後に急激に大きくなる場合があります。
このような臨床経過は注意が必要です。

子宮肉腫の検査

子宮肉腫の検査について解説していきます。

内診

腟や肛門から子宮の形や大きさ、子宮周囲の臓器との関係を調べます。
子宮が大きい、または通常とは異なる形をしているなどの異常が見られた場合、さらに詳しい画像検査や病理検査(細胞診、組織診)、血液検査に進むことがあります。
これらの検査により、子宮肉腫の診断が確定されます。
また、初期症状が少ないため、定期的な内診が重要です。
内診は子宮肉腫の早期発見に役立ちます。

病理検査(細胞診、組織診)

「子宮肉腫の病理検査(細胞診、組織診)」では、専用の器具を用いて子宮の細胞や組織を採取し、顕微鏡で調べます。
肉腫が子宮内膜に露出している場合、採取した細胞や組織を用いて病理学的な診断が可能です。
しかし、病変が確認できない場合や子宮以外の臓器に肉腫が発生した場合、診断の正確性は十分ではありません。
そのため、肉腫の疑いがある場合は、理想的には子宮を摘出して診断します。
しかし、女性の晩婚・晩産化の傾向により、子宮摘出に同意できる人が少ないという現状もあります。
これらの情報は、子宮肉腫の診断と治療選択に重要です。

画像検査(超音波検査やMRI、CT検査)

「子宮肉腫の画像検査(超音波検査やMRI、CT検査)」では、子宮の肉腫は子宮体部の内膜や子宮頸管の粘膜に肉腫成分が露出しないため、子宮体がんとは異なる診断方法が求められます。
通常の子宮がん検診や子宮内膜細胞診では診断が困難で、最初に超音波検査で腫瘤を確認し、次にMRI検査で腫瘤の性質や状態を確認します。
しかし、石灰化や壊死など状態が変化する変性子宮筋腫との違いを見分けるのは非常に困難です。
これらの画像検査は、子宮肉腫の診断において重要な役割を果たします。

血液検査

血液中のLDH(乳酸脱水素酵素)という成分の上昇を確認することが一つの指標となります。
LDHは腫瘍の壊死を反映するため、その数値が上昇すると子宮肉腫の可能性が考えられます。
しかし、LDHの上昇は子宮肉腫だけでなく他の病気でも見られるため、その解釈には注意が必要です。
したがって、LDHの数値だけでなく、他の症状や検査結果と合わせて診断を行うことが重要です。

子宮肉腫の治療

子宮肉腫の治療について解説していきます。

手術療法

子宮肉腫の治療は、病変が子宮に限局している場合、子宮全摘を含む手術が一般的に行われます。
これには、両側付属器(卵巣卵管)の摘出、後腹膜リンパ節郭清(または生検)、大網切除、および腹腔細胞診が含まれます。
これらの手術は、子宮外に病変が存在しないことを確認するために行われます。
低異型度子宮内膜間質肉腫、未分化子宮内膜肉腫、または平滑筋肉腫と診断された場合、両側付属器(卵巣卵管)を含む子宮全摘が治療の基本となります。
個別の判断で卵巣を温存する場合もあります。
切除が不完全、あるいは切除不能と判断された場合は、化学療法や放射線治療、ホルモン療法を検討します。

化学療法(薬物療法、抗がん剤治療)

子宮肉腫の化学療法に関しては、その効果はまだ確立されていません。
切除不能、または進行・再発例に対しては、子宮以外の悪性軟部腫瘍と同様の化学療法が行われています。
化学療法の第1選択はドキソルビシン(アドリアマイシン)の単剤療法で、これが効果を示さない場合や耐容性がない場合は、パゾパニブ(商品名ヴォトリエント)、エリブリン(商品名ハラヴェン)、トラベクテジン(商品名ヨンデリス)、イホスファミド(商品名イホマイド)などが用いられます。
また、日本では適応外ですが、ゲムシタビン(商品名ジェムザール)とドセタキセル(商品名ドセタキセル)の併用療法も考慮されています。
低異型度子宮内膜間質肉腫では化学療法が効きにくいため、ホルモン療法が第1選択とされています。
ホルモン療法に抵抗性を示す場合や、切除不能と判断された場合は、悪性軟部腫瘍と同様の化学療法を検討します。
以上の治療は一般的なものであり、個々の患者さんの状況により治療法は異なります。

子宮肉腫についてよくある質問

ここまで子宮肉腫の初期症状を紹介しました。ここでは「子宮肉腫」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

子宮肉腫になりやすい人の特徴はありますか?

馬場 敦志医師

平滑筋肉腫は50歳前後の女性に多く見られ、一方で子宮内膜間質肉腫はそれよりも若年層に多いとされています。
また、子宮筋腫と診断されて経過観察中の方で、閉経前後に子宮筋腫の増大傾向が見られる場合は注意が必要です。
これは、子宮筋腫が子宮肉腫へと変化する可能性を示しています。

子宮にできたシコリは、子宮筋腫でしょうか、子宮肉腫でしょうか?

馬場 敦志医師

子宮にできたシコリ(瘤)は、大半が良性の子宮筋腫ですが、稀に悪性の子宮肉腫の可能性もあります。
特に、子宮全体の大きさが手拳大以上、または直径5~6㎝以上の大きなシコリが見つかった場合は、子宮肉腫の可能性を注意深く調べる必要があります。
子宮筋腫と子宮肉腫の違いは、良性か悪性かという点です。
子宮筋腫は良性の腫瘍であり、命に関わることはありません。
一方、子宮肉腫は悪性の腫瘍であり、そのまま放置するとリンパ節転移や肺転移などを引き起こす可能性があります。
しかし、これら二つの腫瘍を鑑別することは難しく、子宮筋腫と思われていた細胞を調べてみると、子宮肉腫だったというケースも少なくありません。
その原因はまだ完全に解明されていません。
したがって、定期的な検診を受けて予防や早期発見を目指すことが重要です。

編集部まとめ

ここまで子宮肉腫についてお伝えしてきました。子宮肉腫の要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

・子宮肉腫は子宮肉腫は子宮に生じる悪性の腫瘍のことで、代表的なものとしては、滑筋肉腫や子宮内膜間質肉腫がある。

・子宮肉腫の正確な発症原因については明確には解明されていない。初期症状はほとんどなく、進行すると不正出血や下腹部の違和感・膨満感が現れることがある。

・子宮肉腫の検査は、内診・病理検査(細胞診、組織診)・画像検査(超音波検査やMRI、CT検査)・血液検査などがある。治療は、子宮全摘を含む手術が一般的で、切除が不完全、あるいは切除不能と判断された場合は、化学療法や放射線治療、ホルモン療法が検討される。

「子宮肉腫」と関連する病気

「子宮肉腫」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

子宮筋腫子宮体がん

平滑筋肉腫

子宮内膜間質肉腫

腺肉腫

癌肉腫

一言:これらはすべて子宮に関連する疾患ですが、それぞれ異なる特性と治療法を持っています。
具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

「子宮肉腫」と関連する症状

「子宮肉腫」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

不正出血(月経時以外の出血)

下腹部の痛みや圧迫感

過多月経

過長月経

腰痛

便秘頻尿

子宮肉腫に特有の症状は存在しないため、診断が難しいことがあります。上記の症状は、子宮筋腫や子宮がんとも共通しています。特に、閉経後に子宮筋腫と診断されていた腫瘤が急激に大きくなる場合は、子宮肉腫の可能性が高まります。正確な診断のためには、専門的な検査や評価が必要となります。上記のような症状が少しでも気になれば、早めに病院へ行き相談しましょう。

参考文献

子宮肉腫(がん情報サービス)p

子宮肉腫の特徴(がんと希少な病気の情報サイト)

不正出血(日本産科婦人科学会)

子宮肉腫(日本婦人科腫瘍学会)