「肺がんの初期症状」はご存知ですか?検査法・予防法も医師が徹底解説!
肺がんの初期症状とは?Medical DOC監修医が肺がんの初期症状・検査法・予防法・早期発見のポイントや何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
木下 康平(医師)
聖マリアンナ医科大学病院呼吸器内科にて専門研修
自衛隊病院にて呼吸器内科・一般内科診療に従事。
資格:内科認定医
「肺がん」とは?
肺がんと聞いてどんな病気を思い浮かべるでしょうか?
肺に腫瘍ができる病気ということはなんとなく想像ができるかもしれませんが、どのような症状が起こるのか気になりますよね。
まず肺がんとは呼吸を行う臓器である肺の組織の一部が、がん細胞化することで起こります。そしてこの肺がんは大きく分けて肺腺がん、肺扁平上皮がん、肺小細胞がん、肺大細胞がんの4つに別れます。
肺がんの種類によっては現れる症状が異なることがあります。
以下に肺がんで起こりうる症状を説明させていただきます。
肺がんの初期症状
咳や息苦しさなどの症状が、肺がんによるものかどうか心配になったことはないでしょうか?
ここでは肺がんに起こりうる初期症状を説明していきます。
血痰(痰に血が混じる)・喀血(血を吐く)
長く続く血痰(痰に血が混じること)は肺がんの可能性があります。
ただ風邪などを引いた時にも痰に血が混ざっていることがあります。一方、肺がんによる血痰は長期間持続し、また血も多量であることが多いです。
もし血痰の症状が気になるようでしたら、ご自宅で出た血痰の写真を撮影した上で、医療機関を受診し相談することをお勧めいたします。受診すべき診療科は呼吸器内科です。
喀血は咳などをした際に血を吐き出すような症状で、この場合は窒息の可能性などが否定できませんので、すぐに救急受診が必要です。
呼吸困難
肺がんが進行すると運動時の呼吸困難が現れはじめ、徐々に悪化していきます。最初は階段をのぼった際の息切れから自覚しますが、徐々に悪化していき、平らな道を歩いていても息切れを感じることがあります。
進行することで息が吸いづらい症状が出現しますが、これは胸に水が溜まる(胸水と言います)ことで起こりうる症状です。
息苦しさがどんどん悪化するようなら、胸部レントゲン撮影ができる病院を受診することをお勧めいたします。
発熱
肺がんに限らず、さまざまながんでは発熱が持続することがあります。風邪などの感染症でも発熱が起こることはありますが、基本的に数日のみです。
それに対して、肺がんなどの悪性腫瘍による発熱は数週間持続する、という特徴があります。発熱のみで肺がんを積極的に疑うものではありませんが、発熱が持続している場合はその原因の精査のために受診することをお勧めいたします。
胸の痛み
胸の痛みが持続する場合も肺がんの症状としてあり得ます。
肺がんによる胸痛は、体勢や体の動きには関係なく息を吸った時に痛みが悪化することが多いです。胸痛が持続する場合は胸部CT撮影ができるような病院を受診することをお勧めいたします。
肺がんの検査法
肺がんを疑う症状が続いた場合、病院ではどのような検査を行うのでしょうか?
以下に病院で行われる可能性のある検査について説明させていただきます。
胸部レントゲン検査・胸部CT検査
肺がんを疑う症状があった場合、病変は比較的大きくなっている可能性があります。
その場合まずは胸部レントゲン検査を行います。そこで肺がんを疑うような所見がみられた場合は、追加で胸部CT検査を行います。この胸部CT検査で肺がんの部位や大きさなどを測定し、その後の検査の方針を立てます。
腫瘍マーカー測定
胸部CT検査で肺がん疑いの陰影を認めた場合、同日に血液検査で腫瘍マーカーを測定するのが一般的です。検査結果は後日になることがありますが、肺がんの種類によって上がりやすい腫瘍マーカーはそれぞれ違うため、後述する生検検査の前に治療方針を立てる参考になります。
また肺がんであった場合に、治療効果を判定するために参考にすることがあります。
PET検査・MRI検査
肺がんは進行することで脳や骨に転移することがあります。これらの転移を発見するためにPET検査とMRI検査を行います。どちらも痛みなどはない検査であり、外来で行うことが可能です。
生検
肺がんを疑う病変を認めた場合、直接病変を採取して病理検査(患者さんから採取した組織・細胞などを顕微鏡で観察、癌の診断や病態評価を行う検査)を行います。これにより肺がんとその種類の確定診断を行います。
生検の方法は口から細長いカメラを入れて行う気管支鏡生検と、胸から針を刺して組織を採取するCTガイド下生検があります。
また肺がんが進行していた場合には首のリンパ節などに転移していることがあり、そこから組織を採取することもあります。
どの検査も2泊3日程度の入院で行うことが多いです。
肺がんの予防法・早期発見のポイント
肺がんになりにくい生活習慣などはあるのでしょうか?
また肺がんは早期発見と早期治療が最も重要です。
ここでは肺がんを予防する方法、早期発見する方法について説明させていただきます。
禁煙
肺がんを予防する最も効果的な方法は禁煙です。喫煙は肺がんの重大なリスクであり、生涯に吸った本数が多いほど肺がんになりやすくなります。
また喫煙により閉塞性肺疾患(COPD)になる可能性があるため、喫煙習慣がある場合はすぐに禁煙することをお勧めいたします。
禁煙の方法として吸う本数を減らすことは誤っています。これは肺がんのリスクを低減する可能性はありません。本数を減らしたらリスクも下がる、と誤解している方が多いので注意してください。
また加熱式タバコや電子タバコも肺がんのリスクになり得ます。
毎年健康診断を受ける
早期発見のためには、健康診断で行う胸部レントゲン検査が効果的です。
この健診で胸部異常陰影を認められた場合、紹介状を持って胸部CT検査ができる比較的大きい病院に受診しましょう。その際は呼吸器内科・外科に受診することをお勧めいたします。
すぐに病院へ行くべき「肺がんの初期症状」
ここまでは肺がんの症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
咳をした際に血を吐いてしまった場合は、呼吸器内科へ
咳とともに血が出る、痰にたくさん血が混ざっているなどの症状がある場合は、すぐに呼吸器内科を受診しましょう。その際どれくらいの量の血が出たか医師に言葉で説明することは難しいと思います。そのため、携帯電話などで血が出た際の写真を撮影して受診することをお勧めいたします。
医師がその写真を見て緊急性の有無を判断します。
受診・予防の目安となる「肺がん」のセルフチェック法
・息苦しさが数週間単位で悪化する症状がある場合
肺がんは初期症状に乏しいため、ご自身で肺がんのセルフチェックをすることはかなり困難かと思われます。
「肺がんの初期症状」についてよくある質問
ここまで肺がんの初期症状を紹介しました。ここでは「肺がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんの初期症状に肩の痛みや肩こりはありますか?
木下 康平 医師
初期にはありません。ただし肺がんが進行してどんどん大きくなり、周辺組織に広がることで肩の痛みや腕の痺れが出る可能性があります。
肺がんの咳にはどんな特徴がありますか?
木下 康平 医師
咳だけで肺がんを見つけることはできません。
ただ風邪などの咳と異なり、数ヶ月という時間経過で徐々に悪化していくような咳の場合、肺がんの可能性はゼロではありません。その場合は胸部レントゲン検査ができる病院に受診することをお勧めいたします。
編集部まとめ
肺がんを疑う初期症状の説明をさせていただきました。
上記の症状は肺がんが進行した場合に出ることが多いです。そのため、大事なことは症状が出る前に早期発見することです。最も効果的な方法は、毎年の健康診断は必ず受けることですので、ぜひ積極的に受けるようにしてください。
「肺がんの初期症状」と関連する病気
「肺がんの初期症状」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
閉塞性肺疾患
喘息間質性肺炎
結核
悪性胸膜中皮腫
気胸症状だけで肺がんを見つけることは困難です。長引く咳や血痰、息苦しさなどで受診された際に上記の呼吸器疾患が肺がんのほかに認められることがあります。
「肺がんの初期症状」と関連する症状
「肺がんの初期症状」と関連している、似ている症状は4個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
痰に血が混じる
息苦しい発熱胸の痛み肺がんの初期症状として上記が挙げられます。これらの症状が複数見られた場合や、長期間持続する場合は早めに医療機関を受診しましょう。
参考文献
肺癌診療ガイドライン2022(日本呼吸器学会)
加熱式タバコや電子タバコに関する日本呼吸器学会の見解と提言(日本呼吸器学会)