「鍼治療」の通院回数と費用の目安を教えて!【柔道整復師に聞く】

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さまざまな症状に対して効果が期待される「鍼治療」。WHO(世界保健機関)もその効果を認めており、日本など東洋だけでなく世界中でおこなわれています。しかし、「鍼治療は長く通わなければ効果がない」と思っている人が多いのも事実です。そこで今回は、鍼治療の通院回数や費用の目安などについて、「大江戸鍼灸整骨院」の島村先生に解説していただきました。

監修柔道整復師・鍼灸師:
島村 隼人(大江戸鍼灸整骨院)

帝京平成大学ヒューマンケア学部鍼灸学科卒業、帝京短期大学柔道整復コース卒業。その後、都内整形外科の勤務医として経験を積む。2014年、東京都台東区に位置する「大江戸鍼灸整骨院」の院長に就任。2019年、株式会社セラップ全店舗統括マネージャーに就任。柔道整復師 、鍼灸師、柔道整復科専科教員。

鍼治療とは?

編集部

鍼治療とは、どのような施術なのでしょうか?

島村先生

鍼治療とは、非常に細いステンレス製または銀製の鍼を使用して、皮膚や筋肉を刺激する施術のことを言います。WHO(世界保健機関)にも、「さまざまな効果が期待できる」と認められています。

編集部

具体的に、どのような効果が期待できるのですか?

島村先生

研究によってエビデンスが明らかになっているのは、ある種の「疼痛コントロールが可能」ということです。(※)「だるい」「なんとなく調子が悪い」などさまざまな症状に対して鍼治療はおこなわれていますが、それらについてのエビデンスはまだ確立されていません。ただし、多くの人がその効果を実感していることは間違いありません。

※厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』:鍼治療
https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/overseas/c02/01.html

編集部

具体的に、どのような痛みに対して効果が確認されているのですか?

島村先生

鍼治療に対しては現在も研究がおこなわれており、これまでに「腰痛、頸部痛、変形性関節症、膝痛など、慢性痛の緩和が期待できる」と示唆されています。また、緊張性頭痛の頻度を減少したり、片頭痛を予防したりすることもあります。

編集部

多くの症状に対する効果が期待できるのですね。

島村先生

はい。そのほか、自律神経失調症で鍼治療を受ける人も当院では多くみられます。また、「西洋医学では対応しきれない」「医療機関で治療を受けてもあまり効果が得られない」という場合や、「体質改善をしたい」「不定愁訴に悩まされている」といった場合にも、鍼治療が適しているかもしれません。

編集部

「体に鍼を打つ」というと怖い感じもするのですが……。

島村先生

みなさんが「鍼治療を怖い」と感じるのには、2つの理由があると考えます。1つが「痛み」、もう1つは「安全性」です。痛みについては、鍼治療で使う鍼は非常に細く、場合によっては髪の毛より細い鍼を使うこともあります。また、鍼の表面は非常にツルツルしているため、皮膚を破るというよりは組織の間を縫って入っていくというイメージです。そのため、あまり痛みが気になることはなく、ときには鍼を打ったことにすら気づかないケースもあります。

編集部

安全性についてはいかがですか? 特に感染リスクが気になります。

島村先生

鍼治療の安全性は確認されています。通常、鍼治療では経験豊富で十分に訓練を受けた施術者がきちんと消毒された鍼を使って施術をおこなうので、ご安心ください。

鍼治療は一度で効果が得られる?施術を受ける期間は?

編集部

どうして鍼を打つだけで症状が改善されるのですか?

島村先生

鍼を打つと、筋肉や細胞組織に小さな傷がつきます。すると、体はその傷を修復するために、自然治癒力を働かせます。その結果、体内で代謝が促進されたり、自律神経のバランスが整ったりして、症状の改善が期待できるのです。

編集部

自然治癒力が高まるということですね。

島村先生

はい。そのほか、鍼を打って刺激を与えることでも、効果を期待することができます。これは、人体の「反射」を利用した方法で、体になんらかの刺激を与えると人間の体はそれに対して反射という反応を示します。例えば、肩に力が入って肩が凝り固まっている人に対して鍼を打つと、その刺激が反射となり、力を抜かせるきっかけになるのです。

編集部

鍼は体のどの部位に打つのですか?

島村先生

一般に、鍼を打つ場所は「経穴(ツボ)」と呼ばれるポイントです。経穴は体に全部で360ほどあるとされ、東洋医学では、この経穴が詰まると体調が崩れると考えられています。そのため、症状と関連する経穴を鍼で刺激し、詰まりを改善することでも、効果が得られます。

編集部

経穴以外にも鍼を打つことはありますか?

島村先生

はい。経穴は東洋医学の観点から考えたときのポイントですが、西洋医学的にみて神経組織を狙って打つ場合もあります。

編集部

鍼治療は一度で効果が期待できるのですか?

島村先生

症状の種類によっては一度で効果を期待できる場合もあります。ただし、鍼治療の効果はその人の自然治癒力や反射の強さに影響を受けやすいです。また、「一度の施術ではあまり効果が感じられなかったけれど、二度目で効果が得られた」という場合もあります。

編集部

一度で治るかどうかは、個人差があるのですね。

島村先生

そうですね。症状が慢性化している場合や重症の場合には、1~2週間に1回など定期的に受けると状態をキープしやすく、悪化を防ぐことができるかもしれません。

編集部

完全に症状を解消するには、どれくらいの期間必要ですか?

島村先生

症状や鍼治療を受ける頻度にもよりますが、1週間に一度のペースで通院した場合、1カ月ほど継続するとだいぶ効果を実感できるのではないかと思います。

編集部

1カ月で改善できるのはいいですね。

島村先生

ただし、繰り返しになりますが症状によります。例えば、四十肩や五十肩などは長引くことが多く、半年~1年の通院が必要になることもあります。

通院回数と費用の目安

編集部

健康保険で鍼治療を受けることはできますか?

島村先生

一般的に、次の疾患については健康保険で鍼灸治療を受けることができます。(※)

神経痛:坐骨神経痛・三叉神経痛など

リウマチ:慢性で各関節が腫れて痛むもの

腰痛症:慢性の腰痛

五十肩:肩の関節が痛く腕が挙がらないもの

頚腕症候群:頚から肩、腕にかけて痺れて痛むもの

頚椎捻挫後遺症:むち打ち後遺症など

※日本鍼灸師会「鍼灸の基礎知識」
https://www.harikyu.or.jp/acupuncture/acupuncture-02/#i-4

ただし、保険適用で施術を受けるには、医療機関での同意書が必要です。また、保険診療をおこなっているかどうかは、治療院によっても異なります。そのほか、これらに類似する疾患でも保険適用になることがあるので、詳しくは治療院にご確認ください。

編集部

鍼治療は毎日受けてもいいのですか? 適切な通院回数はありますか?

島村先生

理論的には、毎日おこなっても問題ありません。通院の回数や間隔は、その人の症状などを考慮しながら判断します。

編集部

「鍼治療では好転反応が出ることもある」と聞きました。

島村先生

鍼治療をおこなった後には、瞑眩(めんげん)と呼ばれる症状が出ることがあります。瞑眩は好転反応とも言われ、鍼治療による効果が得られる前に、一時的に出現する体の反応のことです。人によって症状はさまざまで、倦怠感、だるさ、疲労感、発熱などの症状が表れることがあります。このような症状が出た場合には、反応がおさまった後に鍼の効果が出現することも多いとされています。

編集部

好転反応が出たときには、施術を受けない方がいいのでしょうか?

島村先生

人によって異なります。場合によっては刺激の量を調整して施術を継続することもあるので、詳しくは施術者に確認しましょう。

編集部

鍼治療の費用はどれくらいですか?

島村先生

基本的には自由診療となるため、個人の症状や施術院によって金額が異なります。なお、当院の場合、1回の施術30分あたり4000~6000円が目安となります。

編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

島村先生

「病院に通っているけれど、なかなか症状が改善しない」と困っている人には、症状の改善のため、ぜひ鍼治療を選択肢として加えていただきたいです。鍼治療はマッサージなどの施術と異なり、そもそも刺激の種類が違うので想像以上に効果が得られることもあります。ただし、施術者によって施術のスタイルが異なることが多いので、ご自分と相性のいい施術者を見つけることが大切です。「一度、鍼治療を試したけれど、あまり効果を感じなかった」という場合でも、別の施術者の施術を受ければ異なる感想を持つかもしれません。もし、何か困っている症状があれば、ぜひ鍼治療をお試しいただければと思います。

編集部まとめ

鍼治療に興味はあるけれど、なんとなく怖い」と感じている人もいるかもしれません。しかし、「案ずるより産むが易し」で一度、受けてみるとその効果を実感できるかもしれません。信頼できる人からの情報などを参考に、ぜひ、相性の良い施術院や施術者を探してみましょう。

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