Googleは、10月25日、これまで自社アプリでのみ利用可能だったAR美容機能をモバイルブラウジングとウェブエクスペリエンスに導入すると発表した。また、Googleは、顧客が拡張現実を使って初めてヘアカラーやファンデーションを試せるようにして、ARを含んだ広告を使って宣伝する機会を美容ブランドに提供している。これまでGoogleアプリのAR美容機能はカラーメイクアップに限られていた。これらの変更の大部分は今年の終わりに予定されているが、具体的な日付はまだ未定である。

競争が鈍化するAR試着に注力するGoogle



Googleは2020年にARのお試し(トライオン)を開始した。Snapは9月にARエンタープライズ部門を閉鎖しており、現在この分野の競争は鈍化している。Googleの消費者購入製品担当シニアディレクター、リリアン・リンコン氏によると、Googleは現在市場シェアの急速な拡大に注力しているという。

Google ショッピングが2002年にローンチして以来、現在、ファッションや美容ブランドがそのスポンサード提案の範囲内に入るために競い合っている。Googleによる独占的な検索と広告は同社に問題を引き起こしており、EUの独占禁止法違反で26億ドル(約3891億円)の罰金と米国独占禁止法訴訟の対象になっている。Googleは、6月に、顧客の購入を効率化するためにショッピングに関するさまざまな変更を加えた。同時に、小売業者が手数料なしでGoogle上で販売できる「Googleで購入」から離れている。

「(ARの新しい)変更により、購入客がもっとARを利用するようになり、それによりブランドエクスペリエンスも向上すると予想している」とリンコン氏は言う。

Googleのデータによると、ARがあると購入客の美容製品とのインタラクションが10%増加するという。リンコン氏は、「ユーザーはARを利用した後、ブランドのサイトでより多くの時間を費やしている。さらに多くのブランドが製品を試せるようにしている勢いが続いている」と述べている。

メイクアップに関して、Googleはすでに50ほどのブランドのARお試しを提供しており、ブランドはこのサービスを無料で使えるようにしている。この6カ月だけでも、カバーガール(Covergirl)、ディオールビューティ(Dior Beauty)、フェンティビューティ(Fenty Beauty)、ローラメルシエ(Laura Mercier)、メイクアップ・バイ・マリオ(Makeup by Mario)といったブランドが加わっている。パットマグラスラブス(Pat McGrath Labs)は、10月20日〜10月22日、技術提供のGoogleと提携して、ARで最新コレクションが試せるポップアップをニューヨークで開催。3500人を超える来場者がこの体験を試した。

ヘアカラーとファンデーションのお試しも可能に



Googleの新しいARヘアカラーお試しは10月25日にローンチされた。顧客はGoogleの検索で拡張現実を介して自宅でヘアカラーを試すことができる。ロレアルパリ(L’Oréal Paris)のさまざまな色合いから選んで、正面向きモバイルカメラや自分に似たモデルの動画を使って試すことができるようになる。

ロレアルの美容テクノロジーサービスグローバルディレクター、ベアトリス・ドーツェンバーグ氏は、「消費者から必要とされるときに、必要な場所で、美容テクノロジーサービスを提供することが重要だ」と述べた。 「テクノロジーを通じてヘアカラー体験にガイダンスと当社のブランドの専門知識を提供して、消費者一人ひとりに色の正確さと染まる度合いを理解してもらえるようにサポートしている」。

今後数カ月以内に、スプラット(Splat)やレブロン(Revlon)といったほかのブランドもARトライオンが使えるようになる予定だ。

一方、ファンデーションのトライオンは、現在、クリニーク(Clinique)、シャーロット ティルベリー(Charlotte Tilbury)、ボビイ ブラウン(Bobbi Brown)の製品で利用できる。148の肌色のモデルの写真でファンデーションの色合いを見ることができるだけではなく、顧客は製品を自分に使って見ることもできるようになった。

美容ブランドが活用すべき空間的ストーリーテリング



「インターネットの次のイテレーションは没入型になるため、美容ブランドが今ARを採用することは絶対に重要だ」と語るのは、ブランドストラテジストでWeb3エデュケイターのアン=リース・プレム氏だ。「我々はあらゆるeコマースが3D化している真っ只中にあり、Googleはブランドにそれに参入する機会を提供している」。

「空間的なストーリーテリングは小売業の未来であり、美容ブランドには最適だ」と同氏は付け加える。空間的なストーリーテリングにより、ブランドは複数のプラットフォームやARのような媒体全体で1つのストーリーを伝えることができる。

プレム氏はまた、「顧客はすでにソーシャルメディアでフィルターを使ってデジタルルックを向上させており、このテクノロジーに精通している。これからは、実際の外見のためにもっと多くの製品を購入できるようになる」と述べた。

[原文:Google is pushing further into AR beauty]

ZOFIA ZWIEGLINSKA(翻訳:ぬえよしこ、編集:山岸祐加子)