「みぞおちのしこり」は「肝臓がん」や「胃がん」が原因?医師が徹底解説!

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みぞおちのしこりが気になるとき、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。

「みぞおちのしこり」症状で考えられる病気と対処法

みぞおちのしこりは皮膚の異常で起こることが多いですが、ときには内臓の病気による場合もあり、様々な原因で起こります。急に大きくなることもあり、原因によっては速やかに適切な対処をとる必要がありますが、実際にどのように対処したら良いかわからないということが大半かと思います。この記事では、みぞおちにしこりができる原因や対処法について解説していきます。

みぞおちに固いしこりがある症状で考えられる原因と対処法

まずみぞおちの中心に固いしこりがある場合、剣状突起の可能性があります。胸のちょうど中心に左右の肋骨がつながる胸骨があり、そのすぐ下についているコリコリとした尖った骨が剣状突起です。剣状突起は誰にでもあるものですが、それがしこりとして触れるかどうかは個人差があります。特にやせ型の人に目立つことが多いですが、決して異常ではありません。

みぞおちにピンポン玉くらいのしこりがある症状で考えられる原因と対処法

みぞおちにピンポン玉くらいのしこりがある場合、脂肪腫やアテローム(粉瘤)の可能性があります。いずれも皮膚にできる良性腫瘍であり、痛くないことが多いため、経過観察となることも多いです。しかし悪性腫瘍と見分けがつけづらい場合や、腫瘍の大きさによっては、手術による治療が選択される場合もあります。治療は皮膚科や形成外科で行われます。緊急性はありませんが、気になる場合は一度外来を受診し医師に相談すると良いでしょう。

押すと痛い、触ると痛いみぞおちのしこりの症状で考えられる原因と対処法

押すと痛いみぞおちのしこりは、炎症性アテロームの可能性があります。炎症性アテロームとは、アテロームに細菌感染などが原因で炎症がおきてしまった状態です。炎症が起こると、触ったり押したりしたときに痛みを伴い、しこりは赤くなります。症状が強い場合は切開して中の膿を出す処置(切開排膿)が必要になる場合があります。緊急性は高くはないですが、症状が強い場合には自然には治癒しづらいため、皮膚科や形成外科の外来を受診し相談しましょう。

体調不良を伴うみぞおちのしこり症状で考えられる原因と対処法

吐き気や食欲不振、体重減少、倦怠感、腹痛などの全身の症状を伴う場合、悪性腫瘍の可能性も考えられます。特にみぞおち付近にしこりが触れる悪性腫瘍には、胃がんや肝臓がんがあり、仰向けになると息苦しいと感じたり、しこりを押すと痛みを生じたりする場合もあります。体表から触れるほどの大きさの場合、がんは進行していることが多く、早急に適切な治療を行う必要があります。がんの治療には手術や化学療法、放射線療法が行われますが、実際にどのような治療を行うかはがんの進み具合によって決まり、全身の検査が必要です。気になる症状がある場合には、速やかに消化器内科を受診するようにしてください。

すぐに病院へ行くべき「みぞおちのしこり」に関する症状

ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

体調不良を伴う症状の場合は、消化器内科へ

みぞおちのしこりが腹腔内の臓器が原因である場合、肝臓がんや胃がんの可能性があり、緊急性が高いことが考えられます。吐き気や食欲不振、体重減少、倦怠感、腹痛などの症状を伴う場合が多く、放置すると症状は徐々に増悪していきます。また、治療を開始した時期によって予後が決まるため、できるだけ早期に適切な治療を行うことが望ましいです。気になる症状がある場合は、速やかに消化器内科を受診し、精査をすることが必要です。

痛みや赤みの症状がある場合は、皮膚科または形成外科へ

通常アテロームは無症状ですが、炎症性アテロームの場合、しこりに痛みや赤みが生じます。症状が強い場合には切開排膿が必要ですが、通常処置を受ければ症状は速やかに改善します。処置は皮膚科や形成外科で行います。症状が強い場合には、一度外来を受診し診察を受ける必要があるでしょう。

受診・予防の目安となる「みぞおちのしこり」のセルフチェック法

みぞおちのしこり以外に食欲不振、体重減少、倦怠感などの全身症状がある場合

みぞおちのしこり以外に痛みの症状がある場合

「みぞおちのしこり」症状が特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「みぞおちのしこり」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

脂肪腫

脂肪腫は皮下に発生する良性の腫瘍であり、緩徐に発育し、40~50歳代に多く見られると言われています。みぞおち以外にも背中や肩、首、上腕、臀部、大腿などにできることがあります。大きさは数ミリ程度からピンポン玉大のもの、大きいものでは10センチを超えるようなものもあり様々です。通常、痛みはなく無症状で、軟らかいしこりとして触れることができ、皮膚から触ると被膜に包まれた腫瘍が動くのがわかります。治療は手術による摘出です。緊急性は低く、あくまで良性腫瘍のため経過観察となる場合もありますが、整容面で手術が必要と判断された場合や、悪性腫瘍と見分けがつけづらい場合には手術が選択されます。治療は主に皮膚科や形成外科で行われます。

肝臓がん

肝臓がんは正式には肝細胞癌と呼ばれ、肝臓にできる悪性腫瘍です。ウイルス性肝炎や肝硬変、脂肪肝などがリスク因子となります。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれ、早期では自覚症状をきたさず、健診などで指摘されることが多いです。しかし進行すると吐き気や食欲不振、体重減少、倦怠感、腹痛といった様々な症状をきたします。また肝臓の左側にがんができると、ちょうどみぞおちのあたりのしこりとして触れるようになります。肝臓がんは腫瘍の大きさや個数、転移の有無などによって選択される治療が異なり、できるだけ早い治療介入が必要です。速やかに消化器内科を受診し、まずは検査で全身をよく調べる必要があります。

胃がん

胃がんは胃の粘膜にできる悪性腫瘍であり、ピロリ菌に感染した胃にできやすいと言われています。がんが進行すると吐き気や食欲不振、体重減少、倦怠感、腹痛といった様々な症状をきたします。がんから出血を来し、貧血の症状が出たり、黒色便が出たりすることもあります。また、がんができる場所によっては、消化管の流れが悪くなり、腸閉塞となることもあります。肝臓がんと同じく、できるだけ早く治療を受ける必要があるため、速やかに消化器内科を受診するようにしましょう。

アテローム(粉瘤)

アテローム(粉瘤)とは、皮膚の内側に袋状の構造物ができ、中に角質や皮脂が貯まってしまった腫瘍のことです。大きさは数ミリから数センチの半球状のしこりで、しばしば中央に黒点状の開口部があり、強く圧迫すると膿のような物質が出てくることがあります。治療は手術ですが、良性の腫瘍のため経過観察が選択されることが多いです。将来的に炎症を来したり、破裂したりするリスクが高い場合には皮膚科や形成外科で手術が行われます。
アテロームが感染等により炎症が生じると赤くなり、触ったり押したりすると痛みを伴います。これを炎症性アテロームと言います。軽度の場合は抗菌薬を投与しますが、症状が強い場合はアテロームを切開して膿みを出す処置(切開排膿)が必要になることがあります。痛みを伴う場合は、早めに皮膚科や形成外科の外来を受診しましょう。

「みぞおちのしこり」があるときの正しい対処法は?

小さな無症状のしこりの場合には、経過観察で良いことが多いです。赤みや痛みがある場合は、炎症性アテロームの状態でしこりの中に膿が貯まっていることがあり、大きさによっては自然に軽快することが難しく、切開排膿の処置が必要になります。速やかに皮膚科や形成外科を受診しましょう。また、みぞおちのしこりには悪性腫瘍の可能性がある場合があります。全身の症状がある場合には、自己判断で対処することは発見が遅れ適切は治療開始が遅れるリスクがあります。まずは消化器内科を受診し、今後の方針は医師とよく相談しましょう。

「みぞおちのしこり」症状についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「みぞおちのしこり」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

みぞおちにしこりがあるときは何科の病院で相談できますか?

丸山 潤(医師)

脂肪腫やアテロームなどの皮膚の腫瘍の場合は、皮膚科や形成外科で相談できます。吐き気などの体調不良を伴う場合には、消化器系の悪性腫瘍の可能性もあるため、消化器内科を受診しましょう。

みぞおちにしこりがあって押すと痛いのは危険な状態ですか?

丸山 潤(医師)

炎症性アテロームの可能性があります。緊急性は高くないですが、症状が強い場合には切開排膿が必要になる場合があります。

みぞおちにピンポン玉程のしこりがあります。原因は何でしょうか?

丸山 潤(医師)

脂肪腫やアテロームの可能性があります。気になる場合には一度皮膚科や形成外科を受診して医師の診察を受けましょう。

みぞおちのしこりを放置するとどうなりますか?

丸山 潤(医師)

脂肪腫であれば無症状です。アテロームは炎症が起きた場合、痛みや赤みが出ることがあります。

まとめ みぞおちのしこりが気になるときは皮膚科、形成外科、消化器内科を受診

みぞおちのしこりには皮膚にできるものと消化器などの腹腔内臓器にできるものがあります。小さな無症状のしこりであれば経過観察で良いことも多いですが、悪性腫瘍の場合は速やかな治療が必要であり、受診するかどうか判断がつきづらいこともあるかもしれません。気になる症状がある場合には、ためらわずに一度受診してみてください。

「みぞおちのしこり」症状で考えられる病気

「みぞおちのしこり」から医師が考えられる病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

皮膚科、形成外科の病気

脂肪腫

アテローム(粉瘤)

炎症性アテローム

消化器内科の病気

胃癌

肝臓癌

みぞおちのしこりは様子見で良いことが多いのですが、痛みがある場合やその他の症状を伴っている場合は、病気が隠れているかもしれません。

「みぞおちのしこり」に似ている症状・関連する症状

「みぞおちのしこり」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

みぞおちの圧迫感で息苦しい

みぞおちが苦しい

みぞおちが痛い胃が痛い皮膚のしこりを押すと痛いへそ-周り押すと痛いみぞおち 筋肉痛のような痛み足の付け根しこり

「みぞおちのしこり」の他にこれらの症状がある場合でも「脂肪腫」「アテローム(粉瘤)」「炎症性アテローム」「胃癌」「肝臓癌」などの疾患の可能性が考えられます。吐き気や食欲不振、体重減少、倦怠感などの全身の症状がある場合には、早めの医療機関への受診を検討しましょう。

【参考文献】
・アテローム(粉瘤)(日本皮膚科学会)
・脂肪腫(日本形成外科学会)
・肝臓がん(日本赤十字社医療センター)