50万部超のベストセラー『人新世の「資本論」』に続く話題の本、『コモンの「自治」論』が発売中の、経済思想家・斎藤幸平さんが9月15日の大竹まことゴールデンラジオに登場。資本主義と民主主義について大竹・室井と議論を交わした。

大竹「今回の『コモンの「自治」論』は、『人新世の「資本論」』の次の本っていうことですか?」

斎藤「そうですね。『人新世の「資本論」』は読んでくださった方が本当に多くて、嬉しかったですね。」

室井「でも、すっごい難しかったじゃん。」

斎藤「あの本は、3.5%の人が動いたら世の中は変わるっていうメッセージで終わってるんですけど、じゃあ具体的に何すればいいの?という声があったので、具体例を入れながら、どうやったら一歩を踏み出せるかという本を出しました。」

大竹「えー、難しかったです。」

スタジオ(笑)

大竹「だから50万部も売れてるって、頭のいい人が世の中たくさんいるんだなと思ったね。ちょっと間違ってるかもしれない質問もしますが、答えていただけますか?」

斎藤「もちろんです。でも簡単だって言ってください。リスナーの人が難しい本だって思っちゃう。(笑)」

大竹「斉藤公平さんは、日本も含めて資本主義の世界が向かっている、成長している方向が、ちょっと間違ってるんじゃないかと、おっしゃってるんですか?」

斎藤「そうですね。今回の『コモンの「自治」論』は、資本主義が民主主義も脅かしていく。つまり私たちの自由を奪っちゃうってことを書いているんですね。今何が起きてるかと言うと、資本主義がまず格差をすごい広げています。他方で、この間グテーレス国連事務総長が「地球沸騰化の時代」とおっしゃったとおり、気候変動がますます酷くなって異常気象が起きています。」

大竹「おっしゃっていました。」

斎藤「すると今度は、水不足とか、食糧危機とか、環境難民とか、いろんな問題も出てくるし、インフレも起きるようになる。エネルギーの奪い合い、資源の奪い合いで、戦争みたいなものも起きるかもしれない。こういう緊急事態が、お互いを増強し合うように重なってくると、強い力を持つリーダーを求めるようになって、民主主義も脅かされてしまう。だから、これ以上一部の人が富を独占するような資本主義から、自分たちで自治を取り戻していくような社会に転換していくべきじゃないかということなんです。私たちは今、資本主義で色々便利になり、それこそアプリ一つで食べ物が届くみたいなことになってくると、お金さえあれば何でもできるんですけれど、お金がないと、アプリがないと自分たちでは何もできない。つまり、商品とかサービスとかお金に依存する無力な存在になっちゃっていることが、これからの時代を生きていく上では危ないっていうことです。」

大竹「それで、資本主義が民主主義を乗っ取るみたいになる?」

斎藤「そう、技術が発展すれば私たちの生活も便利になっていくから、とにかくまずは「成長」っていうのが魔法の言葉なんです。今の日本が顕著なんですけど、「成長」する方法がだいぶ行き詰まってきてるんですね。便利なものを作ってくれるんだったらいいかもしれないけれど、最近の成長の仕方っていうのは、今までは、みんなにとって大事で民営化してこなかったものを売っ払ってしまったりだとか、まだ使えるものを壊して再開発したりだとか。例えば、私は反対なんですけど、神宮外苑の再開発とか。」

室井「一部の人たちだけのためだよね。」

斎藤「要するに資本主義で一部の人たちだけが、「成長」という名のもとに、社会全体の富=「コモン」を独占していく。彼らが「お金を払ったんだから、何を使うか、何を作るか自分たちで決めていいじゃないか」と独占して、成長の果実である利益も全部持ってっちゃう。こおうなると、ますます格差だけは広がっていきます。」