関連画像

写真拡大

客と恋愛関係になってはいけないーー。その掟を破ってしまったデリヘル嬢が、弁護士ドットコムに相談を寄せている。

相談者は、入店時に客との恋愛や交際を禁止する契約を交わした。ところが、ある客への恋心を抑えきれずに「恋人」として付き合い始め、店にバレてしまった。「罰金」として100万円を支払うように言われているという。

キャバクラや風俗店では、客との交際を禁止するルールがあることも少なくない。違反した場合に罰金を支払う必要はあるのか。若林翔弁護士に聞いた。

●ルールの目的のひとつは「裏引き」の防止

ーーキャバクラや風俗店のキャストと客の交際を禁止するルール自体に問題はないのでしょうか。

ただちに違法になるわけではありません。そもそも店が、客との交際を禁止するルールを設ける目的として「裏引き」の防止があります。

「裏引き」とは、キャバ嬢や風俗嬢が店で出会った客に対して、店を通さずに、直接お金をもらってデートや性行為をすることをいいます。

キャバクラや風俗店では、お金をかけて集客などをしています。客を「裏引き」で取られてしまうと、店舗側は利益を得られず、コスト分の損失が出ることになります。また、店の管理が及ばないと、売春がおこなわれるリスクも内在しています。

このような「裏引き」を防止するための規程やルールには合理性があるため、それ自体が違法・無効にはなりません。

一方で「恋愛禁止」とすることについては、人が誰と交際するかは本来自由に決定できるもので、その意思は尊重されるべきという考え方があります。

実際に、キャバ嬢と男性従業員について、真摯な恋愛も含めて広く禁止する契約は無効と判断した裁判例があります。客との恋愛は、従業員とは違って「裏引き」防止の合理性があるなど事情は異なりますが、真摯な恋愛、真剣交際をも禁止するルールの場合、違法・無効と判断される可能性はあります。

●交際禁止ルールが「有効」だと支払義務が生じる可能性も

ーー罰金は支払う必要があるのでしょうか。

店がキャストに対して「罰金を払え」という場合、それは損害賠償や違約金の請求であることが多いです。

損害賠償については、交際禁止ルールの適法性・有効性の問題との兼ね合いで変わります。有効と判断されれば、ルール違反で債務不履行だとして、支払義務が生じる可能性があります。

ただし、労働者に対して損害賠償額を事前に違約金として定めることについては、労働基準法違反で無効になります。そのため、キャバ嬢や風俗嬢が労働者といえるのか、それとも業務委託を受けている個人事業主なのかという点も問題になってきます。

実際の働き方からみて労働者と判断される場合には、違約金である「罰金」を定めた規定は無効となり、罰金の支払義務はないことになるでしょう。

【取材協力弁護士】
若林 翔(わかばやし・しょう)弁護士
顧問弁護士として、風俗、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の健全化に助力している。また、店鋪のM&A、刑事事件対応、本番強要や盗撮などの客とのトラブル対応、労働問題等の女性キャストや男性従業員とのトラブル対応等、ナイトビジネスに関わる法務に精通している。
https://www.gladiator.jp/fuzoku-komon/
事務所名:弁護士法人グラディアトル法律事務所
事務所URL:https://www.gladiator.jp/fuzoku-komon/