中国製のEVはヨーロッパや東南アジアの市場で販売を伸ばしている。写真は自動車運搬船への積み込みを待つ上海汽車集団製のEV(同社ウェブサイトより)

2023年の上半期(1〜6月)、中国は日本を抜いて世界最大の自動車輸出国となった。中国海関総署(税関)の通関統計によれば、上半期の中国の自動車輸出台数は234万1000台。一方、日本自動車工業会が発表した日本の輸出台数は202万3000台だった。

過去3年間、中国の自動車輸出台数は毎年100万台のペースで急拡大を続けてきた。2021年の輸出台数は201万5000台、2022年は311万1000台を記録し、2023年は400万台の突破が確実とみられている。

グローバル大手の盲点突く

中国の自動車輸出の急増は、複数の要因が重なった結果だ。世界の自動車業界では、半導体メーカーの生産能力不足や新型コロナウイルスの世界的大流行の影響などにより、2020年から車載用半導体の供給が逼迫。完成車の生産が制約を受けるなか、大手グローバル・メーカーの多くが、限られた量の半導体を(高級車など)利幅の大きい車種の生産に優先的に振り向けた。

これに対し、中国の自動車メーカーはより柔軟な戦略をとった。国内市場の過当競争を避けて、海外市場に積極的に進出。(発展途上国向けの大衆車など)グローバル大手の販売が手薄になった市場で、商機をつかむことに成功したのだ。

世界の主要市場でEV(電気自動車)シフトが本格化したことも、中国の輸出拡大の追い風になった。中国は(中央政府の主導で)早くからEVの関連産業の育成に力を注ぎ、(電池材料から完成車に至る)一気通貫のバリューチェーンを構築。圧倒的なコスト優位を確立した。

中国製EVの輸出先は、現時点ではヨーロッパと東南アジアが中心だ。中国汽車工業協会のデータによれば、国別の輸出台数の上位3カ国はベルギー、イギリス、タイとなっている。

(訳注:ベルギーにはヨーロッパ最大の自動車荷揚げ港があり、そこで上陸したクルマがヨーロッパ各国で販売されている)

国別ではロシア向けが最大

EVだけでなくエンジン車の輸出台数も増えている。そして、増加分の多くが実はロシア向けだ。中国汽車工業協会のデータによれば、中国からロシアへの2023年1月から5月までの自動車輸出台数は28万7000台に上り、国別で最大の輸出先となった。


輸出急増の要因の1つは、ロシア市場向けのエンジン車の輸出拡大だ(写真は奇瑞汽車のロシア向けウェブサイトより)

その裏には、2022年2月に始まったロシアのウクライナ侵攻の影響がある。ヨーロッパ、アメリカ、日本の自動車大手がロシアから相次いで撤退した後、中国メーカーが市場に生じた空間を埋めているのだ。


本記事は「財新」の提供記事です

とはいえ、ロシア向けの輸出増加が今後も続くかどうかは微妙だ。「特殊な状況下での短期的な商機であり、将来に向けたリスクがないとは言えない」。財新記者の取材に匿名を条件に応じた自動車業界の専門家は、そう本音を語った。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は8月8日

(財新 Biz&Tech)