(写真: Yukihiro Nakamura / PIXTA)

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就職活動までまだ時間がありますが、いろいろと悩んでいます。世の中社会人になってもあまりよい話を聞かないこともあり、漠然と社会人としてやっていけるかどうか不安です。就職先は大企業でもリストラや、給料が増えないなどいろいろあるようですし、コンサルや投資銀行は長時間労働で、結局何かを諦めるしかなく、世の中暗いニュースばかりで、何だか幸せになれる気がしません。

最近も日本人はどんどん貧乏になって、お金持ち外国人観光客などに支えてもらっているというようなニュースを見ました。そんな中、どうやって仕事を見つけ、生活していくのがよいのでしょうか。アドバイスをください。

IK 学生

社会人になる時に不安を感じるのは当然


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幸せになるためには、まず「自分にとっての幸せとは何か」を理解しなければいけません。

学生から社会人になる、というのは人生における大きな転換点ですから、不安になるのは当然です。

学生というのはいろいろな意味で周りに保護され、サポートされ、生き方や勉強すべきことを教えてもらう立場です。

反対に社会人はそういった生き方や、何を勉強するか、どんな価値観を持つべきかを自分で考えないといけない立場ですから、初めてそこで一人前にならざるをえない、という状況です。

したがって不安になるのは至極当然のことなのです。

とは言え、すべての社会人、大人が自分の判断で、自分なりの生き方や世の中との対峙の仕方、どんな価値観を持ち、どんな生活をするかなどを理解しているか、というとそんなことはありません。

本来大人とは自分なりの人生経験や、試行錯誤するなかでそういったことを考えて、その過程において自分自身を知り、人生をどう生きるかを模索します。

しかし、すべてのヒトにそれが当てはまるわけではありません。つまり、歳だけ取って、自分の人生を生きるという志や軸が不在のまま「年齢だけ大人」という状態のヒトが多いのも事実です。

そうなると、価値観を周りのいわゆる常識に求めたり、自分自身の立場やポジションを周りとの関係において「のみ」把握することになりますから、過度に周りと比較したり、つねに他人の目を気にする、ということになりかねません。

そうするともはや、本来自分のための人生が誰のために生きているのか、わからなくなってしまいます。

そうならないためにも、自分にとっての幸せや生き方、価値観などをさまざまな人生経験や試行錯誤を通じて自問自答し、自分なりの人生における正解を創り出す必要があるのです。

どんな人生を送りたいか、をまずは考えたほうがよい

さて、前置きが長くなりましたが、まず自分の人生において誰かがなんとかしてくれるとか、素晴らしい人生を与えてくれるとか、そういった他力本願を捨てたほうがよいでしょう。

そのうえで、何かをすれば絶対に幸せになれるなんてこともない、という事実もキチンと認識しましょう。

そのような前提で、頂戴した相談の「どのように仕事を見つけて、生きていくべきか」ですが、まず順番としてどんな人生を送りたいか、が最初です。

そのなかで、仕事をどう人生の中で位置付けるか、そしてその実現のためにどんな仕事をするのか、という順番で考えたほうがよいでしょう。社会人や大人、というと仕事とどうしても切り離せないため、まずは仕事を考えるとか、仕事中心の生活を想像しがちなのかもしれませんが、反対です。

生活をするために、生きるために仕事をするのであり、目的は生活であり人生です。

仕事はその実現のための手段であり、方法です。

したがって順番としても、どんな人生を生きたか、が最初でその一部として仕事を考えたほうがよいのです。

世の中には楽な仕事なんて存在しませんし、完璧な仕事もこれさえやれば一生安泰、という魔法の杖は存在しません。

何かを取り何かを捨てる、という取捨選択がどうしても必要なのです。

そしてその取捨選択において決断を下すためには、仕事とプライベートを切り離して考えてしまうと、判断を誤りかねません。究極の目的である人生や生き方と照らし合わせての判断が必要なのです。

そうすると例えば、人生のゴールなりを達成するために自分は今何を優先すべきなのか、とかそういったことがおのずと見えてきますから、仕事を選ぶうえでの判断材料にもなるというものです。

仕事は人生という、より大きな存在の1つのピースや側面でしかありませんから、その前提である人生や生き方からまずは考えたほうがよいでしょう。

そうしないと、仕事のある側面、例えば表面上の年収とかステイタスなど、長い人生で考えるとどうでもよいことのみに目が向いてしまいます。

例えば若い頃や新卒での年収の差なんてものは、長い人生においてはないに等しいのです。

かく言う私も自慢ではありませんが、過去の拙著でも申し上げているように、最初の頃の年収は同年代でも底辺でしたが、自分の人生計画に照らし合わせて、それ以上にヒトよりも多くの経験や実践を早く積める場として仕事と向き合っていたため、他人と比べて気にしたことはありませんでした。

「周りに流されない強さ」を持つのが大切

また、世の中暗いニュースばかりだ、あまり社会人が幸せそうに見えない、といっても全員が全員暗い人生を生きているわけではありません。どんな環境においても幸せに生きられるヒトというのは、周りの状況がよくても悪くても、創意工夫を持って、自分が自分の人生をよくするのだ、という気概を持っているヒトです。

そしてそういった気概を持つためには、他力本願や周りに流されないような強さや軸をもっている必要があるのです。

自分の人生の決定権を、ヒトと比べるのではなく、つねに自分自身で持っておく。

これが大人の人生としては大切なのです。

周りが暗いから自分も幸せになれないと考えるようでは、いつまでたっても本当の幸せを掴むことはできません。

自分にとっての幸せの形をキチンと理解し、その実現のために今何をすべきか、をつねに考え行動する。

そしてその積み重ねにおいて人生を生きていく、というよりも切り開いていく。

そういったスタンスが人生においては大切です。

反対にそういった軸や信念に裏付けされた強さがないと、困難にぶち当たったときにすぐに折れてしまいます。

それこそ社会が暗いから自分はダメだと考えてしまったり、ちょっとでも仕事で困難なことにぶち当たったら辞めてしまうようなことになりかねません。

そうならないためにも、もし周りに幸せそうに生きている大人がいれば、そのヒトの考え方や生き方を参考にするなど、自分なりの理想像をリアルに想像できるようになると、物事がうまく回ります。

自分まで不幸になる必要はない

また、「日本人はどんどん貧乏になって」と書かれていますが、全員が全員そういうわけでもありませんし、そもそも論として貧乏の定義もヒトによって異なります。

周りのニュースや一般論を理解しておくことは大切ですが、それを鵜呑みにしてはいけません。

周りが不幸だから、暗いからといって自分まで不幸になったり、暗くなる必要なんてどこにもないのです。

むしろそういったニュースを見たときに、「では自分はこの社会にどんな貢献ができるか」とか、「1人でも多くの人生を明るくするために自分は何ができるか」とか、そういったポジティブなことを考えられるようになりたいですね。

IKさんがそのような前提と考え方で、自分オリジナルの幸せの形を見出し、世間に流されることなくご自身の人生の前向きな一歩を踏み出すであろうことを応援しております。

(安井 元康 : 『非学歴エリート』著者)