日本で販売される6タイプからなるカローラシリーズ(写真:トヨタ自動車)

「カローラ」といえば、クルマに詳しくない人でも一度は名前を聞いたことがあるであろうトヨタを、そして日本を代表するクルマの1つだ。1966年に発売され、60年に迫る歴史を持つロングセラーでもある。

長い歴史の中にはさまざまなバリエーションが展開されたが、現在はセダン、ワゴン、ハッチバック、SUVと4種類のボディ形状で全6タイプが展開されている。


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基本となるのは、4ドアセダンの「カローラ」、そのワゴンモデルとなる「カローラツーリング」、5ドアハッチバックの「カローラスポーツ」、SUVの「カローラクロス」。発売順としては、スポーツ(2018年6月)、セダン/ツーリング(2019年9月)、クロス(2021年9月)となる。

さらに、「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」というセダンとワゴンがあるが、これは、5ナンバーサイズを維持する旧モデルを、主に法人向けに継続生産しているものだ。

今回、それら“カローラシリーズ”が、どんな人にどのような理由で選ばれているかを分析した。使用データは、市場調査会社のインテージが毎月約70万人から回答を集める、自動車に関する調査「Car-kit®」だ。

<分析対象数と新車価格>
■カローラ(セダン):365名/199万〜299万8000円
■カローラツーリング:1174名/207万〜304万8000円
■カローラスポーツ:799名/220万〜289万円
■カローラクロス:936名/199万9000〜319万9000円
■カローラアクシオ:167名/161万1600〜217万7000円
■カローラフィールダー:459名/175万8400〜233万400円
※いずれも分析対象は新車購入者のみとする
※アクシオとフィールダーは2017年1月以降の購入者

なお、参考として2017年1月以降のカローラアクシオ/カローラフィールダー購入者データも含めることとした。法人向けとなってからのデータも含まれるが、大部分は現行のセダン/ツーリングが登場する以前に購入した一般ユーザーである。

購入時に想定した用途

ひとくちに“カローラシリーズ”と言ってもボディタイプはさまざまであるし、カローラアクシオの最廉価グレード(EX:161万1600円)から、カローラクロスの最上位グレード(HYBRID Z E-Four:319万9000円)を比べると、価格差は2倍近い。そこで、まずは「購入時に想定した用途」のデータを紹介する。

特徴的なのはカローラスポーツで、「運転自体を楽しむ」「一人でのドライブ・旅行」の2項目が圧倒的に高かった。


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「運転自体を楽しむ」は50%を超えており、購入者の2人に1人が“クルマそのもの”を楽しむために購入していることがわかる。まさに「スポーツ」の名を持つクルマである。


左からカローラスポーツ、カローラツーリング、カローラ(セダン)(写真:トヨタ自動車)

続いてワゴンのカローラツーリングとSUVのカローラクロスを見てみると、「日帰りドライブ(家族/友人と)」「1泊以上の旅行(家族/友人と)」が高く、一方で「一人でのドライブ」は低くなっており、カローラスポーツとは想定する乗車人数に違いがあることが明らかになった。

カローラアクシオは「買い物やちょっとした外出」が高くなっており、ほかの項目は軒並み低スコア。“ちょい乗り”や街乗りを目的に、購入していることが読み取れる。

選んだ理由は「乗り慣れている」から

ここからはカローラシリーズ、それぞれの購入者の違いを確認するために、「購入したボディタイプを選択した理由」のデータを見ていく。


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まずはカローラツーリングとカローラフィールダーであるが、ワゴンタイプゆえに「大量の荷物が積める」が理由として大きい。カローラスポーツは「走りが良い」「運転そのものが楽しめる」が他モデルより高い。先ほど見た購入時の想定用途と同様の傾向だ。

SUVのカローラクロスは「大量の荷物が積める」、そして「車内が広い」のポイントが高い。


SUVのカローラクロス(写真:トヨタ自動車)

カローラという馴染みあるブランドの中で、新たにSUV需要を取り込めているのは販売面でも大きく、詳細は後述するが「C-HR」からの乗り換えユーザーも獲得できている。

カローラアクシオ、カローラフィールダーは「乗り慣れている」のスコアが高い。いずれも5ナンバーサイズのコンパクトなボディで、長きにわたり作られてきたスタイルを持つモデルだからだろう。

カローラ(セダン)は、新世代モデルの中で突出して「乗り慣れている」のスコアが高いが、これは歴代カローラからの代替えが多いためである。カローラというブランドへの親しみが表れていると言えよう。

次に「購入時の重視項目」の結果も、あわせて確認していく。

「スタイルや外観」は、カローラツーリング、カローラスポーツ、カローラクロスでスコアが高く、カローラ、カローラアクシオ、カローラフィールダーでは低い傾向となった。


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のちほどデータを紹介するが、セダン系は以前からのカローラユーザーが多い。先の「乗り慣れている」が高いスコアを獲得していたことからも、あまりスタイルが重視されていないことがわかる。

とはいえ、「スタイルや外観」の重視度が高い3モデルも、スコアとしては7割程度にとどまる。他車種では8割以上におよぶものも多いため、カローラシリーズのユーザーは全般的に外観へのこだわりが高くないのだろう。


セダンはカローラの原点となるスタイル(写真:トヨタ自動車)

「荷室の大きさ」「荷室の使いやすさ」は先ほど見たボディタイプの選択理由と同様に、カローラツーリング、カローラクロス、カローラフィールダーで高いスコアとなっている。カローラスポーツは運転自体を楽しむクルマであるため、「安全運転支援機能」が他より高いのも特徴だ。

シリーズ内で各モデルが醸し出すイメージ

ここからは、購入したモデルに対してそれぞれのオーナーが「抱いているイメージ」を紹介する。


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カローラ、カローラアクシオ、カローラフィールダーは「親しみやすい」のスコアが高い。「乗り慣れている」のスコアも高かった3モデルであるため、共通する結果だ。

カローラツーリングとカローラスポーツは「スポーティ」が高くなっており、カローラスポーツはここまで示した結果と同様に「運転を楽しめる」が高く出ている。


カローラスポーツはオーリスの後継車という位置づけでもある(写真:トヨタ自動車)

カローラクロスは「アウトドア」が高く出ているが、オフロードというよりは都会派SUVであるため、そこまで突出した値にはなっていない。

最後に、購入前に乗っていたクルマ(前有車)をチェックしておこう。ここにも、カローラシリーズならではといえる結果が表れた。

前有車がトヨタ車である人の割合は、カローラ(75%)、カローラツーリング(77%)、カローラスポーツ(69%)、カローラクロス(77%)、カローラアクシオ(84%)、カローラフィールダー(79%)とかなり高い。もっとも少ないカローラスポーツでも69%と高く、カローラアクシオは8割を超える。


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ここまで、同メーカーからの乗り換えが多い車種もめずらしい。歴史とネームバリューのある、カローラだからこその結果だ。

車種別で見ると、カローラアクシオとカローラフィールダーはそれぞれ同モデルからの乗り換えが多い。

10年以上にわたって作られている車種だけに、同一モデルへの乗り換えが多いのも一因だといえるが、5ナンバーサイズのトラディショナルなスタイルにこだわりを持つ人や、大きな変化を好まず「同じモデルに乗り続けたい」と考える人が多いことも理由の1つだろう。


現在は法人向けが中心となるカローラフィールダー(写真:トヨタ自動車)

他のモデルではプリウスが1位か2位に入っているが、これはハイブリッドの選択肢が増えてきたことを意味すると考えられる。

カローラツーリングでは、3位に3列シートワゴンの「ウィッシュ」が入っているのが特徴だ。今、トヨタに背の低い3列シートはなく、3列シートを頻繁に使う人は「ノア」や「ヴォクシー」に、あまり使わない人がカローラツーリングへと乗り換えたと推察できる。


カローラフィールダーよりもスタイリッシュなデザインが特徴のカローラツーリング(写真:トヨタ自動車)

カローラクロスは、C-HRからの乗り換えが多い。C-HRは2016年に発売されたカローラクロスと似たサイズ感のSUVだが、デザイン重視のため後席や荷室が狭かった。ちょうど乗り換えのタイミングでもあり、C-HRユーザーがカローラクロスに乗り換えたことは、ごく自然なことだろう。

乗り換え需要を逃さないトヨタの強さ

歴史と伝統のあるカローラは、自動車の販売トレンドに合わせ複数のボディタイプをラインナップに加えてきた。その結果として、セダンやワゴンを好む既存ユーザーに加え、カローラクロスを通してSUV人気の受け皿もしっかりと用意し、販売を伸ばしている。

購入前に乗っていた車(前有車)で見たように、「トヨタ→トヨタ」の乗り換え需要を逃さずに、確実に販売へつなげるトヨタの強さがよくわかる結果となった。

(三浦 太郎 : インテージ シニア・リサーチャー)