BYDはエンジン車並みの低価格PHVが人気を集め、販売を急拡大させている(同社ウェブサイトより)

中国のEV(電気自動車)最大手の比亜迪(BYD)は、2023年の上半期(1〜6月)に124万8000台もの「新エネルギー車」を販売。中国市場のみならず、グローバル市場でシェアトップの新エネルギー車メーカーに躍進した。そんななか、BYDの急成長を支えるプラグインハイブリッド車(PHV)が改めて注目を集めている。

(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、PHV、燃料電池車[FCV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)

EVに限って見れば、2023年上半期の世界首位はアメリカのテスラであり、販売台数は約88万9000台。一方、上半期のBYDのEV販売台数は61万7000台だった。言い換えれば、BYDは製品ラインナップにPHVを持つおかげで、EV専業のテスラを追い抜くことができたのだ。

販売の伸び率はEVを逆転

中国の新エネルギー車市場では、販売の絶対数ではEVがPHVを大きく上回っている。しかし販売の伸び率では、2022年以降はPHVがEVを逆転した。中国汽車工業協会のデータによれば、2022年のEV販売台数は前年比8割増の536万5000台。これに対し、PHVは151万8000台と前年の2.5倍に急増した。

EVとPHVの勢いの落差は、2023年に入ってさらに拡大している。2023年上半期のEV販売台数は271万9000台に達したものの、前年同期比の伸び率は32%に低下。一方、同期間のPHV販売台数は102万5000台、前年同期比の伸び率は91%を記録した。

「PHVは(搭載する電池を)充電して走ることも、ガソリンを給油して走ることもでき、走行可能距離を心配する必要がない。さらに(原価が高い)車載電池の搭載量が少ないため、製造コストもEVより安くできる」

中国の民営自動車大手、吉利汽車集団の副総裁(副社長に相当)を務める王瑞平氏は、財新記者の取材に対してPHVのメリットをそう解説した。


中国の地場メーカー各社はBYDの後を追い、PHVのラインナップを増やしている(写真は吉利汽車のウェブサイトより)

現時点の中国市場で、PHV躍進の恩恵に浴しているのは(BYDや吉利などの)中国の地場メーカーだ。2023年6月のメーカー別のPHV販売台数ランキングを見ると、上位10社のうち外資系合弁メーカーは9位に入った1社だけで、残り9社はすべて地場メーカーだった。

VWも中国向けPHVを開発へ

「中国の自動車の走行環境は諸外国と大きく違う。例えば都市部のラッシュアワーの平均走行速度は、中国では(激しい渋滞のために)おおむね時速30キロメートル以下だが、ヨーロッパでは時速50キロメートルに達する。走行速度が低い状況では、モーターで走行するほうがエンジンで走行するよりエネルギー効率が高い」

前出の王氏はそう語り、地場メーカーが中国の走行環境に適したPHVを積極投入していることが、消費者に評価されているとの見方を示した。


本記事は「財新」の提供記事です

とはいえ、外資系合弁メーカーも手をこまぬいているわけではない。ドイツのフォルクスワーゲングループ(VW)は7月、国有自動車最大手の上海汽車集団との合弁会社でPHVを開発することを決め、中国市場での巻き返しを目指す。

(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は8月4日

(財新 Biz&Tech)