自信がない人は「黒を着るとよい」その深い理由
自信が持てない…そんな人におすすめしたい服の色とは?(写真:keyphoto/PIXTA)
政治学を学んだからといって、立派な政治家になれるわけではありません。経済学を勉強しても、大金持ちになれる保証はなく、教育学を修めても、子育てがうまくいくとは限りません。たいていの学問は、理論と現実が乖離していることが多いのですが、心理学は違います。ビジネスでも、勉強でも、恋愛でも、その知識は驚くほどに役に立つのです。心理学者・内藤誼人さんの新刊『すぐに実践したくなる すごく使える心理学テクニック』から、人づきあいに役立つ事例をご紹介しましょう。
気が弱くて悩んでいるのなら…
自分の言いたいことをきちんと相手に伝えることが苦手だったり、交渉のときにもう一押ししたいと思っても、なかなか強気に出られないことに悩んでいる人がいるとしましょう。
気の弱さは生まれつきのものなので、私たちにはどうすることもできないのでしょうか。
いやいや、そんなことはありません。もし気が弱くて困っているのなら、まずはお近くのアパレルショップに出かけてください。やることはひとつ。全身、黒で統一した洋服を買うのです。
ジャケット、シャツ、パンツ、靴まで、すべて黒。明日からは、その服を着てください。さすがに上から下まで黒には抵抗があるというのなら、シャツだけは青にするとか、ネクタイだけは違う色にしてもかまいません。ただし、全体の8割くらいは黒にしてください。
なぜ、黒なのでしょうか。
それは、黒が「強さ」にかかわる色だから。黒い洋服を着ていると、だれでも自分が強くなったように感じて、堂々とした振る舞いができるようになるのです。
「パワーカラー」を活用する
私たちに力強さを与えてくれるような色のことを、「パワーカラー」と呼びます。
よく知られたパワーカラーは「赤」なのですが、芸能人でもない私たちがさすがに全身赤色の服を着るわけにはいきませんので、次点の色としては、黒がふさわしいのです。黒い服を着ていれば、性格的にオドオドしている人でも、強気になれます。
アメリカ・コーネル大学のマーク・フランクは、ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)と、ナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)の、15年分のチームの反則記録と、ユニフォームカラーとの関連性を調べてみました。
その結果、NFLにしてもNHLにしても、黒のユニフォームカラーのチームほどたくさん反則をしていることがわかりました。黒い恰好をしていると、人は知らないうちに攻撃的になるという証拠です。
黒っぽい恰好をしていれば、なぜか強気な態度がとれるようになります。これはだれでもそうなるのです。ぜひ試してみてください。
あまり黒が好きではないという人は、普段は別の色の服でもまったくかまいません。けれども、大切な商談の日や、大切なプレゼンをしなければならない日など、特別な日には、必ず黒をメインカラーにしましょう。
黒い服を着ていないと、心理的に委縮してしまって、強く出られませんからね。そういう日には、特別な「勝負服」がどうしても必要になるのであり、その勝負服とは、すなわち黒い服なのです。
イラスト:杉崎アチャ
「パワーカラー」で自分の弱さを補える一方、必要以上に自分をよく見せようとすると失敗するのも世の常。やりすぎは禁物という例をご紹介しましょう。
私たちは、自分のことを知的な人間だと思い込んでいます。だれにでも、そういう傾向があります。程度の差はあっても、勘違いしているのですね。
アメリカ・コーネル大学のスタブ・エイターは、オンラインで募集した人たちに、ファイナンスの知識を尋ねてみました。いろいろな用語を見せて、「かなり詳しく知っている」のなら7点を、「まったく知らない」のなら1点をつけてもらうのです。
質問する用語は全部で15個でしたが、そのうち12個は実際に存在するファイナンス用語でした。「税額控除」や「固定金利住宅ローン」などです。
けれども、3個はまったく存在しないインチキ用語でした。たとえば、「評価前株式」(pre-rated stock)や「年率換算クレジット」(annualized credit)など。それらしく聞こえますが、こんな用語はありません。
エイターが調べたかったのは、この3つのインチキな用語でさえ、「よく知っている」と答えるかどうか。もし「知っている」と答えるのなら、その人は自分の知識をかなり水増しして見積もっていることになります。
多くの人は自分の知識を誤解している
結果はというと、なんと93%の人は、インチキな用語でさえ「少しは知っている」と答えたのです。エイターは、同じ調査をもう一度くり返してみたのですが、そのときにも91%の人は、インチキ用語を知っていると答えました。
この実験でもわかるように、私たちは自分の知識を誤解していると言わざるを得ません。本当はそんなに頭がいいわけでもないのに、頭がいいと思い込んでいる人が大勢いるのもそのためです。
けれども、人間関係においては、知ったかぶりをしないことが大切です。「なんでも知っている」という顔をしているのに、実はなんにも知らないということほど、恥をかくことはありませんからね。
それに知的な人間を演じようとすると、周囲の人からは気取っているなどと悪く評価されることもあります。むしろ、多少知っていることでも、「知らない」という顔をして、「わかりませんので、教えてください」と謙虚に頭を下げるくらいの人のほうが好感を持たれるものです。
頭がいい人は無知なことを認める
経営の神様と呼ばれた松下幸之助さんは、たとえ知っていることでも、「わかりません、教えてください」と頭を下げることで有名でした。
日本には、「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」ということわざがあります。本当に頭がいい人は、自分が無知であることを素直に認めて、相手に頭を下げられる人なのです。そういう人のほうが人間関係においても問題は起こさないものです。
(内藤 誼人 : 心理学者、立正大学客員教授、アンギルド代表取締役社長)