2021年12月20日にフルモデルチェンジしたダイハツのアトレーとハイゼットカーゴ(写真:ダイハツ工業)

ビジネスユースはもちろん、最近ではその広い室内空間と手頃な維持費も相まって、趣味の相棒として選ばれることも増えてきている軽ワンボックス。今回は、そんな軽ワンボックスの中でも2021年12月にフルモデルチェンジを果たしたダイハツの「アトレー」と「ハイゼット」を買うならどのグレードがオススメなのか考えてみたい。

なお今回の記事はビジネスユースではなく、レジャーユースで購入する一般ユーザーをターゲットにしており、特殊なキャラクターを持つ「デッキバン」と軽トラックの「ハイゼットトラック」は除外しているので悪しからずご了承いただきたい。

アトレーとハイゼットの違いとは?


アトレーの外観(写真:ダイハツ工業)


ハイゼットの外観(写真:ダイハツ工業)

アトレーとハイゼットは、同じボディを使用する車種で、パッと見のシルエットはほぼ同一となっている。じつは先代モデルまではアトレーが5ナンバー登録の乗用モデル、ハイゼットが4ナンバー登録の商用モデルと明確な違いがあった。

しかし、現行モデルにおいてはアトレーもハイゼットもどちらも4ナンバー登録の商用モデルとなっており、車検の期間や税制面などの差はなくなっている。

ちなみに軽自動車の4ナンバー車は、新車購入時の初回車検が2年(5ナンバー乗用モデルは3年)となり、その後は2年ごとの車検となるのは5ナンバー車と同一となる。


アトレー RS(2WD)のインテリア(写真:ダイハツ工業)


ハイゼット クルーズターボ(2WD)のインテリア(写真:ダイハツ工業)

ただ、商用登録とするため、リアシートは乗用モデルよりも簡素な作りとなっているのだが、これは軽ワンボックスを購入する層はレジャーユースであっても荷室スペースを重視する傾向が強いことを受けてのもので、リアシートを積極的に使用する層にはタントなどのスーパーハイト軽ワゴンをオススメしているとのことだ。

このように登録上での違いはなくなったアトレーとハイゼットだが、アトレーが上級車であることに変わりはなく、見た目のほか装備にも差が生じている。

最も大きな違いは搭載されるパワートレインで、アトレーは全車ターボエンジンとなるが、ハイゼットは最上級グレード「クルーズターボ」以外すべてのグレードでNAエンジンとなり、トランスミッションもアトレーはCVTのみとなるが、ハイゼットは一部グレードでCVTのほか5速MTも用意される点が違いとなっている(ただしターボモデルはハイゼットもCVTのみ)。


アトレーに搭載されている全車速追従機能付きACC(アダプティブクルーズコントロール)(写真:ダイハツ工業)


アトレーに搭載されているLKC(レーンキープコントロール)(写真:ダイハツ工業)

そして、装備面での最大の違いが、アトレーの「RS」およびデッキバンに標準装備された、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール(ACC)&レーンキープコントロール(LKC)だ。ハイゼットを含むそれ以外のグレードではオプションでも設定されない装備となっている。

先進安全装備は全車標準装備となるが、長距離運転などで真価を発揮する運転負荷軽減装備を求めるのであれば、全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール&レーンキープコントロールが選べるアトレー RSの一択になるだろう。

アトレー「X」とハイゼット「クルーズターボ」の違い


アトレー Xのスタイリング(写真:ダイハツ工業)


ハイゼット クルーズターボのスタイリング(写真:ダイハツ工業)

アトレーにもクルーズコントロールが備わらない「X」というグレードが存在し、ハイゼットのクルーズターボと近しい存在となっている。内外装の加飾はアトレーよりもハイゼットのほうが控えめとなるが、ハイゼットのクルーズ系はシートもアトレー同等の肉厚なものとなるため、乗り心地に大差ないのもポイントだ。

価格はアトレー Xが156万2000円、ハイゼット クルーズターボが145万2000円(ともに2WD車)と差額は11万になる。内外装の加飾の違いなどを除けば、アトレーにLEDヘッドライト&フォグランプが備わる程度の違いしかなく、ハイゼット クルーズターボでも5万7200円でLEDパックを選択できるので、それらを装備すればかなり近い仕様になる。そのためターボは必要だが、クルーズコントロールが不要で、価格を抑えたい場合は、ハイゼット クルーズターボという選択肢もアリだろう。


ディーラーオプションのラゲッジボードを装着したアトレーの荷室(写真:ダイハツ工業)

ただアトレーには、ラゲッジボードを組み合わせて荷室のアレンジが可能なディーラーオプション「デッキサイドトリム」が備わっているため、これを活用したい場合はアトレーを選ぶしかない点には注意したい。


ポップアップ機能付きのリアガラス(写真:ダイハツ工業)

また、パワースライドドアはアトレーXには備わらず、オプションでも選択できないが、ハイゼット クルーズターボでは7万1500円で選択することができる点も違いとなっている。スライドドアウインドウは、アトレーXがポップアップ式の開閉となり、ハイゼット クルーズターボはパワースライドドアを選択しないと開閉式とならないため、車中泊ユースなどのユーザーはよく考えて選びたいところだ。

ハイゼットの「クルーズ」と「デラックス」の違いは?


ハイゼット クルーズのスタイリング(写真:ダイハツ工業)


ハイゼット デラックスのスタイリング(写真:ダイハツ工業)

ターボエンジンは不要で価格を抑えたいという人や、3ペダルMT車がいいという人にとっては、ハイゼットの「クルーズ」と、その下のグレードとなる「デラックス」が候補になるだろう。

価格はクルーズが133万1000円、デラックスが121万円(ともに2WD、CVT)で、その価格差はおよそ12万円。エクステリアでデラックスは素地の部分が増え、ホイールキャップも備わらないなど、一気にビジネスカー感が増してくる。


デラックスのインテリア(写真:ダイハツ工業)

また、内装もデラックスはリアシートがヘッドレストの備わらないベンチタイプとなり、フロントシートもヘッドレスト一体式の薄手のものとなるという違いもある。その一方でデラックスの助手席シートは背もたれを前倒しすることができ、長尺物を積載しやすくなるほか、薄手のシートや簡素化された内装パネルによって荷室スペースはクルーズよりも広くなっているため、遊びのギアをいっぱい積載したいという人はデラックスという選択肢もアリだろう。


ハイゼットのキーフリーシステム&プッシュボタンスタート(写真:ダイハツ工業)

ただ、キーフリーシステムやプッシュスタート、スライドドアイージークローザーなどの装備は、デラックスに備わらず(クルーズの5速MT車にも備わらない)、必要な場合は「省力パック(6万500円、CVT車のみ)」というメーカーオプションを選ぶことになるため、価格差は小さくなってしまう。

そのため価格を重視するというよりも、車中泊など車内で快適に過ごしたい人はクルーズを、遊びのギアを少しでも多く積みたい人はデラックスをベースとし、必要なオプションを追加するというのがオススメだ。

なお、CVTと5速MTの価格差はクルーズで9万9000円、デラックスで5万5000円とグレードで差があるが、これは前述したようにクルーズのMTにはCVTに備わるキーフリーシステムやプッシュスタート、スライドドアイージークローザーなどの装備が備わらないため、価格差が大きくなっている。

ハイゼットのスペシャルも価格は魅力的だが装備が微妙


ハイゼット スペシャルのスタイリング(写真:ダイハツ工業)

価格を重視するのであれば、104万5000円〜という低価格の「スペシャル」も気になるところだが、装備はキーレスエントリーすら備わらない簡素なもので、オーディオレス仕様以外のメーカーオプションも存在しないという割り切った仕様となっているため、ビジネスユースで車両代を極力抑えたいというケース以外にはオススメできないというのが正直なところである。

最後にまとめると、デッキバンを除き、アトレーは「RS」と「X」という2つ、ハイゼットは「クルーズターボ」「クルーズ」「デラックス」「スペシャルクリーン」「スペシャル」という4つのグレードがあり、価格は以下のとおりとなる。

【グレード構成および価格】
アトレー RS 167万2000円
アトレー X 156万2000円
ハイゼット カーゴ クルーズターボ 145万2000円
ハイゼット カーゴ クルーズ 123万2000円
ハイゼット カーゴ デラックス 115万5000円
ハイゼット カーゴ スペシャルクリーン 112万2000円
ハイゼット カーゴ スペシャル 104万5000円


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全車速追従機能付きアダプティブクルーズコントロール&レーンキープコントロールが必須ならアトレー RSの一択、クルーズコントロールは不要だがターボが必須ならハイゼット クルーズターボ、ディーラーオプションのデッキサイドトリムが必須ならアトレーのいずれか、ターボ不要で価格優先ならハイゼットのクルーズとデラックスもオススメといえるだろう。

(小鮒 康一 : フリー(ライ)ター)