関連画像

写真拡大

消費期限が近い商品には「値引きシール」が貼られていることが多い。その値引きシールを勝手に貼り替えてしまったという女性からの相談が弁護士ドットコムに寄せられている。

相談者はスーパーで肉を購入する際、他の肉に付いていた値引きシールを貼り替えて購入した。帰宅後、反省して、スーパーに戻って値引きシールをはがした肉も購入したが、防犯カメラに貼り替えの様子がうつっていた場合、逮捕されるのではないかと不安になっている。

値引きシールを勝手に貼り替えて商品を購入した場合、どのような罪に問われるのだろうか。

●詐欺罪だけでなく、建造物侵入罪の可能性も

このような行為の法的問題を寺林智栄弁護士は次のように解説する。

「値引きシールをはがして、別の商品に貼り替えて、購入する行為は『詐欺』に該当すると考えられます。

スーパーの店員をだまして、割引分の利得を得ていることになるからです。刑法246条では、人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処すると定められています」

商品そのものを盗んでいる訳ではないため、窃盗罪ではなく詐欺罪に問われるようだ。寺林弁護士は別の罪にあたる可能性も語る。

「仮に、そもそも店内に入る前から、このような不正目的であった場合には、建造物侵入罪に該当することも考えられます。

最初からそのような目的があったかどうかというのは、ふつうは見分けがつかないものですが、例えば防犯カメラなどから常習的にやっていることがすでに店側にばれていたようなケースでは、目的ありと認定される場合もありうると思われます」

値引きシールを貼り替えてしまった相談者は店側からどのような請求をされるのだろうか。

「店側としては、差額分の支払いを要求することが可能です。このような値引きシールがついている商品は生鮮食品であることや賞味期限間際の商品であることが多いので、店としては、商品の返還を受けても廃棄するしかないでしょう」

ちなみに今回は、反省して、シールをはがした商品も購入している。このような姿勢は考慮されるのか。

「買い直しをしたとしても、既に詐欺罪は成立しており、その点に影響が生じるわけではありません。ですが、店側が被害届を出して処罰される可能性は極めて低くなると思われます」

【取材協力弁護士】
寺林 智栄(てらばやし・ともえ)弁護士
2007年弁護士登録。札幌弁護士会所属。法テラス愛知法律事務所、法テラス東京法律事務所、琥珀法律事務所(東京都渋谷区恵比寿)、ともえ法律事務所(東京都中央区日本橋箱崎町)、弁護士法人北千住パブリック法律事務所(東京都足立区千住)を経て、2022年11月より、NTS総合弁護士法人札幌事務所。離婚事件、相続事件などを得意としています。
事務所名:NTS総合弁護士法人札幌事務所
事務所URL:http://nts-law.jp