明日の株式相場に向けて=半導体×AIバブルと機関投資家の憂鬱

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 きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比289円高の3万2506円と4日続伸。今週末にメジャーSQ算出を控え、いったん立ち止まって様子を見たいところでもあるのだが、ブレーキを踏む気配がない。朝方安く始まったことすら忘れさせてしまう強さで、まさに疾風怒濤という形容が当てはまるような強烈な上げ相場が続く。日経平均はあっという間に3万2000円台半ばまで水準を切り上げてきた。日経225の時価予想PERは前日ベースで14.7倍と決して割高とはいえないのだが、4月末時点で2万8000円台に位置していたことを考えると、スピード警戒感ばかりが先に立って、なかなか上値を買いにくいというのが人情である。しかし、これは個人だけでなく国内の機関投資家も一緒という状況のようだ。

 特に機関投資家のポートフォリオの肝といってもよい半導体関連は、想定外の急動意で参戦するタイミングを逸した感があり、頭を抱える運用者が少なくないという。そのなか、生成AI関連で一気に存在感を高めたアドバンテスト<6857.T>やソシオネクスト<6526.T>については、市場筋によると「この2銘柄を組み入れていないことでインデックス(全体指数)に負けるケースに陥っており、焦っているファンド運用者は多い」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。こうした運用者にとって、アドテストやソシオネクスの押し目は文字通り慈雨となるもので、空を仰いでその機を待ち望んでいるのだが、なかなか押し目らしい押し目が提供されないまま、ここまで来てしまったという情景が浮かぶ。

 もっとも、インデックスに後れを取ることに我慢できず、出遅れた国内機関投資家が本腰を入れて買い出動し、更に個人がそれに相乗りしてくるようなタイミングで相場は天井を打つのが常である。「欹器(きき)は満つるをもって覆る」というのは中国の古典だが、満杯状態となればひっくり返るのは相場も同様。その水準が果たしてどこかは分からないが、確かなことは現状ではまだそこに至っていないということ。投資家マインドでいえば、誰もが上昇相場に疑いを持たなくなったところで、初めて下り坂が見えてくる。

 注目度の高い半導体関連だが、主力株の間でも跛行色が見え始めた。きょうはレーザーテック<6920.T>やディスコ<6146.T>が高く、東京エレクトロン<8035.T>もプラス圏を維持した一方、アドテストは売りに押された。アドテストは是が非でも組み入れたい機関投資家と、そろそろ利益を回収しておきたい機関投資家の思惑が合致した水準が1万8000円近辺のようであり、前週からこの大台を挟んだ水準で、もみ合いが続いている。同社株がここを踊り場に上放れるのか、それとも下値を試す展開に移行するのかは、今後の半導体関連の相場を占う上でも重要なポイントとなりそうだ。

 ともあれ全体相場は日経平均に目を奪われやすいが、騰落レシオ(25日移動平均)をみると、プライム市場が115%、スタンダードが101%、グロースが101%ということで、個別株ベースでみる限りそれほど過熱した状態ではない。相場牽引の2頭立て馬車となっている半導体やAI関連については中小型株への投資資金の攻勢がようやく軌道に乗ってきた感触で、仮に日経平均が一服局面となっても、活躍余地は十分にありそうだ。

 AI関連の穴株ではCIJ<4826.T>をマークしてみたい。独立系システム開発で日立製作所<6501.T>とNTTデータ<9613.T>を主要顧客とする同社はAI技術も深耕。ディープラーニング技術を活用しさまざまな業務システムの予測機能に適用しているほか、AIロボット分野にも踏み込んでおり、今後の活躍が期待される。また、新値街道に突入したAKIBAホールディングス<6840.T>にも着目。IoT機器分野で米エヌビディア<NVDA>と業務提携した実績があり、エヌビディア効果で盛り上がった今の物色の流れに乗りやすい。このほか、中小企業を主要顧客にAIやロボットを活用してホワイトカラー業務を支援するRPAホールディングス<6572.T>も中期的に上値を大きく伸ばす可能性がある。

 あすのスケジュールでは、5月上中旬の貿易統計が朝方取引開始前に開示される。また、午後取引時間中には4月の景気動向指数(速報値)、消費活動指数などが発表される。海外では5月の中国貿易統計、4月の独鉱工業生産指数、カナダ中銀の金融政策決定会合(政策金利発表)などが注目されるほか、4月の米貿易収支、4月の米消費者信用残高などにマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS