いつも調子がいい人の習慣は何か。心理学者の内藤誼人さんは「ある実験では、週末の夜ふかしが眠気や疲労の原因になるという結果が出た。毎日、同じようなリズムで生活する方がラクであるため、私は週末でも少しだけ仕事をしている」という――。

※本稿は、内藤誼人『「ダラダラ時間」をリセットする最新心理学BEST60』(春陽堂書店)の一部を再編集したものです。

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■まずは騙されたと思って朝型人間になる

ダラダラしがちな人の多くが、「夜型人間」というデータがあります。

アメリカ・ロヨラ大学のブライアン・ヘス氏は、107人の大学生を朝型人間と夜型人間にわけ、両者の比較をすると、夜型人間のほうが「ダラダラしがちで、成績もよくない」という結果を得ています。

普段から、何となくダラダラしてしまう、という人は夜型人間だから、という可能性が高いですね。

こういう人は、なるべく早く生活習慣を変えて、できるだけ朝型人間になるといいですよ。そのほうがダラダラせずにすみます。

朝型人間に生まれ変わるのは、そんなに難しくありません。ついつい夜更かしをしてしまう人は、30分くらいずつ床につく時間を早めていけばいいのです。最初の数日は少しつらいと感じるかもしれませんが、そのうちに慣れます。

朝型か夜型かということについては、自分の性格を変えることに比べれば、はるかにたやすくできます。性格を変えるにはものすごく時間がかかりますが、寝る時間を早くすることは、そんなに苦労もしません。

まずはだまされたと思って、早寝早起きの習慣を身につけてください。

■「ダラダラしてしまう」は行動パターンの問題

朝早く起きると、不思議なもので、ダラダラしなくなるのです。早起きをすると、気分が引き締まるというか、ものすごく身体の調子がよく感じるので、仕事などもホイホイと片づけることができるようになります。

実を言うと、私はずっと夜型人間でした。「夜のほうが、仕事がはかどる」と自分で思い込んでいたのですが、これは単なる思い込みでしたね。というのも、朝型人間になったら、さらに仕事がはかどるようになりましたから。

早寝早起きをしている人で、ダラダラしている人というのは、あまりお目にかかりません。みなさんもそうでしょう。みなさんの知り合いのうち、早起きの人を思い浮かべてください。

きっと、ものすごくバイタリティーに溢(あふ)れていて、エネルギッシュな人ばかりではないでしょうか。

逆に、毎日のように夜更かしをしている人はどうでしょう。こういう人は、何となくやる気がなさそうな顔をして、ダラダラしている人が多いのではないでしょうか。

「ダラダラしてしまう」というのは、意思力が弱いとか、性格の問題ではありません。行動パターンの問題です。そして、行動パターンを夜型から朝型にスイッチすると、ダラダラぐせも自然に直すことができるのです。

■週末でも少しだけ仕事をするほうがラクできる

仕事とプライベートのバランスをとることは重要です。しっかり働くだけでなく、しっかりと休憩をとる。そうやってバランスをとるからこそ、人生は充実することは言うまでもありません。

とはいうものの、週末だからといって、思いきりハメをはずして、遊びまわっていいのかというと、そうとも言いきれません。

かくいう私は、週末でも少しだけ仕事をしています。さすがに平日ほどではありませんが、それでも数時間は仕事をしているのです。なぜかというと、そのほうがラクだから。

週末だからといって遊びすぎると、かえって翌日の月曜がものすごく負担に感じるのです。

週末だからといって夜更かしすると、体内のリズムが崩れます。そしていったんリズムが崩れると、元に戻すのにとても苦労します。したがって、月曜日が余計にきつく感じられてしまうのです。

月曜日にモチベーションがあがらず、ダラダラするくらいなら、週末にも平日となるべく同じような生活リズムをしていたほうがいいでしょう。

■ダラダラする人は「ハメをはずしすぎ」

オーストラリア・アデレード大学のアマンダ・タイラー氏は、16人の実験参加者を2つのグループにわけ、片方のグループには週末にも平日と同じ時間に眠ってもらう条件を設定。

もう一方のグループには3時間の夜更かしをしてもらう条件を設定して、月曜日の調子を調べてみました。

その結果、3時間の夜更かしをすると、翌日の月曜には、おかしな時間に眠くなったり、疲労を感じやすくなったりすることがわかりました。

「週末だから、徹夜でゲームをするか!」
「週末だから、朝まで飲みあかすか!」

そんなことをしているから、月曜にダラダラすることになるのですよ。

ダラダラする人には、「ハメをはずしすぎてしまう」という特徴があるといってもよいでしょう。

気晴らしをするにしても、ほどほどにしておくというか、節度を守ることはとても大切です。平日だとか、週末だとか、そういうことに関係なく、毎日、同じようなリズムで生活していたほうが、気分の変調もなくなるので、かえって心理的にとても安定していられるので望ましいと思うのですが、いかがでしょうか。

ダラダラしがちな人は、生活のリズムを一定に保つことを考えてみるとよいですよ。

生活のリズムが狂ってしまうと、精神的にも、身体的にもものすごく疲れっぽくなってしまい、やる気も出せなくなってしまいますからね。

写真=iStock.com/SetsukoN
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/SetsukoN

■冬にダラダラするのは当たり前と割りきる

冬になると、気だるく感じて、腰が重くなることはありませんか。いったんこたつに入ると、トイレに行くことさえ面倒に感じてしまったり、お風呂に入る時間なのに、ダラダラとテレビを見つづけてしまったり。

だれでも冬になるとこういう状態になるのですが、これは人間が進化するうえで適応的に身につけてきた本能のようなものなので、どうにもなりません。逆に言うと、冬にダラダラしてしまうのは、何の心配もいらない、ということです。

「季節性感情障害」(SAD)という言葉を聞いたことはないでしょうか。「冬季うつ」という言葉も同じような意味なのですが、秋から冬になると、人間はどうもやる気が出なくなってしまうのです。

カナダ・ヨーク大学のキャロリン・デイビス氏によると、これは遺伝子的にプログラムされている自然な現象らしいですよ。

今でこそ、冬にも食べ物には困りませんが、昔は、そうではありませんでした。冬にはどうしても食料が乏しくなるので、こんな季節にはなるべく身体を動かさず、エネルギーを保存するようにしていた人間のほうが、生き延びる可能性が高かったのです。

そのため、私たちは、冬には抑うつ的になって、余分な活動をしないように遺伝子がブレーキをかけるように進化したのだ、というのがデイビス氏の説明です。

■元気なうちに仕事の貯金を

ちょうど、冬になるとクマが冬眠するのと一緒ですね。冬に元気に動きまわっていると食料もなくて死んでしまうので、なるべく動かないようにする戦略です。人間にも同じようなところがあるのです。

内藤誼人『「ダラダラ時間」をリセットする最新心理学BEST60』(春陽堂書店)

というわけで、冬にダラダラしてしまうのは、人間がそういう進化をしてきたからなのであって、病気でも何でもありません。そういうメカニズムを知っておくと、あまり心配せずにすみますね。

私の場合には、どうせ冬にはそんなにパワーが出せなくなるのを知っているので、冬場にはなるべく仕事をしないですむよう、夏から秋にかけて精力的に仕事をこなすようにしています。アリとキリギリス作戦です。

冬の仕事を夏のうちに終わらせてしまえば、冬には比較的のんびりしていても、何の支障もありません。

元気が出る季節に、できるだけ仕事の貯金をしておきましょう。そうすれば、いざ冬になってパワーが出なくなっても、そんなに困ることもありません。

人間は、一年365日、同じペースで仕事ができるのかというと、そういうわけにはいかないので、うまくいかなくなることも見越して、元気なうちに精力的に仕事をこなしておくのもいいアイデアです。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
立正大学客員教授、有限会社アンギルド代表取締役社長。慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。社会心理学の知見をベースに、ビジネスを中心とした実践的分野への応用に力を注ぐ心理学系アクティビスト。趣味は手品、昆虫採集、ガーデニング。『すごい! モテ方』『すごい! ホメ方』『もっとすごい! ホメ方』(以上、廣済堂出版)、『ビビらない技法』『「人たらし」のブラック心理術』(以上、大和書房)、『裏社会の危険な心理交渉術』『世界最先端の研究が教える すごい心理学』(以上、総合法令出版)など著書は200冊を超え、、近著に『めんどくさい人の取扱説明書』(きずな出版)がある。
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(心理学者 内藤 誼人)