くら寿司」広報が本当は教えたくないとまでいう“イチオシ”寿司ネタとは? 「いいね」よりも「おもろい」を追求する商品開発を貫く「くら寿司」人気ネタベスト5

迷惑動画や原材料価格の高騰、深刻な人手不足など、厳しい状況が続く大手回転寿司チェーン業界。そんななか、くら寿司は熾烈を極める他チェーンとの競争において、常に差別化を意識し、近代回転寿司の礎を築いてきた。くら寿司が長年愛されてきた理由や、人気寿司ネタのベスト5を広報・マーケティング本部の岡本愛理さんに聞いた。

「お客様を驚かせたい」という思いが根底にある

くら寿司は1984年に大阪に1号店を開店して以来、約40年間に渡って国内外問わず多くの人に愛されてきた。

当時、回転寿司はカウンター席のみだったのを、ファミリー層のお客様にも入店しやすいようにボックス席を設けた「E型レーン」を先駆けて導入。

さらに、機械やロボットを活用したシステム化にもいち早く注力し、寿司ネタの鮮度を管理する時間制限管理システムや製造管理システム、店員を介さずに注文できるタッチパネルなど、今となっては“業界の当たり前”を作ってきたのだ。

くら寿司店内。タッチパネルのメニューなど常に斬新なアイデアを施してきた

また、くら寿司と言えば「ビッくらポン!」を思い浮かべる人も多いが、その歴史は実は意外に長い。

同社が独自開発した水回収システムを応用し、2000年12月にお皿を5枚入れると1回ゲームができる仕組みを導入し、20年以上も親しまれている。

「創業者の『お客様を驚かせたい』という思いが根底にあり、常に面白く新しいアイデアを他社よりも早く具現化してきたのが、人気を下支えする要因になっている」

そう話す広報の岡本さんは、くら寿司が老若男女問わずに愛される理由について説明する。

「創業以来、コンセプトに『安心・美味しい・安い』を掲げ、美味しい寿司を手軽にリーズナブルに食べてもらうことを意識し、事業を展開してきました。また、化学調味料、人工甘味料、人工保存料、合成着色料の4つの添加物を完全排除したり、抗菌寿司カバーの導入など、お客様の安心につながる取り組みを継続してきたのも、ご支持いただいている理由のひとつだと考えています」

「いいね」よりも「おもろい」を重視した商品開発

また、人気アニメや漫画とのコラボも積極的に行い、話題化や店舗集客に向けてのマーケティング施策にも力を注いでいる。

『鬼滅の刃』とのコラボで配布されるオリジナルグッズは毎回売り切れが続出したり、最近では『ちいかわ』や『SPY×FAMILY』といった人気アニメとタイアップしたプロモーションを展開している。

「単にコラボするだけではなくキャラクターが寿司を持ったり、くら寿司の店員に扮したりとディテールや世界観にもこだわって、お店に来たくなるような魅力やインパクトを引き出せるように工夫を凝らしています。

これまでは『100円でこんなに美味しい寿司が食べられるのか』というのがお客様の“WOW体験”につながっていましたが、最近は競業他社の増加や安くて美味しい食の充実ぶりから、お客様の目と舌が肥えてきているというのが現状です。

そのため、『ビッくらポン!』で人気アニメグッズが当たるワクワク感や意外性など、お客様の感動をいかに生み出せるかを常に考え、コラボ施策を実施しています」

くら寿司×『鬼滅の刃』コラボメニュー あぶりえびバジルチーズ」115円(税込) 販売期間:2023年4月21日(金)~2023年6月8日(木) ※一部商品は予定数量に達し次第、販売終了となります。©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

大ヒット中のアニメや漫画のコラボグッズを求め、子供のみならず大人も「ビッくらポン!」に夢中になるわけだが、2009年に『ONE PIECE』の映画『ONE PIECE FILM STRONG WORLD』とタイアップしたのが、ひとつのターニングポイントになったそうだ。

「それまでは子供向けに『プリキュア』や『仮面ライダー』などとのタイアップを行っていたんですが、大人から子供まで幅広いファン層を抱える『ワンピース』とコラボしたことで、『くら寿司でしか手に入らないオリジナルグッズ』のニーズが一気に爆発しました。ワンピースに関しては、映画作品に続いてテレビアニメとのコラボも行ったほど、非常に好評をいただいております」

商品開発やマーケティングで意識しているのは、「いいね」よりも「おもろい」かどうか。インパクトを重視し、思わず手に取りたくなる、お店に行きたくなる。

そんな気持ちになるような、粋なセンスを大事にしているという。

くら寿司」人気の寿司ネタランキングベスト5

くら寿司の店舗では、多種多様な寿司ネタが常時レーンを回っているわけだが、その中でも選りすぐりのベスト5を岡本さんに伺った。

第5位:あぶりチーズサーモン

「あぶりチーズサーモン」115円(税込)

サーモンの上に特製のチーズ入りマヨネーズソースをかけ、その上から炙った一品。くら寿司が独自に開発した自動炙り機「あぶれるくん」を使用することで、均一性と絶妙な炙り具合を担保でき、一流の寿司職人にも負けない炙りの旨さを引き出している。

自動炙り機「あぶれるくん」

「赤外線を使って炙る『あぶれるくん』を導入したことで、ムラなく均等に炙れるようになり、炙りネタが好きなお客様からも支持をいただけるようになりました」

赤外線マシンで炙るので均等な焦げ目がつくという

第4位:ねぎまぐろ

「ねぎまぐろ」(軍艦)115円(税込)

通常のマグロよりも酸味が少なく、まろやかな口当たりが人気の秘密で、子供にも好評だという。実はシャリを握り、海苔を巻くのもロボットが全て自動でまかなっているとか。

「『誰がやっても同じ品質』を保てるように、できるだけ調理の行程はシンプルに省力化を図っています。とりわけ、最近のマシンは非常に進化しているんですよ。以前はお米をプレスするだけだったのが、今ではまるで“寿司職人”さながらのふんわりとしたシャリを自動で形成することが可能になっています。極端な話、今日初めての人でも美味しい寿司が握れるのは、くら寿司ならではの特徴だといえます」

第3位:とろサーモン

「大切りとろサーモン(一貫)」115円(税込)

主にノルウェーやチリなど冷たい海域で育った大型で脂のりのいいサーモンを使用し、ハラミ部分の油のりがよく、定番商品として3位にランクインした。

「大ぶりのサーモンの中から、さらにバイヤーが寿司に合うサーモンを厳選しています。脂ののったサーモンのハラミで、まぐろでいう、とろの部分を使用しており、上質な脂の甘みをご堪能いただけます。大切りサイズでのご提供のため、口いっぱいに味わっていただけます」

第2位:はまち

「はまち」115円(税込)

鮮度の良さでは、くら寿司の寿司ネタの中で1、2位を争うほどだという。

前日に水揚げされたはまちを、皮引きから丁寧に店舗で行い、ひとつずつ切っていく。

そのため、鮮度の高い状態で提供することが可能になっているそうだ。

「提供する直前で皮を剥ぐ方が、魚の鮮度が落ちないため、はまちに関してはこのような段取りを行っています。とりわけ関西のお客様から人気を得ており、上位にランクインしました」

第1位:極み熟成 まぐろ

「極み熟成 まぐろ」115円(税込)

栄えあるNo.1に輝いたのは「極み熟成 まぐろ」。

2013年に熟成マグロを導入し、そこから熟成具合を研究して旨味や見た目、香りのバランスを追求してきた寿司ネタになっているそうで、2019年から発売している。

「マグロはじっくり寝かせれば寝かせるほど、旨味成分も高くなりますが、そのぶん見た目が悪くなってしまいます。熟成させる時間を研究し、絶妙な鮮度と味を実現したのが極み熟成マグロです。ちなみに自社のセントラルキッチンでは、店舗にちょうど“食べごろ”が届くように計算された門外不出の製造工程があり、そこではスタッフが本場の寿司職人よりもたくさんのマグロを切っているんですよ」

そのほか、ランキング外の寿司ネタの中でおすすめなのが「いかおくら」(軍艦)。低カロリーで、女性でも食べやすいのが好評だという。

「いかおくら」115円(税込)

また、「肉厚とろ〆さば」も評判がよく、「シャリとネタの間にガリを挟んで食べると美味しく味わえる」とのこと。

「肉厚とろ〆さば」115円(税込)

さらに、あまり知られたくない“イチオシ”の寿司ネタがあり、特別に岡本さんから教えてもらった。

「先ほどの『極み熟成 マグロ』でも、マグロへのこだわりを説明しましたが、同じ値段で提供される『極み熟成 漬けまぐろ』も、シャリとネタに合う漬けダレにかなりこだわっていておすすめなんですよ。お値打ち以上だと思うので、できたら内緒にしてほしかったんですが…」

「極み熟成 漬けまぐろ」115円(税込)

今回、くら寿司の人気寿司ネタTOP5にランクインしたものは、店舗へ行った際にどれかひとつでも手に取った経験のある人も多いのではないだろうか。

まだ食べたことのない寿司ネタや、広報直伝のイチオシの寿司ネタを味わってみてほしい。

※記事内の商品は一部店舗では価格が異なります。

取材・文/古田島大介