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「小学生向けに作った本なのですが、フタを開けてみると幅広い年齢層に購入いただいて。うれしいと同時にとても驚いています」

【写真】【14×15=?】を3つの手順で解く方法!

2桁のかけ算をラクラク暗算

 こう話すのは、『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社刊)の編集担当・吉田瑞希さん。

 この本、発売から3か月で25万部を売り上げており、学習参考書として異例のヒットになっているのだ。

 振り返ってみると2007年ごろに、2桁以上のかけ算を効率よく計算する『インド式計算』が話題に。そのときから計算本が数多く出版され、何冊かがヒットを記録してきた。

 子ども向けの参考書として刊行されているが、ターゲット外の大人をも魅了する『計算本』の秘密とは?前出の吉田さんは、

「本についての感想が寄せられていますが、お孫さんを持つ世代の方がいちばん多いですね。もちろんご自身の脳トレとしても使われる方が多いのですが、私が想定していなかったのが、孫に教えたいので購入したという声です」

 孫に買ってあげる、ではなく自分が計算方法を身につけて、それを教えたいのだそう。

「本で紹介していること以外に勉強の教え方自体を聞かれたこともありましたが、ちょっとそこは専門外なので、お答えできませんでした(笑)」(吉田さん)

 また、売れる、売れないは販売戦略によって違いが出てくるという。実際、書店で『小学生が〜』の置き場所を変えただけで売り上げが向上したのだ。

「学習参考書の棚だけでなく、“話題の書”というコーナーに置かせてもらったのが非常に大きいと思います。子どものほか、ビジネスマンなどの層にも手に取ってもらえましたから」(吉田さん)

 人によってさまざまな購入理由があるが、子ども向けの計算書が人気を集める理由について、本のPR会社『QUESTO』代表の黒田剛さんは、

「計算することを楽しくできるから」

 と話し、こう続ける。

「今も昔も、学生だけでなくビジネスマンにとっても正確な計算力が必要です。そうした計算力を楽しみながら向上させることができるのが、この本が人気を集めた理由なのではないでしょうか」

 機械的に「やらなくてはいけない」と計算をするのではなく、楽しみながらゲーム感覚で計算力を上げる──。黒田さんは自身の経験をこう語る。

問題が解けたときの爽快感を求めて

「わが家には今、中学生と高校生の娘がいますが、その娘たちが小学校低学年のころ、散歩をしながら車のナンバープレートの4桁の数字を、誰がいちばん早く足すことができるかをゲームにしていました。

 娘たちは計算することを楽しんでいたんでしょう。出かけるときにはナンバーを見て計算する癖がつき、気がついたら僕よりも娘たちのほうが早く計算できるようになっていました。今でも2人は計算が得意です」

 この『小学生が〜』を購入した人もこんな声を。

「こんな規則性を覚えるだけで、ささっと答えが出るなんて、面白いですよね。ある意味、脳トレと同じように遊んでいるうちに自然にできる感じ」

 計算はゲーム感覚で楽しめるもの──。こうした“特性”を利用し、計算本ブームに火がつくのはテレビ番組の影響力も大きいという。

「テレビの放送作家さんと話したとき、こんなことを言ってました。“クイズ番組などで、どうして子ども向けの計算書や脳トレ本からの問題を取り扱うことが多いかわかる?

 視聴者も参加できて、なおかつ答えが出るまでチャンネルを変えさせないことが可能だからだよ”と。ちなみに、テレビで取り上げるのは英語よりも算数(計算)のほうがいいらしいです。

 英語は大人の層に苦手意識があるらしいのですが、計算は買い物のときなど自然に使っているので、ハードルが低いのだとか。そして人気のいちばんの理由は、解けたときの“スッキリ感”“爽快感”だそうです」(黒田さん)

 子どもには勉強、大人には認知症予防や頭の体操になる。親子が一緒に楽しめて、世代間をつなげるツールにもなっているのでは、と黒田さんは話す。

「SNSが発達し、スマホなどで調べれば答えがすぐにわかってしまう時代。現代人は“考える”機会が減っている傾向があります。だからこそ“考える”という時間が面白く感じるのでは、と放送作家さんはおっしゃっていました。

 また、コロナ禍という特殊な時期では人とのつながりが希薄になりました。“考察”“謎解き”ということが人気なのは、みんなでワイワイと語ることができ、仲間とつながれることも大きいのだと思います」

 そしてSNS時代だからこそ、ブームになるのが早い、という。

「解けたときの“スッキリ感”を体験しているため“ねぇねぇ、これ知ってる?”と話題に出したくなり、SNSで自然と拡散していく要因になっているのかな、と僕は感じています」(黒田さん)

 前出の吉田さんは、今までできなかった計算ができたときの“爽快感”を求める気持ちはよくわかると言い、読者からの声をこう話す。

「19×19以上の2桁の計算方法を本にしてほしい、というお問い合わせが非常に多いです。実は、10の位が同じであれば24×28とかも同じやり方でできるんです。19×19からステップアップしたい方は、ぜひやってみてください」

 問題が解けたときの“快感”を求める声がある限り、計算本のブームは続いていくのかも──。

たった3つの手順で答えが出る!

【14×15=?】

(1)15から5を14にわたし、19×10に(かける数字を10にする)してかける
(2)14と15の1の位、4と5をかける
(3)(1)の190と、(2)の20を足すと、14×15の答えに

 答えは【210】

『小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本』(ダイヤモンド社刊)
「“本当に1日で計算できるようになりました”という声をいただきました。19×19までに絞ることで、わかりやすくできたと思います」(吉田さん)。計算方法をマスターし、あなたも“スッキリ”してみませんか?

(取材・文/蒔田 稔)