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新入学のシーズンを迎えました。今年度は対面でのコミュニケーションが活発化することで、大学のキャンパスはにぎわいを取り戻しそうです。

東京にもたくさんの新入生たちが各地からやってきますが、コロナ禍の前から気になっているのが、「東大や早慶の首都圏ローカル化が進んでいる」と言われていることです。

地方の高校生たちは、本当に自分の進路を見出せる環境にあるのでしょうか。私の母校である東大を例に調べてみました。(編集部インターン・白井楓花)

●九州などからの合格者の減少傾向が明確に

まずは、東大について、数字を見てみましょう。

Y-SAPIXが東大入試についてまとめたサイト「東大研究室」 のデータを見ると、ここ20年で「東京を除いた関東」出身の合格者が増加しており、毎年3割程度存在する東京出身者を含めると、20年前は合格者の半分程度だった関東地方出身者が、ここ数年は約6割となっています。

その分、ここ20年で地方出身の東大合格者数は減少していることになります。東大研究室のデータからは、東北や中部、中国、四国、九州・沖縄の減少傾向がみられます。例えば、九州・沖縄は2004年には10%だったのが、2023年には7%に低下しています。

なぜこのようなことが起きているのでしょうか。

・地方高校生の親の経済力の低下
・都市と地方の受験についての情報格差の拡大
・地方大学の医学部など地元エリートコースの人気

などが指摘されています。

●受験勉強の環境に、都会と地方で大きな差がある

特に気になっているのが、情報の格差拡大が起きていないかということです。ネットで手軽に情報は手に入るようになりましたが、東大に進学した高校OBがいない、ハイレベルの進学塾が少ない、などの環境にあると、よりリアルな情報に触れることは難しそうです。

そこで、「地方高校生に、追い風を」を理念に地方の高校生たちにセミナーなどを開催している東大の学生団体「FairWind」 で活動する、東大教育学部3年(取材時は2年)の横山由羽さんに話を聞きました。

ーー横山さんも地方の出身ですか?

はい。宮崎県の私立の中高一貫校の出身です。進学コースに在籍していましたが、私の前に東大合格者が出たのはもう15年前、というような環境でしたので、周りに東大を目指している人はいませんでした。

私は教育学を学びたいと思って調べていく中で、東大にたどりつきました。

ーー関東圏の有名進学校出身者と地方出身者との間にギャップを感じることもあるかと思いますが、受験生時代と入学後とどちらの方がギャップが大きかったですか?

実際に東大に入ってみると、人間関係でギャップを感じたことはほとんどありませんでした。

でも、大学の友人と受験生時代について話していると、やはり授業の遅れや勉強方法については、大きな差があったんだなと感じます。東大を目指す人が通うような大手の塾や予備校が周りに全然ないことも大きな違いですね。

●親に「地元の医学部にいって」と言われた高校生に伝えたこと

ーーFairWindではどんな活動をされていますか。

全国の高校からの申し込みを受けて、進路について考えたり勉強法を紹介するセミナーを開催したり、メールマガジンを配信しています。

セミナーは、県内で一番というような高校から、東大合格者を輩出していない離島の高校まで、さまざまな高校からお問合せをいただいています。離島の高校のセミナーでは、東大合格を目指しているわけではなくとも、進路について自分で考えてみる機会として高校側にFairWindのセミナーを活用してもらえているのだと実感できました。

ーー地方の高校生と関わっていく中で、印象に残っていることはありますか。

「親に『地元の医学部に行きなさい』と言われている」という高校生ですね。こういう高校生は結構いるのですが、「医学に興味があるの?何か興味を持っていることはある?」と聞くと、その高校生は医学に興味を持っているわけではないということでした。

受験期や大学での勉強の辛い局面を乗り越えるためにも、きちんと自分で自分の進路について考え向き合うことが大事だと伝えています。

セミナー自体、決して地元の大学を目指すことを否定しているわけではありません。進路について考えるきっかけにしてほしいと思っています。

どこで生まれても、自分で自分に制約をつけないで、進路についての考えを自分で持てる環境を身近にしたいですね。

●編集後記:合格者が高校から「自分1人だけ」の環境を振り返って

私自身、広島の出身高校からの東大合格者は私1人のみ、知り合いゼロで入学し、ついこの3月に卒業しました。私の場合、高2の担任教諭に東大進学を勧められたことがきっかけですが、当時の私は、東大は雲の上の存在だと思っていました。

勧められなければ東大について調べることもしなかったでしょうし、地元からの距離などを考えて関西圏や広島の大学に進学していたかもしれません。

東大を第一志望にすることを友人に話すと、「東大って天才か変な人しかいなさそうじゃない?女子も2割しかいないし、過ごしていける?」と何度か言われました。当時、東大生について知るのは、テレビのクイズ番組くらいしかなく、現実味のある情報はほとんど入ってきませんでした。

入学後のことはどうにでもなります。問題は、東大受験のポテンシャルはあるのに自分は東大受験とは縁遠い存在だと思っていて、選択肢を潰してしまっていることです。

今後、経済環境の悪化などで、地方からの東大進学はますます厳しくなるかもしれませんが、今回取材をしたFairWindの取り組みのように、地方の高校生がリアリティのある情報に触れて、未来の後輩たちのロールモデルになってくれることを祈っています。

※本記事は2023年3月に作成しました