電子書籍の海賊版が違法アップロードされたせいでAmazonが公式版をKindle Unlimitedから削除してしまう
AmazonはKindleで電子書籍を出版するユーザーに対し、Kindleで独占的に電子書籍を販売することを条件としたKDP セレクトという優遇サービスを提供しています。ところが、電子書籍の海賊版がウェブサイトに違法アップロードされたせいで「契約に違反した」と見なされ、電子書籍がAmazonのサブスクリプションサービスであるKindle Unlimitedから削除されてしまう事態が発生していると、著作権侵害やデジタル権に詳しいウェブメディア・TorrentFreakが報じました。
https://torrentfreak.com/amazon-removes-books-from-kindle-unlimited-after-they-appear-on-pirate-sites-230206/
小規模な出版社や個人のクリエイターにとって、AmazonのKindleは電子書籍を出版するための優れたプラットフォームとなっています。特に、作品を読み放題サービスのKindle Unlimitedに登録できるKDPセレクトに加入することで、著者は読まれたページ数に応じて収入を得ることが可能です。
KDPセレクトの契約には、「作品の電子書籍版をAmazonのプラットフォームのみで販売する」ことが含まれます。ところが、過去数週間にわたって「海賊版サイトで電子書籍が違法に公開されたことが契約違反と見なされ、AmazonがKindle Unlimitedから電子書籍を削除してしまった」という事例が相次いで報告されているとのこと。
ファンタジー作品の「The Plated Prisonerシリーズ」をAmazonで出版している作家のRaven Kennedy氏は2023年2月初頭、2冊の本がKindle Unlimitedから削除されたと報告しました。AmazonはKindle Unlimitedから本を削除した理由について、「これらの本がウェブ上で広く公開されていたため」と説明しましたが、これらの本をウェブ上で公開したのはKennedy氏自身ではなく、違法に電子書籍をアップロードする海賊版ウェブサイトでした。
Raven Kennedy on Instagram. Amazon has taken down two of her books and is threatening the others because or piracy! pic.twitter.com/blhp4Jvtsa— Maria Elena / M. Karys (@_mkarys) February 5, 2023
Kennedy氏はInstagramへの投稿で、「著作権侵害は私の手に負えるものではありません。取り下げ通知を代行する会社に大金を支払い、海賊版がないか常にウェブ上でチェックしていても、すべての知的財産権侵害に追いつくことはできません」「そしてAmazonは著者を支援するどころか、脅迫してきます。皮肉なことに、海賊版をアップロードする人々はAmazonからファイルを入手しています」と述べました。
また、2023年2月5日にはファンタジーロマンス作品をKindleで販売するCarissa Broadbent氏も同様に、著作権を侵害した海賊版のせいで作品が「ウェブ上で自由に入手できる」と見なされ、Kindle Unlimitedから削除されたと報告しました。
A few hours ago, I got a stomach-dropping email from @amazonkdp that Children of Fallen Gods had been removed from the Kindle store with zero warning, because of content "freely available on the web" -- IE, piracy that I do not have any control over. ????⬇️ pic.twitter.com/FiQb4co2nS— Carissa Broadbent (@CarissaNasyra) February 5, 2023
最終的にはKennedy氏やBroadbent氏の主張が認められ、電子書籍は再びKindle Unlimitedで公開されることとなりました。しかし、申し立てによって本来は不要な時間と労力が消費されてしまったり、一時的にとはいえ公開が停止されたことで収入にダメージが及んだりするため、海賊版ウェブサイトに公開されたことを理由に本家の電子書籍をKindle Unlimitedから削除するAmazonの対処には、批判が集まっています。
オンライン署名サイトのChange.orgには、Amazonに対してKDPセレクトのポリシーを変更するよう求めるページが作成され、記事作成時点で3万5000件以上の署名が集まっています。署名活動を開始したMarlow Locker氏は、Amazonは海賊版の違法アップロード者がデータをコピーする場所となっており、そんなAmazonがKDPセレクトから電子書籍を削除して著者を罰するのはばかげた話だと指摘。AmazonはKDPセレクトのポリシーを変更し、より強力なコンテンツの保護を実装して、作者を支援するべきだと主張しています。
Stop the unfair removal of titles on Amazon - Change the KDP Select Policy! · Change.org
https://www.change.org/p/stop-the-unfair-removal-of-titles-on-amazon-change-the-kdp-select-policy
Amazonの広報担当者によると、Amazonは一連の苦情を認識しており、適切な解決策を見つけるため関係者と協力しているとのこと。Amazonの広報担当者はTorrentFreakに対し、「著者のフィードバックを歓迎し、著者と直接協力して、アカウントに影響を与える問題やエラーに対処します」と述べています。
しかしTorrentFreakは、そもそも大出版社や政府でさえ海賊版ウェブサイトの撲滅には至っておらず、個々の著者が海賊版に対処するのは不可能だと指摘。そのため、「AmazonがKDPセレクトのポリシーを更新して、海賊版ウェブサイトを独占ルールから除外する方が理にかなっています。書籍の著作権侵害が横行しているため、著作権侵害がないことを保証できるタイトルはありません」とTorrentFreakは述べました。