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●フードライターの家に伝わるおばあちゃんの個性的なメニュー「キャベツご飯」とは? おいしすぎるそのレシピについて語っていこう。

 母が「どうも同じ味にならないのよね」と言いながらも作る「キャベツご飯」という料理があります。洋裁の仕事に忙しかった祖母は、船乗りの祖父が夜勤で帰らない日に、よく「キャベツご飯」を作って母たち兄妹に食べさせていたそうです。母は懐かしさで、たまに食べたくなるらしいのですが、どうやら同じ味を再現するのが難しいようなのです。

「キャベツご飯」は元々、農家の家庭で育った祖母たちが戦時中に食べていた「ジャガイモご飯」や「カボチャご飯」の延長のようなものだそう。少量のご飯をかさますためにあみ出した節約レシピなのだとか。

 祖母に作り方を電話で聞いてみると、“レシピはないよ”という豪快な回答が返ってきましたが、基本材料は抑えつつ、詳細な工程は母にも聞いてレシピ化してみました。ぜひ、お試しあれ!

「キャベツご飯」の作り方とその味わいは?

 おそらく母が再現できなかった理由は、前回ご紹介した「甘くて茶色い玉子焼き」と同様、「砂糖と油の量にあります。砂糖の量の思い切りのよさと、多めの油で照りっとさせるのがポイントだと感じました。

◎材料(3人分)

・醤油……大さじ3
・砂糖……大さじ3
・味塩コショウ……少々
・キャベツ……4分の1玉
・冷ご飯……茶碗2杯分
・炒め用油……大さじ2~3

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 まず、キャベツを太めの千切りにします。次に、熱したフライパンに揚げ焼きにでもするのかな? というくらいの油をガッツリひきます。キャベツをしんなりするまで炒めたら、調味料をすべて入れます。

 醤油がふつふつとしてきたら、ご飯は冷たいまま塊でキャベツの上に置きます。フタをして弱火で3分。火を消したら、そのまま10分~15分ほど放置します。

 ご飯は、あえてほぐさないことがポイント。タレが染みたところと、白いままのところを残すことで、味の濃さにバランスをつけます。ご飯をキャベツと炒め合わせるのではなく、“蒸かす”ことを意識します。ご飯が温まったら完成!

“甘~い味付け”がまた食べたくなるポイント

 この底抜けに甘い味が祖母らしくて好きなのです。例えるなら、すき焼きの後、ドロドロに煮詰まっ汁でおじやを作った時の味に似ています。底の方はおこげになりやすく、それもまた香ばしくて美味。意外とキャベツと甘辛い味の相性がばっちりなのです。

 生卵を落としたら、完全にすき焼きの味になりました。我が家では、冷ご飯はチャーハンかオムライスにして食べるのが定番ですが、今度からキャベツご飯もラインアップに加えたいと思います。

 そうそう、祖母との電話の切り際に、「さっきのキャベツご飯は記事にするよ」とさらっと告げたところ、「なんでそったらもの記事になるって、はんかくさい」(訳:なんでそんなものが記事になるの、ばかなこと言って)と、照れちゃったのか、テンション高めに言われました。これは孫も好きな味よ。おばあちゃん、ありがとう!

(撮影・文◎亀井亜衣子)