2月19日、単独公演としては16年ぶりとなるレッド・ホット・チリ・ペッパーズの来日公演初日が東京ドームにて開催された。「参加席」という名の見切れ席のチケットが当日券として販売され、実質ソールドアウト状態。実際、ものすごい人の数だった。まさしくドーム公演という感じだったのだが、それでいてあんなにもバンドを身近に感じられるライブは珍しい。

【写真を見る】16年ぶりとなる単独ライブのステージ

鳴らされている音も、曲によってはキーボードが入ったものの、当然同期はなく、そこにあったのはメンバー4人の肉体が奏でるものだけ。演出も至ってシンプルだった。スクリーンに映し出されるメンバーの姿にリアルタイムでエフェクトを加えていた程度。あれだけの人数を熱狂させておきながらも、実のところ、彼らがやっていることは1000人規模のライブハウスでも成立しそうなぐらいストレートでシンプルなものだった。

何が言いたいかというと、レッチリは正しくロックバンドだったのだ。だからこそ、観客はバンドの熱量を少しでも歪められたり、過度に拡張されることなく受け取ることができたし、バンド側もまた観客のポジティブな熱狂を感じることができたんだと思う。それは公演後、ホテルのベッドらしきところで横になったフリーが、東京への感謝の言葉をInstagramでの動画投稿を通じて伝えていたことからもわかる。動画の冒頭で”absolutely exhausted(完全に疲れ果てた)”と言っていたが、それでも言っておきたかったんだろう。それはあの場に居合わせた者としてとてもうれしいことだ。

あと忘れちゃいけないのは音響のよさ。普段は、会場が東京ドームというだけで参加する気力が削がれるところもあったのだが、この日に関してはまったくそんなことはなかった。機材的な要因なのかはわからないが、これまでの認識が覆されるほどクリアな音像だった。それに加えてあの演奏だ。すべての音が聴き取れるほどの粒立ちのよさ。レッド・ホット・チリ・ペッパーズというバンドの底力をまざまざと見せつけられた。しかも、曲の頭でフリーとジョン・フルシアンテがチャド・スミスを中心にしっかりとアイコンタクトを交わしてから演奏をはじめる場面が何度もあって、バンドアンサンブルをかなり意識している様子が伝わってきたし、決して勢いでごまかさず、真摯に音楽と向き合う姿は多くのバンドマンにとってお手本になるようなものだったと思う。


Photo by Kazumichi Kokei

随所に挟み込まれたフリーとジョンが牽引するインプロヴィゼーションもよかった。こういう場面はわりと冗長に感じることが多いのだけど、彼らのそれは次に演奏される曲へのブリッジの役割も果たしていて、そこに存在する意味がしっかり感じられた。チャドのドラムも素晴らしい。全体的にパワフルなドラミングが印象的ではあるが、「Nobody Weird Like Me」のような曲で見せる小技や繊細なキック使いには心底唸らされた。


Photo by David Mushegain


Photo by TEPPEI KISHIDA

そして、やっぱりジョン・フルシアンテだ。やはりジョンという存在は替えの利かない唯一無二の存在ということを約110分に及ぶライブであらためて実感した。セットリストは、フリーの「宇宙一遅い曲」という曲紹介のあとに鳴らされた高速パンクソング「Nobody Weird Like Me」から最新作『Return of the Dream Canteen』の収録曲まで、まんべんなくフォロー。個人的には「Soul To Squeeze」や「Suck My Kiss」をプレイしてくれたのがポイント高かった。


Photo by TEPPEI KISHIDA

そして、どの曲もアンソニー・キーディスというボーカリストが最高の歌でまとめ上げてくれたことが大きい。クセ者のプレイヤーたちの音を一身に背負い、ミリも揺らぐことなく堂々と歌い届ける。メインMCを担当していたのも、この日最も動き回っていたのもフリーだったため、彼自体の存在感はそこまで大きなものではなかったが、「By The Way」を筆頭に彼のひと声が持つ説得力はやはり凄まじい。


Photo by Kazumichi Kokei

何より驚くべきはジョン以外の3人が60オーバーということ。ミドルテンポの曲でも無駄に飛び跳ねるフリーをはじめ、それぞれが強靭な肉体をキープしていることはパフォーマンスにも直結しているはずだ。人としても見習うべきところが多い。


Photo by David Mushegain


Photo by David Mushegain


Photo by David Mushegain

16年前の単独公演と同様に、今回も東京ドームという巨大な会場でのパフォーマンスとなったが、結局のところ、そこにあったのはエンターテインメントでもショーでもなく、4人の男が何十年も変わらず鳴らしてきたロック魂だった。いま迷っている人がいるのなら、大阪公演に足を運ぶことを全力でおすすめしたい。それが難しければ、WOWOWにて2月26日に初回放送・配信される本公演の独占放送・配信をぜひ。2週間のアーカイブ配信があるそうなので、ロックの可能性を存分に味わってほしい。東京公演を体験済の人にとっても十分に魅力的であることは言うまでもないだろう。

<INFORMATION>

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ ライブ・アット・東京ドーム 2023
2月26日(日)午後5:30[WOWOWプライム][WOWOWオンデマンド]
※放送終了後〜2週間アーカイブ配信あり
https://www.wowow.co.jp/detail/187690

『Unlimited Love / アンリミテッド・ラヴ』
Red Hot Chili Peppers / レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
発売中
※国内盤 CD ボーナス・トラック 1 曲追加収録 ¥2,860(税込)/WPCR-18503
ダウンロード/ストリーミング:https://rhcpjp.lnk.to/ULJP

01. Black Summer / ブラック・サマー
02. Here Ever After / ヒア・エヴァー・アフター
03. Aquatic Mouth Dance / アクアティック・マウス・ダンス
04. Not The One / ノット・ジ・ワン
05. Poster Child / ポスター・チャイルド
06. The Great Apes / ザ・グレイト・エイプス
07. Its Only Natural / イッツ・オンリー・ナチュラル
08. Shes A Lover / シーズ・ア・ラヴァー
09. These Are The Ways / ジーズ・アー・ザ・ウェイズ
10. Whatchu Thinkin / ワッチュ・シンキング
11. Bastards of Light / バスタード・オブ・ライト
12. White Braids & Pillow Chair / ホワイト・ブレイズ・アンド・ピロー・チェアー
13. One Way Traffic / ワン・ウェイ・トラフィック
14. Veronica / ヴェロニカ
15. Let Em Cry / レット・エム・クライ
16. The Heavy Wing / ザ・ヘヴィ・ウィング
17. Tangelo / タンジェロ
18. Nerve Flip / ナーヴ・フリップ ※日本盤ボーナス・トラック
https://wmg.jp/rhcp/discography/25702/

『Return of the Dream Canteen / リターン・オブ・ザ・ドリーム・カンティーン』
Red Hot Chili Peppers / レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
発売中
※国内盤 CD ボーナス・トラック 1 曲追加収録¥2,860(税込)/WPCR-18552
ダウンロード/ストリーミング:https://rhcpjp.lnk.to/ROTDC
1. Tippa My Tongue / ティッパ・マイ・タング
2. Peace And Love / ピース・アンド・ラヴ
3. Reach Out / リーチ・アウト
4. Eddie / エディ
5. Fake As Fu@k / フェイク・アズ・ファック
6. Bella / ベラ
7. Roulette / ルーレット
8. My Cigarette / マイ・シガレット
9. Afterlife / アフターライフ
10. Shoot Me A Smile / シュート・ミー・ア・スマイル
11. Handful / ハンドフル
12. The Drummer / ザ・ドラマー
13. Bag Of Grins / バッグ・オブ・グリンズ
14. La La La La La La La La / ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ・ラ
15. Copperbelly / カッパーべリー
16. Carry Me Home / キャリー・ミー・ホーム
17. In The Snow / イン・ザ・スノウ
18. The Shape Im Takin / ザ・シェイプ・アイム・ テイキン ※日本盤ボーナス・トラック
https://wmg.jp/rhcp/discography/26445/