子供が小さく、片づけても片づけても散らかる場合はどうしたらいいか。片づけコンサルタントの近藤麻理恵さんは「2人の娘が小さかったころ、完璧に片づけることを諦めるべし! ということを学びました。そんな中でもせめてもと意識していたことは自分でコントロールできる場所のときめきは死守することでした」という――。

※本稿は、近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。

■子供がいるとどんなに片づけても家が散らかってしまう

2人の娘を育てるようになってから、私の生活はガラリと変わりました。

子供を持つ前の私の「理想の暮らし」は、こんな感じです。

朝は爽やかに起きて、子供たちが起きてくる前にササッと身支度を整え、食事の準備をする。昼間のうちに仕事を要領よく終えて、子供とたくさん遊ぶ。夜は愛情たっぷりのご飯をつくって、家族でディナーを楽しむ。寝る前にはヨガをしてリラックスし、穏やかな気持ちで眠りにつく。もちろん、家はいつも完璧に片づいている!

……そんな生活が理想だったのですが、現実は甘くはありませんでした。出産後はとにかく時間もないし、余裕もないので、生活で最低限に求めるレベルが、自分は寝る前に顔を洗って歯さえ磨ければOK、子供は元気に生きていればまずはOK、というレベルにまで一挙に落ちてしまいました。

朝は早い時間から子供に起こされるので、ゆっくり眠ることができません。ゆえにいつもボンヤリ眠くて、集中力は明らかに落ち、予定通りに仕事や家事が終わらない。家だって、いつもキレイに片づいた状態をキープしたいけれど、子供が塩の袋をバッサリひっくり返すわ、箱で仕切ってしゃんと収納された文房具の引き出しの中身も無残に崩されるわ。

どんなに片づけても家が散らかってしまうのです。

こんなこともありました。娘たちに洋服の畳み方を教えたところ、彼女たちも何か畳みたくなったのでしょうね。棚にキレイに収納したすべての衣類を、ぐちゃぐちゃにされてしまいました。そのときは、流石にニッコリ笑うこともできず、余裕なく叱りつけてしまいあとで自己嫌悪……なんてことも。もはや、ときめきの“と”の字も見当たらない光景です。

写真=iStock.com/monzenmachi
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/monzenmachi

■子供が小さいうちは完璧に片づけることを諦めるべし!

娘たちが学校に行くようになって以降、多少は落ち着いてきましたが、こういった経験から私は、「子供が小さいうちは、完璧に片づけることを諦めるべし!」ということを学んだのです。

そんな中でも、せめてもと意識していたことは「自分のペースを保てる場所だけは、片づいた状態をキープする」ということ。たとえば、仕事部屋のデスクの引き出しだけはスッキリした状態をキープする、クローゼットのかける収納だけはときめく状態を保つ、などです。

毎日の生活の中で、子供がいることでコントロールの利かないことがあるからこそ、自分でコントロールできる場所のときめきは死守する。それだけでも、だいぶ気分が変わってきます。「ここにいると、ときめく」。そんな空間を家の中に一つでもつくることは、とても大切なのです。

■家庭と仕事の目指したいバランスを考える

もちろん私に限らず、子育て中はとにかく余裕がない、という状況は世界共通なようで、私のところには世界中の子育てしながら仕事をする方からご相談の声がたくさん届きます。

その代表的なものの一つが「家庭と仕事のバランスを取るには、いったいどうしたらいいでしょう?」というもの。

そのたびに私が答えているのは、「まずは自分の目指したい家庭と仕事のバランスを考えましょう」ということです。

先ほどもお伝えした通り、出産をしてから生活の中の仕事と家庭のバランスは大きく変わりました。子供にかける時間や労力が増えた分、これまでのように長時間働くことが物理的にできなくなったのです。そこで、改めて「家庭と仕事がどういうバランスであれば、自分たちがハッピーでいられるか」ということを夫婦で話し合うようになりました。

その結果私たちが選んだのは、プライベートの時間を優先的に確保して、その上で仕事の予定を組むという方法です。具体的には、スケジュールからまずは日々の家族だんらんの時間を確保し、次に旅行などの楽しみの予定、そして自分の心と体をリセットするためのリラックスの時間を確保してから、残った時間で仕事の予定を調整するようにしたのです。

正直なところ、どうしても時間の調整がしきれずリラックスの時間を削って仕事を入れてしまうことも多々あるのですが、それでも以前に比べて自分のための時間を過ごせるようになりました。

今では仕事の時間は以前の3分の2ほどになりましたが、リラックスする時間を入れることで心身ともリフレッシュできて、かえって仕事の進みが良くなったのを実感しています。

写真=iStock.com/matdesign24
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/matdesign24

■働き方に少しでも違和感があるときこそ仕事の片づけが必要

プライベートと仕事のバランスについては、とくに2020年の新型コロナウイルスの影響で働き方が大きく変わって以降、自分の時間の使い方を見直さざるをえなくなった方も多いのではないでしょうか。

もしもあなたが、今の働き方に少しでも違和感があるのであれば、今こそ仕事の片づけが必要なとき。限りある自分の時間をどのようなバランスで使っていきたいか、この機会にぜひじっくりと考えてみてください。

■どんな人も仕事でときめくことはできる

「私は社会的に影響力のある仕事をしているわけではないし、仕事といっても生活のためにしているだけです。こんな私に、ときめく仕事なんて遠い世界すぎて……」あるとき、こんな風に言ったお客様がいらっしゃいました。

本稿を読んでいる方の中にも、同じように感じている方がいらっしゃるかもしれません。

でも、私は自信を持って断言します。どんな人だって、仕事でときめくことは可能です。

「どうしてお母さんはいつも楽しそうに家事をしているの?」

私が5歳のとき、専業主婦をしていた母にこう聞いたことがありました。すると母は、「家事ってすばらしい仕事なのよ」と答えました。

「私がこうやってご飯をつくったり家を整えたりすることで、お父さんは仕事を頑張れるし、子供たちも元気に学校に行ける。すごく社会の役に立っているのよ。だからお母さんは、この仕事が大好きなの!」と母は笑顔で話してくれました。

その話を聞いて私は、「家事ってとても大切で、素敵な仕事なんだな」と思うのと同時に、社会はいろんな役割でできていることを知りました。

写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub

■何の仕事をしているかよりどんな感情で仕事をしているかが大切

片づけをしていると、すべてのモノに大切な役割があることを感じます。小さなネジだって、ドライバーだってなくてはならないもの。一つひとつ、それぞれに違った役割があって、調和によっておうちが成り立っているのです。

それは仕事においても同じです。どんな仕事も他のものと比べられないほど大切なのです。だから、大きなことでなくてもいい。自分の仕事がどんな風に社会につながっているのか、どんな風に社会に役立っているのか、ということを改めて考えてみてください。自分がふだんしていることに意義を見出すことが、仕事のやりがいや喜びにつながるからです。

「何の仕事をしているか」よりも、「どんな感情で仕事をしているか」のほうが大切だと、私は考えています。いつもストレスを抱えてイライラ働いているのではなく、その人自身がときめいていて、いいエネルギーを出して働いていると、周りにもポジティブな影響が伝わります。そして、そういう人が増えるほど、それが巡り巡って世界中にいいエネルギーが広がっていくのです。

つまり、仕事をしているあなた自身がときめきのエネルギーを出していること、そのことだけでも、社会に貢献しているはずなのです。

■ときめく仕事がときめく人生をつくる

さて、あなたは今、仕事を楽しめているでしょうか。

近藤麻理恵、スコット・ソネンシェイン『Joy at Work 片づけでときめく働き方を手に入れる』(河出書房新社)

あなたが本当に求める、理想のワークスタイルはどんなものですか。

あなたが思い描くときめく働き方を叶える第一歩として、片づけほど有効な手段はないと、私は確信しています。

物理的な片づけを始め、時間や人間関係、判断など、あらゆることについて片づけを実践してみてください。

そしてここからは、あなたにとって本当にときめくことに、時間と情熱を注いでください。

ときめく仕事をすることが、ときめく人生をつくるのです。

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近藤 麻理恵(こんどう・まりえ)
片づけコンサルタント
会社員を経て片づけコンサルタントとして独立。ベストセラーとなった著書「人生がときめく片づけの魔法」シリーズは、世界40カ国以上で翻訳出版されて、シリーズ累計1300万部を突破。2015年には「TIME」誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれ、世界から注目を浴びている。アメリカをはじめ海外からも講演のオファーがひっきりなしという片づけのカリスマ。
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(片づけコンサルタント 近藤 麻理恵、ライス大学経営学教授 スコット・ソネンシェイン)