【▲ 国際宇宙ステーションに係留中の宇宙船「ソユーズMS-22」(手前)。2022年10月8日撮影(Credit: NASA)】


アメリカ航空宇宙局(NASA)とロスコスモス(Roscosmos)は12月19日付で、国際宇宙ステーション(ISS)に係留されている宇宙船「ソユーズMS-22」からの冷却材漏洩に関して、冷却材が漏れ出たとみられる部分で小さな穴が確認されたことを明らかにしました。


ロスコスモスのセルゲイ・プロコピエフ(Sergey Prokopiev)宇宙飛行士とドミトリー・ペテリン(Dmitry Petelin)宇宙飛行士、NASAのフランク・ルビオ(Frank Rubio)宇宙飛行士の3名を乗せたソユーズMS-22は、2022年9月21日にバイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、9月22日からISSに係留されています。


【▲ 2022年12月15日に冷却材の漏洩が確認されたロシアの宇宙船「ソユーズMS-22」。NASAのライブ配信から(Credit: NASA TV)】


2022年12月15日9時45分頃(日本時間)、ソユーズMS-22の後部にある機器/推進モジュール(エンジンや太陽電池アレイがある部分)からの冷却材の漏洩が検出されました。漏洩は機器/推進モジュール外装のラジエーターで起きたとみられており、12月16日3時30分(日本時間)までに冷却材のほとんどが漏出したと分析されています。


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【▲ ソユーズMS-22の冷却材漏洩を調査するために「ナウカ」モジュールから伸ばされた欧州ロボットアーム。NASAのライブ配信から(Credit: NASA TV)】


12月15日はISSロシア区画でプロコピエフ飛行士とペテリン飛行士による船外活動が予定されていましたが、目視で漏洩が確認された後に中止を決定。同日中にロスコスモスのアンナ・キキナ(Anna Kikina)宇宙飛行士が多目的実験モジュール「ナウカ」のロボットアーム「欧州ロボットアーム(ERA)」を操作して、冷却材が漏洩したとみられる箇所の撮影を実施しました。12月16日には調査の一環としてソユーズMS-22のスラスターのテストが行われ、他に障害はないことが確認されています。


【▲ ソユーズ宇宙船の構成(Credit: JAXA)】


NASAとロスコスモスによると、12月19日にISSのロボットアーム「カナダアーム2(Canadarm 2)」を使った漏洩箇所の再調査が行われ、機器/推進モジュール外装の小さな穴が確認されました。穴の周囲ではラジエーター表面の変色も確認されています。


ロシア国営のタス通信は、穴の大きさは直径約0.8mmだと報じています。冷却材漏洩の原因としては微小隕石もしくは宇宙ゴミ(スペースデブリ)衝突の可能性が指摘されており、この穴が衝突によって空いたのかどうかを含めて、ロスコスモスの作業部会が情報の分析を続けています。


ロスコスモスはソユーズMS-22の船内温度について、ISSロシア区画から冷却された空気を送り込むことで許容範囲内の摂氏約30度に保たれており、宇宙船のシステムをシャットダウンしたことで機器/推進モジュールの温度も摂氏約30度で安定したとしています。


【▲ バイコヌール宇宙基地で試験中の宇宙船「ソユーズMS-23」(Credit: RSC Energia)】


ロスコスモスによると、今後の対応については2022年12月末までに結論が出される見込みです。仮にソユーズMS-22が使用不可能と判断された場合、ソユーズMS-22は無人のままISSから切り離されて地球へ落下します。この場合、2023年3月の打ち上げに向けて現在バイコヌール宇宙基地で試験が行われている宇宙船「ソユーズMS-23」の準備が早められて、プロコピエフ飛行士ら3名を帰還させるために無人で打ち上げられることになります。


ソユーズMS-22については新しい情報が入り次第お伝えします。


 


Source


Image Credit: NASA, NASA TV, JAXA, RSC EnergiaNASA - Week Begins with Bone Research, Cargo Operations Ahead of SpacewalkRoscosmos (Telegram)TASS - Science & Space

文/sorae編集部